箱船航海日誌 2002年02月

日々雑感、出来事などを思いつきに任せて綴っていこう

過去の日誌コンテンツ

’02/02/28 (木)

超えた


 これが例のフォノイコの電源ユニットである。ヘタなパワーアンプを凌ぎそうな貫禄と迫力、SFチューブに包まれたケーブルには何かしら妖気のようなものさえ感じるのである。

 昨日届いたAE86さん仕様自作フォノイコアンプ中間報告4、と思ったら今日になって「音出ししました」と電話があった。完成したのである。開口一番「すっげぇスよ、これは」の言葉に、製作が大成功だったことを確信する。

 写真の電源ユニットだけで10kg超、本体と合わせると30kg近くになってしまった、と彼は笑う。笑いごっちゃないっスよ、AE86さん。mVオーダーの信号を扱うアンプの電源だけで10kg超? 本体込みで30kg? 常軌を逸しているのである。

 だが、彼が言うのには「音もフツーじゃあありませんゼ」と。彼をして、未だかつて聴いたことのない音がすると言わしめるこの新しいアンプ、現用のオリジナルフォノイコを軽く凌いでしまい「ホントに送るのがいやンなっちった」らしい。僕はまだ実際に聴いたわけではないけれど、オリジナルは昨年11月に箱船システムで聴いている。その音に一発で惚れ込み、無理を承知で製作をお願いしたわけだから、それを超える音となればこれはもう文句のあろう筈はないのである。

 常軌を逸したコンストラクションの恩恵は、すべて音に反映された、と。

 電源投入からさほど時間が経っていないので、まだほぐれ切れない部分はあるものの、静かさ(S/Nの良さ)、低域の力感、全域にわたるソリッドな感じでは、完全にニュータイプの勝利。エージング次第で完全に上回るだろうと熱っぽく語ってくれるAE86さんの言葉は、僕にとって最上級の御馳走にも匹敵するのである。「垂涎」とは正にこのこと、しかしそれはやがて僕の手許にやってくるのだ。

 もうしばらくAE86工房で初期エージングと微調整されたあと、この恐ろしいアンプがウチに届くだろう。持てる能力を充分に発揮させられるかどうか、僕としてはそれがいちばんの心配である。だが、ヒジョーに楽しみでもある。

 AE86さん、本当にありがとうございます。発送するのが「いやンなっちった」お気持ちは充分過ぎるほど理解できますが。

 僕も音聴きたいぞっ。

’02/02/27 (水)

復帰


 JA-0506II修理完了。システム復帰である。従来どおりセッティングし、右chトゥイーターと見比べると、やっぱりこっちの方が明るい砲金色で綺麗である。ちょっと気になるが、まあいいか。右もそのうち気が向いたら磨くことにしよう、ってその頃には左がくすみ始めて。そんなことやってたらいつまで経っても不揃いのままじゃん。

 肝心の音は。今のところ左だけがつっぱりサウンドに聴こえる。不自由に鳴っているという感じだ。これは仕方ないだろう。ダイヤフラムをすっかり交換してしまい、エージングゼロである。そのわりには音色の差は少ないと思う。切れない程度(修理早々切ったりしたら、それこそお笑いである)にガンガン鳴らし込めば、違和感はなくなって行きそうだ。

 一聴して大きな問題があるようには感じなかったので、今日のところF特は採らなかった。どうやら今回の修理は、ひとまず成功だったと言えるらしい。ヤレヤレである。

 手持ちのホーントゥイーターの中で、FE-208ES二発にマッチングの良いものというと、現状これしかないのである。音色とクオリティで言えばFT-90HGも良さそうだが、ルックスの点でちょっとばかり貫禄不足。能率も僅かに足りないかもしれない。208SSには良かったT-925Aは、208ESとは音色がまったく合わない。木に竹を接いだようになってしまう。T-500Aはルックス、音色、クオリティ、全ての条件を満たすかに見えるが、コンデンサーを1.5μFまで大きくしないと上手くつながらず、大音量ではヒジョーにクルシイ。またぞろ焼損させてしまっては元も子もないのである。FT-90Hもあるけれど、多くの点でマッチングが悪い。FOSTEXの新製品、T-900Aを使ってみるのも一つの手ではある。但し、0506IIGMホーン仕様の魅力は大きいのである。

 というわけで、これからも御老体JA-0506IIのお世話にならねばならない。ともかくダイヤフラムの替えさえあれば使い続けられるわけだから、パーツの入手が可能なうちに沢山買っとこうかな。本体より高いGMホーンが、一年も経たないうちに無用の長物化したら、それはヒジョーに悲しいのである。

 直ってよかったぁ。

’02/02/26 (火)

不揃いに


 0506II修理のため、外したGMホーンセットである。少し黒ずんできたり、指紋が付いていたりするのが前々から気になっていて、磨き直したいと思ってはいたのだが、それだけのために外すのが厭で見送ってきた。外して再び戻すだけで音が変わってしまうおそれもある。

 今回は外さないわけには行かず、それならついでと例によってピカールとベンコットでコシコシ磨いてやった。当然綺麗になるわけで、昨年夏に設置した当初の輝きが戻った。それは大変結構なことである。結構であるが。

 困ったのはもう一方のホーンとルックスが不揃いになってしまったこと。右chのホーンは磨かないままなので、やや茶色っぽく見える。汚くはないけれど、見比べるとその差歴然である。たぶん音に影響が出るほどの差ではないと思う。要するに見てくれの問題、精神衛生上あまり良くないのだ。

 と言って、右もわざわざ外して磨くのはやっぱりイヤダ。触りたくないのである。今回は見送りにしよう。夜目遠目にはそんなに目立たないだろう、というのは僕の勝手なヨミである。やっぱり目立つだろうな。

 このホーンは砲金製である。不思議なことに錆びの進みが遅いように思える。昨年の7月から使い始めて7ヶ月、もっとマックロケあるいは緑青を吹いてかなり汚いことになるかと思ったが、案に相違して比較的綺麗なままである。

 これを作った友人に因ると、一言に「砲金」といっても組成の違いでかなりの種類があるそうだ。その中には特に酸化しにくい砲金があり、それを使って作ったということらしい。彼は「かなり特殊な砲金だ」と言っていた。どんなふうに特殊なのか、詳しくは教えてくれなかった。なんかヤバイところから調達したのかな。んなバカな。

 ともかく、振動板は交換完了、ホーンは磨けたし、あとは元通り組み立てて音出しである。さてさてキチンと修理できているかどうか。

 F特を見るまでは安心できないのである。

’02/02/25 (月)

焼損溶断


 JA-0506IIのボイスコイルにつながるリード線部分の拡大写真である。天眼鏡を通して撮った写真をトリミングしたものゆえ、不鮮明であるのをお許し願いたい。

 わざわざこんな茫洋とした画像を挙げて、何をお伝えしたかったか。

 写真左手に見えているのがボイスコイル、そこから斜め上方に延びているのがリード線、銀色に光っているのが振動板、右手に見えるのは振動板を外周で押さえているベーク板である。リード線がベーク板に接する手前で、黒くなっているのがお分りいただけるだろうか。ここをご覧に入れたかったのである。

 今回の断線は、過大入力によるリード線の焼損溶断だった。この写真はダイヤフラムユニットの裏側から撮ったもの。表から見ても何ら異状は見られない。ただ、テスターで当たってみると導通は無いし、実際に音が出ないのだから、切れていることだけは確かである。外してみて初めて本当の原因が分ったのだった。

 自分勝手にメカニカルなトラブル(振動板が裂けたとか、ボイスコイル、またはリード線が機械的に切れたとか)かと思っていただけに、焼き切れていたのには些か驚いた。音量の上げ過ぎが原因なのは、火を見るよりも明らかである。

 アホな所業である。大音量を以ってくずてつの存在価値ありと、いい気になっているからこういうことになるのである。調子に乗ってはいけない。今回はトゥイーターの焼損くらいで済んだから良いようなものの、そのうち自分の耳まで壊してしまったらオーディオもクソもなくなってしまうことを思い知らねばならない。

 耳を大切にしているオーディオファンの友人から「オマエの常用音量はデカ過ぎる。トゥイーター飛ばすくらいならまだカワイイが、仕舞には耳を壊すから自粛しろ」と警告されたことが少なからずあった。このままでは本当に彼の言う通りになるだろう。素直に耳を傾け、自粛しなければ遺憾のである。

 ダイヤフラムユニットの代わりはあるけれど、耳のスペアは無いのだから。

’02/02/24 (日)

トゥイーター不在


 何だか今日は矢鱈に忙しい日になってしまった。前にもこんなことを書いたことがあるような気がするが、僕の仕事はDレンジが広いのである。ヒマだと言ったらほんとにヒマで、これじゃあまるでプータローじゃないかというような時があるかと思えば、今日のように18時間労働みたいな日もある。18時間働くのは別に構わないけれど、ほとんどの場合忙しくなることを予測できない、つまり予定に組めないのがいちばん困るのである。

 「明日は予定がないからアレやってコレやって...」と完全にお休みモードに入っていたら、突然お仕事モード強制起動、なんてことがままあるわけだ。これはヒジョーにツライ。永い間この仕事をしているけれど、こればかりは慣れることができないでいる。それどころか、歳をとるにつれだんだん辛さが増しているような気さえする。適応力の低下だな。立ち上がり、立ち下りが悪くなってる。トランジェントが劣化しているわけである。

 というわけで、トゥイーターはまだ手付かずのまんま。只今23:45、これから修理しようかと思わないでもないが、手許が狂ってとんでもないことになりそうな気もするので、やっぱりヤメよかな。

 でも、これを早く直さないと音が聴けないんですケド。音が聴けんちゅーことは、一日でいちばん大切な時間を失うということで、体と心に大変良くないのである。だからやっぱり早く直さんと遺憾わけである。でも焦って直してムチャクチャになったら、なおのこと音が聴けなくなるので、これまた困るのダ。

 ゴチャゴチャゆーとらんで、さっさと直せって。

’02/02/23 (土)

当たり年ならぬ


 「壊れ年」であるらしい。PJに続き今度はトゥイーター、JA-0506II が断線した。新品で買って以来、D-70時代からほとんど絶え間なく使いつづけて14年、ついに切れてしまった。

 NEW WORLDレーベルの「PULSE」を聴いている最中だった。シンバルとティンパニーの強打が連続するところで、一瞬「ジリッ」という音が聴こえた。「やばいっ」と思ってボリュームを絞ったが後の祭である。見事に断線しました。

 ついこの間、AE86さんから「くずてつさんの音量は尋常じゃないから、トゥイーターには気を付けたほうがいいよ」と警告されたばかりだったのである。予言的中、やってしまいました。この調子では、コンデンサーを2.2μFにするのはヒジョーに危険である。たとえアッテネーションするとしても、だ。AE86さん、仰る通りになりました。音量デカすぎかなぁ?

 ともかく修理せねば。買い置きのスペアダイヤフラムアッセンブリーがあるので、それを使って自分で作業することになる。これがなかなか微妙な技が必要で、ヘタにやるとF特がガタガタになるおそれがある。注意しながら何とかがんばってみよう。

 次は何が壊れるんだろう。自分だったりして。それならもう壊れてるって? 失礼いたしやした。

’02/02/22 (金)

久しぶりに聴くと


 今月の日誌を読み返してみるとコンデンサーとPJの話がやたら多く、何だかヒジョーに生硬である。時にはソフトのことも書いておきたいと、今日はCDを一枚。

 「FLIM & the BB's / NEON」(dmp CD-458)。FLIM & the BB's と言えば、長岡推奨ソフトとして名高い(別に名高くないか)「TRICYCLE」を演奏するフュージョングループである。この「NEON」は4枚目のタイトルである。「TRICYCLE」('83年 CD-443)は一枚目のタイトル。セカンド「TUNNEL」('84年 CD-447)、サード「BIG NOTES」('85年 CD-454)、4th「NEON」、5th「FURTHER ADVENTURES」('88年 番号失念)の5タイトルを出しているようだ。

 このうちファーストとサードが20ビットリマスター/24カラットゴールドCD(GOLD-9000、CD-9002)になっている。もしかしたら他のタイトルもゴールド化されているのかもしれないが、僕は知らない。何方か御存知でしたら御教示ください。

 僕はこのグループのファンなのだが、近頃ではゴールド2タイトルばかり聴いていて、レギュラー盤のほうはとんと御無沙汰だったのである。久しぶり、と言うにはあまりにも永い間聴いていなかった「NEON」をラックから引っ張り出したのは、ここのところ変更が多かったシステムの音を確認するためである。

 常時テストに使うソフトで音決めするのも一つの方法、もう一つ、永く聴いていないものを久しぶりに使ってみると、新しい発見があり面白かったりもするのだ。このソフトも、以前とは違う音で聴けてとても楽しかった。劇的に良くなっているというわけではないけれど、最近の変更がとんでもない方向へイッちゃってるでもないことが分ってヨカッタのである。

 録音そのものは決して最高ではないと思う。高域はイマイチ繊細感がなくバシャバシャしているし、歪みっぽさもある。全体的にデッドでドライ、瑞々しさや艶が足りない。どちらかといえば高域寄りのけたたましい音である。但し、フュージョンというジャンルに限れば、良いほうに入るだろう。「TRICYCLE」を聴いて「音は良いけど内容はイマイチ」と感じた人にはお薦めできない。逆に「フュージョン大好き、FLIM & the BB's最高!」という人なら楽しめるタイトルである。

 ところでdmpレーベルって、今でも大手輸入CDショップで買えるんでしょうか。

’02/02/21 (木)

子供のままで


 つまらない話である。僕は映像を投射している最中の三管式PJレンズを見るのが好きだ。真正面から見たりしたら目を傷めてしまうから、もちろんハスから見るわけだ。RGB三管それぞれがまるで生き物のように入力信号に対応して激しく明滅する光景は、何度見ても不思議であり魅力的である。リーズナブルに考えれば「そのように造って」あるわけだから、これは至極当たり前のことである。だが、文系人間の僕には、その「リーズナブル」な部分が全く理解できないので、やっぱり不思議であるのだった。

 箱船では、過去何度か地元の子供達を招いて映画会を催している。下は3歳、上は12歳くらいまで。PJをウォームアップしながら待っていると、入ってきた子供がいちばん最初にやる行為。それはPJをレンズ側から覗き込むことである。これはもう見事に皆同じことをやるわけで、見ていて可笑しくなるほどである。

 「うわ、光ってる!」とまず驚いておいて、次にすることは光に手をかざしてスクリーン上に影絵を作ろうとする。これも共通的行動。ここで終ればよいのだが、次段階ではレンズやスクリーンをペタペタ触るという恐ろしい行為に移ることは間違いないので、やんわりと一声かけておく。それでも子供はだいたい馬鹿だから、なお触りに行くヤツがいる。そーゆーときは大声で怒鳴るわけだ。「くぉら、汚い手ェで触るんやないっ」。シンドイのである。

 光るレンズを覗いて喜ぶ子供達。何のことはない、僕も同じレベルなのである。何か原始的な魅力があるのだろうか。それとも僕がガキのまま成長していないだけなのか。たぶん後者だろうナ。だからこそ、飽きもせずにオーディオしてるのかも知れない。

 以前(と言ってももう10年以上前)、オーディオという趣味が如何に崇高で精神的知的レベルの高いものであるかを一日中延々と説き続けて帰った人がいた。その人はそう考えてシアワセなわけだから、いささかの異論を唱えるつもりはない。それで結構でゴザイマス。けれども、個人的には特に崇高だとも、知的レベルが高い趣味だとも、全く思っていない。「タカがオーディオ」とまで言えるほど悟ってもいないけれど、「厭やったらヤメたらええねん」くらいには思っている。オーディオという趣味を、一部の特別な人間だけのものにしてはイケナイのである。それこそ「趣味ではない」のダ。

 いつまでも子供のように面白がる心。これを忘れてしまったら、オーディオは妙な方向へどんどんヒン曲がってしまうだろう。やたら深刻ぶったオーディオなんか、くそ面白くもない。

 「へぇー、すごいね、どうなってんの? それ」 懐かしい長岡先生の声が聞こえる。

’02/02/20 (水)

何だか凄いことに


 何処かのパワーアンプ電源用フィルターコンデンサー群? いえいえ違います、AE86さん仕様自作フォノイコ電源のコンデンサーブロックでゴザイマス。何だか凄いことになってますねぇ、AE86さん。

 2月9日に続く中間報告3である。頑丈そうなアルミフレームと木製ブロックでガッチリ押さえ込まれ、太い電線で繋がれた姿を見るだけで、このアンプがタダモノでないことがわかる。聞けばオリジナルの設計ではこれほど強力な電源ではないそうで、僕が聴いて驚いた音の原動力は、充分過ぎるほど余裕を見たこの電源回路に秘密があるらしい。尤も、いたずらにコンデンサーだけを大きくしても意味はないわけで、トランスもまた超弩級を奢って初めてその意味を為すわけである。

 物理的な「モノ」としての凄さはもちろんだが、僕が感激するのはAE86さんの手間を惜しまぬ丁寧な工作である。やるならやらねば、さすが自作派の大御所、ただごとならぬこだわりである。それでいて御本人は飄々としていらっしゃるのだから、やっぱりこのヒトには敵わない。敵わないけれど、この姿勢からは多くのことを教えられるのである。

 そんなに遠くないうちに音出しできるそうである。どんな音を出してくれるのか、僕はもう今から楽しみで楽しみで。

 ただ一つ気懸かりなのは、ウチのシステムでその実力が100%発揮させられるかどうか。使い手の力量が問われるのである。

’02/02/19 (火)

今度は大丈夫


 この映画を見ようとして、1252QJはぶっ壊れたのである。「ハムナプトラ II 」。いや、何もこの映画のせいだとはもちろん思っていないけれど。アヌビスかイムホテイプの呪いかしらん。アヌビスは走るのがのろい、ってか。

 最初の3分くらいのところでいきなりプツンと切れてしまったので、そのシーンまで来たときはちょっとドキドキした。べつにそんな必要はないのだ。バカげた話である。PJが直ってくるまでガマンできず、居間のテレビで見てしまったので全編をもう一度見る気にはなれなかった。それほどの名作でもないし。

 ハイライト的に飛ばし見したわけだが、今回の修理は大成功だったらしい。この映画に係わらず、何を見てもヒジョーに綺麗に見えるのである。特にプログレッシヴ映像での改善が著しい。シトさん青いケーブルの効果も、もちろんあると思うけれど、白いケーブルと入れ替えてみてもやっぱり修理前より綺麗である。今回の調整がたまたま上手く行った? それもテストパターンを出し何度も確認するが、以前に比べてバツグンに向上したとも思えない。

 「複数ファクターの僅かな改善が偶然にも重なり合った結果の顕著な画質向上」と見るべきなのだろうか。だとしたら、最近ちょっと冷め気味だった映像への関心が、またぞろ高まるのである。

 調子に乗って古い映画DVD(と言ってもせいぜい10年前までだが)タイトルも見てみたが、プログレッシヴで見るにはおしなべて新しいタイトルのほうに分があるようだ。画質優秀と言われた「レジェンド・オブ・フォール」や「グース」も、最近の「インヴィジブル」「グラディエーター」「ハムナプトラ II 」などに比べるとかなり見劣りがする。修理前よりも差がはっきりとわかってしまうのだった。

 結果、音も画も、使いこなしがイノチであるという、至極当たり前のことを再認識させられたわけである。何もせずにダメだダメだと文句言ってるのが、いちばんつまんないことなのね。

 反省せんと遺憾のである。

’02/02/18 (月)

青P白I


 シトさんからお借りした青いケーブル。青というより濃紺か。前にお借りした白いケーブルの改良版である。

 白と同様、今回の青も非常に硬く重く太いケーブルである。急角度には曲がらないし、曲げないほうがいいと思う。ウチではセッティングの制約で、直線的には使えない。仕方なくある程度曲げて使っているが、あまり褒められたモノではないのである。

 1252QJの調整が完了したので、早速使ってみた。525Pでの視聴である。

 結論から先に言う。これは全く素晴らしい。もうメチャクチャに明るいのである。明るいのに白が飛ばず、色も薄くならない。フォーカス感が極めて良く、細かいところまではっきり見え、しかもエッジを強調したようなザラザラした感じは皆無である。525Iに比して525Pでは、何かしらベールがかかったような甘い感じがしたものだが、それが一掃され柔らかいのに高解像度という、良い意味での「フィルムライク」な画を実現する。しかしこの明るさはいったいどうしたことだろう。まるで「マホウのケーブル」である。

 AE86さん曰く「くずてつさんの好みは白のほうかな。青は力強いというより繊細な感じだね」と。確かに繊細極まりないのは認めるけれど、充分過ぎるほど力強くもあるんですケド。白の時も驚いたが、今回の青は、もっと驚いた。ケーブルの交換でこんなに劇的に画が変ったのは初めてのことである。

 昨年9月12日の日誌を見ると、全体的な印象は今回と似たようなことを書いている。明るく高解像度、ベールを剥がし取った感じ、と。青になって、さらにそれがブラッシュアップされたようである。こんなモノを一度見てしまうと、もうダメだ。これも毒の一種だな。

 現状、525Pに青、525Iに白をあてがっている。このまま行くか逆にするか、只今大いに考え中。青白どちらも非常に優れたケーブルだけに、迷いは深いのである。今しばらくは時々入れ替えたりして、悩みを楽しむことにしよう。

 シトさん、今回も極めて素晴らしいケーブルをありがとうございました。参っちゃったなぁ。

’02/02/17 (日)

設置調整


 また後でやろう、なんて2、3日ほったらかしたりしたら何時までもそのままになりそうなので、さっさと設置調整してしまうのである。

 搬出時、ラックとPJにマーキングしておいたので、あらかたの復元は容易である。ただし、元々の位置が正確かどうか保証の限りに非ずなので、メジャーでも計測する。ほんの少し右に振れていた。つまり、スクリーンとPJの平行が僅かにズレていたわけだ。いちばん最初はキッチリ置いたつもりだが、何かの拍子にちょっと動いたのだろう。

 狂いを直して設置はOK。テストパターンを投射して調整に移る。最初はフォーカスからである。「Hパターン」と呼ばれる、細かいHの文字が密集したようなパターンを投射、RGB三管それぞれの中央部、周辺部のフォーカスを取る。視力の弱い僕にはキツイ作業である。もちろんメガネをかけた状態でやるわけだが、メガネのフォーカスが甘かったら話にならない。「○子さん、窓が汚れてますわよ」「いえ、お母様、さっき磨いたばかりです」「何言ってんの。まだ曇ってるじゃないの! あらいやだ、私のメガネが曇ってたわ、オホホホ」。ヨメイビリではないのである。

 スクリーンの近くでメガネを外して何度も確認しながらフォーカス合わせが完了したら、次はG管のセンタリングと歪み補正である。これを基準にR管B管を重ねて行くことになるので、いい加減にはできない。スクリーンに付けたマーキングを頼りにセンタリング、クロスヘアパターン(十文字のようなやつ)とクロスハッチパターン(上の画像)とを使い分けて台形歪み、糸巻き歪みを補正して行く。

 この辺の調整は慣れればなんてことはないが、初めての人には少々ツライ作業になると思う。ちょっとしたコツが要るからだ。初めてVPH-100QJの調整をした時には、慣れないこともあって途中で気が狂いそうになった。特にあの機械はリモコンもなくおまけにアナログコンバージェンス機、無数に並んだ半固定ボリュームと格闘十数時間、という感じだった。それに比べれば、1252QJはリモコン付きで、しかもディジタルコンバージェンス機である。調整データは全て数値化され、メモっておける。尤も、D50、G70、G90などから見れば、これでもかなり前時代的なPJだけれども。

 G管にR管B管が上手く重なる(1本の白い線になる)ように調整できたら、とりあえずレジストレーション終了である。但し、これは入力信号なしでの調整。これを基準として各入力信号別に微調整する。僕の環境なら、ヴィデオ(コンポジット)、プログレッシヴ(525P)、コンポーネント(525I)の三つになるわけだ。プログレッシヴとコンポーネントは完了したが、ヴィデオ入力はまだやってない。昨日は目がショボショボして力尽きてしまった。

 慣れているとは言うものの、僕の調整なんぞ達人から見ればお笑い種程度のものだろう。手際も悪くやたらと時間がかかる。いわゆる「カリスマインストーラー」と呼ばれるようなお方にお願いすれば、それはもう素晴らしい画が出ることは重々承知している。だがしかし。

 決して自己満足しているわけではないが、自分でやる楽しさがあるのもまた事実。曲がりなりにもコンバージェンスが合ったときの爽快感は堪えられない。「三管式は調整が難しい」、或いは「調整が全てを決める」と言われる。全くその通りだと思う。逆説的に言えば、そこがいちばんオイシイところでもあるわけだ。

 なんて言いながら、ヘボ調整のタコ画面を見続けるのも、アホな所業だと思ってはいるのだが。

’02/02/16 (土)

お帰り


 VPH-1252QJ、無事生還である。1月に故障して以来、沢山の方から御心配いただいた。ありがとうございました。お陰様で、めでたく復帰致しました。

 きちんとした設置はこれからだが、とりあえず運転テストしてみたところでは完璧に修理されているようだ。思いによらずうれしかったのは運転ノイズが減っていること。クーリングファンの風切り音はそんなに違わないけれど、ジージーとうるさかったハム様のノイズが、かなり静かになっている。フライバックトランスが新しくなったことと無関係ではないのかな。新品下ろしたての頃よりも静かなような気がする。何故だかよく分らない。

 レンズのクリーニングもしてくれたようだ。表面(見えている)のレンズは汚れが気になる毎に掃除していたが、困っていたのはレンズ胴体内部のホコリである。三管式ユーザーなら誰しも経験がおありだろう。レンズユニットを外して自分で掃除するという方もいらっしゃる。ガサツな僕は怖くてとてもできないのである。うっかり落として割れてしまいました、なんてことになった日にゃ、それこそ再起不能である。それがすっかり綺麗になって帰ってきた。これは感激モノで、たぶん画にも良い影響があるはずだ。6年間のホコリは馬鹿に出来ないのである。

 あとは正確な設置がイノチである。こればかりは如何にいい加減な僕でも、オロソカにはできない。最初にきっちり追い込んでおかないと、死ぬまでいい加減な画を見ることになるのである。僅かな設置誤差は本体の方で電気的な補正吸収が可能だけれど、その度合いが強まるほどに画は悪くなる。どうやっても台形歪みや糸巻き歪みが取れなかったり、一箇所だけひどくレジが合わなかったり、フォーカスが追い込めなかったりと、精神衛生上ヒジョーに悪いことが起こるわけだ。「アオリ角をつけると画質が落ちる」といわれるのも、電気的補正度が大きくなるからだろう。

 フライバックトランスを全交換、周辺トランジスタなど一部交換、ノイズレベルが下がりレンズはピカピカ。搬出/搬入に技術者が二人来てくれて、〆て12萬円ナリ。

 痛い出費だったが、高くはないと思うのである。

’02/02/15 (金)

もっと早くに


 その差歴然である。ケーブルを換えただけでこれほど音は変ってしまうとは、今さらながら認識の甘さを思い知らされるのだった。

 但し、厳密に言えば変更点はケーブルだけではないのである。ケーブルとコンデンサーリード線の接点を、死に物狂いの力(Φ1.6のリード線がぺっちゃんこになるくらい)で圧着したのも効いているのかもしれない。少なくともワニグチ仮止めとは次元が違うはずだ。

 一言でいえば、余計なことを考えなくてもよい、というような音になった。音楽を音楽として素直に聴ける感じの音である。これに比べると交換前の音が如何に生硬で平板であったか、タコ耳くずてつの強制的自動的再認識にうろたえるのである。

 何を聴いても、とても明るく楽しい。例によって変化は全域に及び、ここ数ヶ月いつも感じていたじれったさが解消された。こんなことならもっと早くに交換しておくんだった。腰を据え時間をかけて取り組むべき事柄と、さっさと見切りをつけ次の段階へ進むべき事柄、この勘所を知る人をしてオーディオの達人ということであってみれば、僕はやっぱり無粋な凡人である。

 オーディオクラフト QLX。これは超ハイCPだ。定価800円/mでこの音である。価格10倍のケーブルでも、これをはるかに凌ぐようなものがあるかどうか、極めて疑問だ。構造が単純で、しかも内外シースの密着度が非常に良く、実にしっかり出来たケーブルである。

 妙な強調感やクセっぽさ、耳に付くキャラクターが無いので、音の好みに係わらず良い結果が得られそうな感じである。フルレンジ+トゥイーターというシステムで聴いていらっしゃる方で、イマイチ何かが足りないと感じておられたとしたら、このケーブルを使ってバイワイヤリングされてみることを是非お薦めしたい。

 このケーブルが仮に5,000円/mというような物だったなら、安易なお薦めは絶対に出来ない。ミスマッチングだった時の痛みが大きいからである。その点このケーブルなら定価で10m買っても8,000円、実売はさらに安いのでダメモトで試されても損はないと思うのだが。

 ケーブルの世界は極めて奥が深いにもかかわらず、試聴の機会が極少なのは大変残念である。仮に何処かの試聴室で聴けたとして、システムが違えばケーブル個々の違いは判別できても自分のシステムとのマッチングについては何も分らない。かたっぱしから購入してテストするといっても、あまりにも高価なものが多く実際には不可能である。

 多くのケーブルを試聴してみたいと思う。ただし、ケーブル中毒に陥らない程度で。

’02/02/14 (木)

モノはついでと


 100,000アクセス、ありがとうございます。掲示板にも書きましたが、感謝の言葉もありません。ぜ〜んぶ皆さんのお陰様です。今後とも、どうかよろしくお願いいたします。

 と、御礼を申し上げておきながら、今日も戯言を述べてしまうのである。

 コンデンサーに取り組んでいたら、今度はトゥイーター用SPケーブルが気になり出した。現用のカナレケーブルを使い始めて7ヶ月経ったが、繊細感と質感、特にソリッドさの不足がどうにもガマンできず、コンデンサー交換を機にモノはついでとケーブルも換えてしまうことにする。

 今回のケーブルは、オーディオクラフト QLX である。定価800円/mと、最近のケーブルの中では大変ハイCPである。4芯キャブタイヤ構造。1芯あたりの断面積など、詳しいことは確かFMfanダイナミックテストに取り上げられていたと思う。何年の何号だったか、探すのだが見つからない。ごめんなさい。もう少し捜しておきます。

 細いわりには音の良いケーブルで、ルックスに相違して非常に芯のある、しかも繊細でシャープ、明るく散乱する傾向の音である。ずっと前から使おう使おうと思いながら、とうとう今になってしまった。

 今日のところはまだ交換できずにいるが、明日以降できるだけ早く使ってみたい。CSコンデンサーとQLX、これで随分音が変わるはずである。

 「今年は少し落ち着いて...」なんて書いたのは誰だ? まだ2月だというのに、こんなにバタバタしてるじゃねーか。

 大ウソツキ野郎である。

’02/02/13 (水)

Fの方向


 1252搬入は大雪で15日に延期。箱船入り口前は70cm以上の雪で埋まっている。重い1252を担いで足が滑って雪の中にハメたら三管式が三管死期になっちゃうよ。それどころかヒトジニが出たらもっと困るし。お寺だからダイジョウブ、ってこんな話はシャレにもならんのである。

 そーゆーワケで今日はまたまたコンデンサーの話。

 FOSTEXの「F」をアンプ側(以下F-A)にして繋いだCSコン、フィルムの裏表で蒸着金属の種類を変えてあるということで、方向によってかなり音が違うらしい。それなればと「F」をトゥイーター側(以下F-T)接続でも試してみるに如くは無し、である。未だ仮繋ぎ状態、単線のリード線にSPコードを巻き付けワニグチクリップで固定してあるだけ。繋ぎ換えは極めて簡単だ。

 これは驚いた。思っていたよりずっと変化が大きいのである。F-Aの時に少し気になっていた聴感上のピーク感が消え、先っちょまで素直に伸びたように聴こえる。やや詰まり気味に聴こえた彼の有名なAD「ヴェトナム」の金属打楽器が、伸び伸びと鳴る。「POMP&PIPES」のシンバル、トライアングルも繊細感があって良い。音楽の彫りが深くなったようでもある。

 他にも沢山のソフトを聴いたが、総じて上記のような印象である。録音の良し悪しも非常によく分る。接続方向を変えただけのことなのに、随分と大きな変化である。これはやはり銅/錫蒸着の効果なのだろうか。

 高域の出方が変れば、低域の聴感にも変化が及ぶのはよくあることだ。今回も例に漏れず、低域の解像度が上がるという形で現れた。好ましい変化である。CSコンデンサーに換えた時、既にこの変化はあったのだが、方向を逆転させたことでさらに顕著になった。

 箱船のオーディオ環境では、F-Tで繋ぐのが良いみたいである。ワニグチ固定という、極めていい加減な接点のせいかと何度かひっくり返してみたけれど、傾向は変らない。1.5μF1個で繋いだ時にはF-Tでキマリかな。

 次は2.2μF+アッテネーターという接続で試してみたいと考えている。その状態でもF-Tが良いのか、或いはF-Aに分があるのか、これはやってみなければ分らない。少なくともR素子と接点が増えるのは明らかなデメリットである。

 メリットとデメリットの綱引き勝負、勝つのはどっちだ?

’02/02/12 (火)

この冬いちばん


 の大雪である。2/11朝の時点で35cm、今も降り続いている。もう50cmを超えたかもしれない。吸音効果バツグン。ケッコウナコトデアル。

 今回の雪は、いつもにも増して重いのである。裏庭の杉は枝垂れ杉(そんなものないケド)みたいになっているし、若い百日紅(サルスベリ)は途中から折れてしまった。石段脇にある桜の老木も悲鳴をあげている。数年前にはやはり重い雪のせいで太い枝が折れてしまい、以来衰弱著しいが大丈夫だろうか。

 雪の上を少し歩くだけで固く踏み締まってしまい、除雪機も歯が立たなくなる。なまじ気温が高いものだから雪になり切れない水分が多く混じり、こういう困ったことになるわけだ。愚息たちはかまくらを作ると張り切っているが、それには適した雪だと言えなくもない。

 先週金曜日の夕方、いつも世話になっている電気屋さんからVPH-1252QJの修理が完了したと連絡があった。月曜日まで3連休、僕のほうに余裕がないので12日の午前中に届けてほしいと言ったけれど、明日(12日)も雪だな。ただでさえ容易でない箱船搬入、この雪の中では尚更に憂鬱である。送り出した日は大雨、帰ってくる日は大雪、何だか多難なヤツだ。雪降って地固まる、とは言わないし。

 この天候、今週末〜来週初めまで快復しないらしい。いちばん降り易い時期なので、これはもう仕方ないのである。あと2週間、それだけガマンすればその頃には本物の春がやってくるだろう。

 日は、随分と長くなった。これも少しく春の兆しではある。

’02/02/11 (月)

アッテネーター


 さっそく繋いでみました、CSコンデンサー。試してみる前にトゥイーターなしでのSネッシーF特を測ってみたら、以前よりハイの落ちが大きくなっている。マイクの高さや位置が違っていたかといろいろやってみたが、やはり前とは違うようである。フルレンジのハイがエージングで落ちてゆくのは常識だが、208ESは変化の度合いが大きいように感じる。

 昨年8月6日の日誌では「CUコンデンサーの1.5μFに変更」と書いてある。その後またまた変更、現状ではuΛ0.68と0.82をパラって1.5μFで使っている。どーも落ち着かないね。以前はクロス付近がちょっと厚い感じかと思っていたが、このF特ならちょうど良い感じである。しかしモノは試し、せっかくだから1.0μFと1.5μFで聴いてみよう。

 掲示板に書き込んでいただいた炭山さんのメッセージに見えるように、このコンデンサーには歴然とした方向性があるらしい。といっても最初はどちらがどういう音なのかは分らない。僕は普段から「文字の流れと信号の流れを一致させる」方向に繋ぐのを基本にしているので、とりあえず「FOSTEX」の「F」の字をアンプ側として繋ぐことにする。

 まず1.0μF。変更前が1.5μFだから、やっぱりちょっと足りない感じである。ディップは見られないが、全体にレベルダウン、ミスマッチングである。これはこんなモンだろうと1.5μFに換装。

 1.5μF、これはいい。レベルはやや高めだが、音の通りが良く極めてソリッド、透明感も高い。uΛに比るとホンの僅かに切れが甘くなったように感じないでもないが、たぶん歪み感が減ったのだろう。音の粒子が鮮明になり、楽器の表現力が向上する。繊細感もuΛに負けない。但し、エージングゼロの現状では、ちょっとばかり情報量に不足があるようにも聴こえる。

 これは良いコンデンサーである。ジェンセンや東一電機のT-capCuという良質のコンデンサーを聴いたことがないので、最高かどうか断言は出来ないけれど、これならエージングと方向性などの追い込み次第で化ける可能性もあると思う。

 しかし、ちょっと待った。1.0μFでレベルが足らず、1.5μFでややレベルが高めなら、中途半端なことは止めて、いっそ2.2μFとアッテネーターという使い方はどうだろうか。昔、FE-206Σ2発+0506IIの組み合わせでD-70を鳴らしていた時の繋ぎ方である。

 小さ目のコンデンサーでレベル調整するやり方と、大き目のコンデンサーとアッテネーターで対応するやり方の相違については、長岡先生の著書「長岡鉄男の傑作スピーカー工作 第二巻」(音楽之友社1984年4月刊 残念ながら絶版)、41項「D-3MkII」の解説記事中に詳しい。その中で先生は

 「クロスオーバー周波数を何kHzにするか、などということはあまり気にせず、全体の形、バランス、音の好みなどで、カット&トライで追い込んでいくのがいいのである」

 と書いておられる。

 ともかく2.2μFを2個、追加注文しよう。話はそこからである。アッテネーターに使う抵抗は何が良いか、ネットワークを組むならガッチリした土台に据え付けたい、それを何処にセットするのか、ケーブルの引き回しはどうするのか。また悩みが増えてしまうのである。

 CSコンデンサー、いずれにしてもお勧めアイテムである。

’02/02/10 (日)

出前迅速


 フォステクスCSコンデンサーが届いた。さすがコイズミ無線、出前迅速落書き無用である。

 実物を見るのはこれが初めて。まず、異彩を放っているのはリード線だ。なんとΦ1.6mm銅単線である。これには驚いた。銅の撚り線かと思っていたが、単線だったとは。わりと硬い単線で、弾くとビンビン鳴く。実際の使用にあたっては、何らかの方法で少しダンプしたいと思うけれど、これも音作りのうちであるならあまりいじらないほうが良いかもしれない。但し、絶縁だけはキッチリやっておきたいので、テフロンチューブを被せて使うことにしよう。

 写真手前から0.47、0.68、1.0、1.5μFである。実測サイズはそれぞれΦ16.4mm×37mm、Φ18.8mm×37mm、Φ20.7mm×37mm、Φ17.3mm×62.3mm。0.47〜1.0までは径だけが違い長さは同じ、1.5だけ全くサイズが違う。異様に細長いのである。持った感じはどれも非常に硬く重い。耐圧は交流120V、直流240V。

 入っていた袋には、名称と容量のみが記載してあるだけだし、メーカーのカタログも手許にはないので、詳しい特長などは全くわからない。本体シールには『 Non-Inductive Copper/Tin Foil Cap 』と書いてある。直訳すれば「無誘導銅/錫箔キャパシター(コンデンサー)」ということか? 穿った見方をすれば、リード線は6N銅なのかもしれない。間違っていたらフォステクスさんゴメンナサイ。

 さて、どの容量を使うのか、サイズが全て違うのでスタビライザーを作ってもらうにもどれか一つに決めなければ遺憾。ワンサイズ作ってもらって使い回し、というわけには行かないのである。汎用性はない。4サイズ全て作ってもらうのも大変である。

 ルックスはなかなか精悍、あるいはいかつい感じである。音のほうはどうだろうか。期待感極めて大、じっくりと取り組んで試聴したいと思う。

’02/02/09 (土)

繊細微妙


 AE86さんにお願いしている自作フォノイコアンプの、続・中間報告が届いた。この間のアンプ基板がシャシーに付いたところの写真である。多忙を極める中、着々と作業を進めて下さっている。ありがとうございます。

 先日掲示板に、てんてんさんからV24Cさん謹製アンプの試聴感想をいただいた。ほんの僅かな変更で音は激変、あまりの違いに驚いたというメッセージである。

 何度も書いているように、僕は電気知識があまりにも浅薄で自作アンプの世界には手が出せないでいる。興味は大いにあるのだが、上記のようなお話を聞くと、いよいよ無理だと思ってしまうのだった。その繊細微妙なことはSP工作以上ではないだろうか。僕のようなガサツな人間にはとても追い込みきれない。仮に知識があったとしても、やってるうちに何が何だかワケがわからなくなってしまいそうである。ここは知識と感性豊かなベテランへお任せするに如くは無し。申しわけないとは思うのだけれど。

 その伝からすれば今度のフォノイコアンプ、AE86さん現用のものとは随分音に違いが出そうだ。上の写真を見るだけでも、レイアウトが違うのは一目瞭然である。僅かな違いでも音に大きな変化があるわけだから、これはどんな音になるのか今からヒジョーに楽しみなことである。

 AE86さんは、製作に時間がかかっていることを大変気にしておられる御様子、とんでもない話である。元々こちらが無体なことをお願いしているわけだ。いくら時間がかかったって、ちっとも構わない。「作ってあげる」というお約束だけだって良いくらいである。それがこうして着々と組上げられて行くのだから、こんなにうれしいことはない。工程をお知らせいただくたびに、ワクワクしながら拝見している。

 AE86さん、お仕事とお体に差し障りのないよう、ゆっくりゆっくりお願いします。いつまでだって待ちますからね。どうかよろしく。

’02/02/08 (金)

考古学的資料


 4日連続のコンデンサーネタである。今日の画像はΛ、uΛコンデンサーのメーカーカタログから一部抜粋したもの。全部載せたかったが縮小すると却って見辛くなるのでトリミングした。わざわざ捜して送ってくださったのは、ベテランオーディオマニアのSY-99さんである。貴重な資料をありがとうございました。

 昔、三栄無線が配っていたΛ系コンデンサーの販促インフォメーションは持っているが、メーカーカタログを見るのはこれが初めてである。持っていらっしゃる方は少ないのではないかと思う。

 「uΛ」が「ウルトラΛ」の略だったとは知らなかった。銅蒸着フィルムコンデンサー(Cupper metalized firm condenser)である。特長は「銅蒸着ポリエステルフィルムに銅メタリコンを施し、入り口から出口まで同一金属の銅を用いたことにより微少電流のブロックが無く、又、素子の鳴きを抑えることにより、よりくせがなく、高品位の音を実現しております」とある。銅を蒸着したポリエステルフィルムに施された「銅メタリコン」って、どういうものなんだろう?

 「素子の鳴きを抑えた」とあるが、成果はこのコンデンサーを持ってみればすぐにわかる。サイズのわりに重くて硬いのである。Λコンデンサー同士を軽く打ち合わせてみると、硬度が高くしかも比重の重い石、例えば玄武岩を打ち合わせたような感触と音なのである。

 5日の画像を見ていただくと、リード線が出ている面が赤いのに気付かれるだろう。おそらくエポキシ樹脂でモールドしてあるのだろうが、この赤いエポキシ樹脂に企業秘密的ノウハウがあるような気がする。UΣコンやかつてのCUコンももちろんエポキシモールドしてあるわけだが、ちょっと爪を立ててみればΛの感触との違いがわかる。Λだけ異様に硬く重いのである。

 ディーテイルにこだわったΛコンデンサー、昔はこういう風なオーディオパーツが沢山あった。オーディオのいちばん良い時代だったのかもしれない。

 今となっては正に「オーディオ考古学」の世界である。

’02/02/07 (木)

群青色コンデンサー


 皆さんすでによくご存知だろうけれど、一応CSコンデンサーの写真を載せておこう。げんきまじんさん御提供である。ありがとうございます。

 昨日、専用スタビライザーの話を書いたら、今日早速友達がメールをくれた。「つくってあげようね」というわけである。なんて温かいオコトバ、感謝感謝大喜び。だが、肝心のCSコンデンサー本体の入手がまだである。現物合わせで作ってもらうことになるので、これがないと話にならない。さっさと買えっちゅーの。

 というわけでコイズミ無線に電話する。恥かしながら、容量が何種類揃っているのか、価格はどうなのか、な〜んにも知らなかったのである。尋ねてみれば0.33、0.47、0.68、1.0、1.5、2.2、3.3(μF)の7種類であるらしい。僕のシステム環境で使用頻度が多いと思われる0.47〜1.5μFを2個ずつ買うことにした。そのうち全容量揃えることにしよう。0.47/@1,870円、0.68/@2,000円、1.0/@2,280円、1.5/@2,680円と、さすがこだわって作られたモノだけにかなり高価なコンデンサーである。

 コンデンサー良否の判断はなかなか難しいと思う。トゥイーターの種類、下につながるユニットとの係わり、カットオフ、位相、繋ぐ方向、個々の好みなどなど、音を決めるパラメーターが多く、一概に決め付けられないのである。耐圧ひとつ取っても、大きいほうが良いという人と、小さいほうが良いという人がいて、なんだかよくわからない。実際に音を聴いて、自分の好きな音が出ればそれでOKということだろうか。何だかすごくいい加減ですケド。

 CSコンデンサー、実際に使っていらっしゃる方のお話を聞くと、相当なスグレモノらしい。先ずは僕のシステムに適正な容量を決め、しばらくエージングした後、スタビライザーの製作を依頼することにしようかな。

 小さなものだがとてもワクワクさせてくれるパーツ、それがコンデンサーである。

’02/02/06 (水)

CSのCS


 昨日「CSコンデンサー使いたい」と書いたら、流離いの旅人さんから「んじゃ、コンデンサースタビライザー作り直しですか?」とメッセージを頂いた。そうなんですよ、どうしましょうか。

 僕は「もちろんCS用のCS(ヤヤコシイ)作ります!」なんてエラそうに言える立場ではないのである。何故って、僕自身が作るわけではないから。いつでも友達に平蜘蛛のようになってオネガイしているのダ。幸いに何でも面白がって作ってくれる友達であるのが、僕にとっては救いである。たぶんCS用CSの依頼をすれば、快く引き受けてくれるとは思うが。

 まだCSコンの実物を見たことはないけれど、げんきまじんさんから送っていただいた写真を見ると、Λに比べて細長い形状で両端からリード線が出ているタイプらしい。上の写真はuΛ0.47のサイズに合わせたもの。システムで現用のものは純銅製、これは真鍮製である。基本的には同じような構造でいけるだろう。

 コンデンサースタビライザーの効果、それは思いの外大きいのである。以前は鉛板を巻き付けブチルゴムで固定したり、或いはテフロンテープできつく縛って固定したりしていたが、安定感とマスの付加いう点ではスタビライザーに遠く及ばない。この辺りが音の向上、とりわけ滲みのない高域再生に大きく寄与しているのだろうと思う。

 てなことを書いていると、やっぱりニュータイプを作ってもらわねばならんという気分になってきたから困ったなあ。音に対する欲望は、尽きることがないのである。

 なんちゅう勝手なことゆってるんでしょう。

’02/02/05 (火)

C


 右から、Λ1.35μF、uΛ0.82μF、uΛ-II 0.82μF、Hi-Λ0.47μF。その昔、太陽通信工業が作ったΛコンデンサーシリーズである。

 僕が長岡派オーディオに目覚めた頃、既に市場から姿を消していた。過去の工作記事を読んでいると、このコンデンサーの記述が頻繁に出てくるのがヒジョーに気になり、そのうちどうしても手に入れたく(昨日からこんなんばっかりやね)なった。だって、いつもホメてあるんだから。「○×コンデンサーからΛに交換、がぜん切れと透明感が向上する」なんていう先生の記述を読めば、そりゃあ欲しくなりますゼ。

 大阪日本橋のパーツ屋ジャンク屋を漁るけれども、影も形もない。秋葉原にもないものが大阪で見つかるはずもないのだが。

 とにかく何処にもないのである。こうなると益々欲しくなるのが人情である。仕舞には「どんなことをしたって手に入れてやる」という偏執的感情まで抱くようになる。

 毎月のようにMJ誌交換欄に「Λ系コンデンサー求む。容量、状態問わず、適価にて」という投稿を載せ、知り合いのベテランマニアには「見つけたら知らせて欲しい」と頼み、各誌の中古品情報を隅から隅までチェックし、手段の限りを尽くして入手に奔走したのである。

 貧すれば鈍す、こちらが異様に欲しがっていることで足元を見られ、とんでもない単価で売ってやるというアブない目にも遭ったけれど、ほとんどの方が極めて親切に、良心的な価格で譲ってくださった。おかげさまで、全シリーズ全容量というわけには行かなかったが、かなりの数のΛシリーズコンデンサーを揃えることができたのだった。

 個人的にはuΛがいちばん好きである。Λはやや粗い感じ、uΛ-II はちょっと甘め、Hi-Λは重厚だがスピード感が落ちる。とはいっても、全て他にはない「Λの音」を持っていて、大変魅力的なコンデンサーであることに間違いはないと思っている。

 気になるのはその古さである。一時良いコンデンサーがない状況が続いていて、「腐っても鯛」とΛ系を使ってきたが、ここ数年良いものが出てきはじめたようだ。最近ではフォステクスから発売されたCSシリーズコンデンサーがとても良さそうで、僕も早く使ってみたいと思っている。

 永く使ってきたΛ系、そろそろこの御老体にもリタイヤの時がやってきたようである。

’02/02/04 (月)

discontinue


 サンワfo-Res SS-30RT、RTP(プリンタ付きモデル)が昨年秋で生産完了したと、竹男さんの日誌で知った。僕が知る限りでも20年以上のロングセラーである。長岡先生の記事には、必ずといっていいほどこの測定器による写真が付いていた。それを考えると、寂しい気持ちになるのを禁じ得ないのである。

 初めて実物を見たのはもちろん方舟で。僕のシステムを最初にこれで測定してくれたのは、その頃大阪に住んでいた友人である。もう10年以上も前のことだ。

 彼は早くにこれを入手し、使いこなしていた。音方面のプロなので、仕事にも使えるというメリットがあってのことである。原型はSS-30RTだが、長岡先生と同じく最低域、最高域両端に1バンドずつレンジを拡大した特注機SS-32RT。これをわざわざ大阪からこんなイナカまで、手持ちで持参してくれたのである。

 リアルタイムでその場のF特が測定できるのを見て、僕はもう感激してしまった。グーンと上がっていく緑色のバーグラフ、何処がへこんでどこが盛り上がっているのか一目瞭然、トゥイーターの位置調整も極めてシビアに追い込める。僕は彼とは違い音のプロではないので、こんな機械を持っても使いこなすことはできない、と思いながら、また一方ではそれでもいいからどーしても欲しいという気持ちを抑え切れないのだった。

 とは言うものの、当時SS-30RTで定価478,000円、32RTになると改造調整料110,000円プラスの588,000円、おいそれと買えるシロモノではない。なんとか安い中古品はないものかと捜すのだが元々そんなにバカスカ売れるものでなし、なかなか見つからない。

 お引き合わせというのは不思議なものである。それから1年ほど経ったある日、MJ誌の「部品交換欄」を見ていたら、そこに「サンワスペクトラムアナライザーSS-30RT 新品同様 15万円」と載っていた。シンゾウが1/2に縮み、メンタマがメガネにくっ付くんじゃないかと思えるほどのショック、郵便局へダッシュし速達で往復はがきを出した。

 その甲斐あって運良く譲ってもらえることになり、改めて電話連絡すると「買って3ヶ月の新同品です。付属品はもちろん、保証書も生きています」ということだった。こんなことはめったにない。本当にありがとうございます、御礼の申し様もない、というと先様が「....15万円は高いですか?」とおっしゃる。

 「そりゃあ少しでも安いほうがありがたいですが、高くはありませんよ」

 「それじゃ、10万円にしましょうか?」

 「へ! よろしいんですか?」

 「ええ、私のほうは売れれば良いわけでして、儲けるつもりはありませんし...」

 受話器を持ったままペコペコ頭を下げてしまった。奇特な方がいらっしゃったものである。そーゆーわけで、使用3ヶ月の新同SS-30RTをたった10万円で手に入れたのだった。その後も毎月欠かさず交換欄を見ているが、こういう出物に出会うのはこれが最後である。よほど運が良かったらしい。

 純粋に測定器としてみれば、今ではPCによるもっと精度が高く機能的にも充実したものがあるわけだ。しかしこれには機械としての魅力、持つことの喜びがあり、より趣味的であるとも言える。手に入れてから約10年、時々バーグラフの一本が動かなくなったりするが、まずまず元気に働いている。

 オーバーホールは今でも可能なのだろうか?

’02/02/03 (日)

はい、チーズ


 くずてつ食べ物シリーズである。今日はゴーダチーズ。

 基本的にチーズはあまり好きではないのだが、ブルーチーズ、カマンベール、ロックフォールなど、クセの強いチーズは好きである。ゴーダチーズはどちらかと言えばクセの少ない方に入る。それでもウチのカミさんに言わせると「くせえ」そうだ。そりゃね、フツーのプロセスチーズに比べれば、ね。

 オランダ・ゴーダ市で作られる伝統的チーズである。直径30cm以上、厚さ10cm以上のでっかいタイヤみたいなやつだ。

 1987年、僕は「東西霊性交流」という禅宗とカソリックの交流会でオランダへ行った。カソリック修道院に2週間滞在したのである。通訳なし、相手はオランダ語とオランダ訛りの英語、こっちは日本語とカタコトの日本語英語、今から思えば2週間もの間、どーやってコミュニケーションしていたのだろうと不思議である。

 ある休日、修道士さんの一人が「明日はハウダへ連れてってあげよう。綺麗な街だから」と言ってくれたことがあった。「ハウダ? ハウダってナンデスカ?」とカタコトの日本語英語で尋ねると「ハウダだよ。ほら、チーズで有名な」という。それでもまだワカラナイので「地名デスかね? デハ地図で教エてくださいクレ」と指差してもらったら、そこには「GOUDA」と書いてある。

 「な〜んだ、ハウダじゃなくてゴーダではないですかダ。ゴーダチーズのゴーダね」。ナンデハウダなのか? ドイツ・オランダ語圏では「G」は「H」に似た発音になるのである。だから「GOUDA」をオランダ訛りの英語で発音すると「ハウダ」に聞こえるというわけ。正確には「ハ」とは違うのだけれども。外国語の発音をを日本語表記するのは難しいのである。『ギョエテとは 誰のことかと ゲーテ云い』。

 これに類する話が、ジャズピアニストの山下洋輔氏の著書に載っている。ヨーロッパコンサートツアーでの話である。「山下」をローマ字で書くと「YAMASHITA」、ドイツでは「や」の表記は「YA」ではなく「JA」になるので「JAMASHITA」、こう書かれた荷物タグを付けたまま再び英語圏に戻るとみんなから「ジャマシタ!」と呼ばれて困った、と。

 ともかくハウダ、いや違ったゴーダで食べたゴーダチーズは美味かったなぁ。あれ以来、日本で売っているものを色々食べたけれど、やっぱりあの時の味とは随分違うのである。上のゴーダチーズも確かに美味かった。でも、どこか違うんだなぁ。

 風景や雰囲気、街の匂い、空気の違い、自分の気持ちの違いなど、そんなことも含んでの美味さだったに違いないのである。

 この伝でいくと、箱船に御出でくださるお客様が音をホメてくださるのは、非日常なるもの故なのかもしれない。実際にはとんでもない音をお聴かせしてたりして。

 自戒せんと遺憾のである。

’02/02/02 (土)

おに鬼オニ


 020202。おにおにおに、である。さすが、節分が近いだけのことはある(?)。今日のネタにふさわしい画像にはだいぶんと苦労した。本物の鬼が撮れれば良いのだがそうも行かず、結果テキト〜なところから上のような画を引っ張って来た。しかしこれでは「鬼」というより「ナマハゲ」である。ここはひとつご親戚さんみたいなもの、ということでお許し願いたいのである。

 「鬼」とは「おぬ」「おらぬ」、つまり「いない」「存在しない」もの、という意味が元なんだそうな。本来存在しないはずのものが、怪物の姿になって現れるのが「オニ」であるわけだ。その怪物は丑寅の方角からやって来るといわれる。丑寅=北東=鬼門、というわけである。鬼門にも表と裏があるそうだが、その辺は風水に詳しい人に訊いてください。

 「疑心暗鬼」という言葉が示すように、「鬼」はどうも人々各々心の中、日常的に潜んでいるものらしい。それが何かの拍子に顕在化した時、良くないことが起こるのである。

 オーディオを趣味とする人間にとっての「鬼」とは何だろう。

 今、自分のやっている使いこなしは、これでいいのだろうか。出ている音は正常なのだろうか。もしかしてとんでもない音を聴いているのではないだろうか。自分の耳は確かなんだろうか。そーゆーことを思われたことって、ありませんか?

 僕などはいつもそう思っている。心の中は「鬼」の予備軍で一杯である。これを鎮める方法はただ一つ。「開き直り」である。乱暴を承知で言ってしまえば「おりゃあこの音が好きなんでい。文句あっかバカヤロー」という感じ。鬼が顕在化しそうになったとき、僕は一人箱船の中でそう叫ぶのである。

 てなことを言いながらよく考えたら、箱船2階の出入り口は北東にあるな。な〜んだ、明日豆を投げつけられるのは僕だったのね。ちゃんちゃん。

’02/02/01 (金)

bV0


 「一月は往ぬ」と言うが如く、あっという間に2月である。「二月は逃げる」んだそうな。

 未入手で、しかも欲しくて欲しくてシンボウたまらんA級外セレタイトルはまだまだ沢山あるけれど、今日のADもそういうタイトルの内の一枚である。第一巻70番「PERCUSSION vol.2/Sylvio Gualda」(仏 ERATO STU-71106)である。なかなかに入手困難で、友達の尽力によりようやく手に入れることができた。

 このタイトルにも方舟での思い出が詰まっている。あれは確か'92年2月28日、オーディオの先輩にあたる友達と二人で方舟へお邪魔した時のこと。その頃長岡先生は、既にADを評価されることは殆どしていらっしゃらなかった。ADプレーヤーは開店休業状態、何となく埃をかぶっているように見え、「ADを聴かせていただきたいんですが」という僕のリクエストにも「AD? この頃全然聴いてないんだよね」とあまり気乗りのしない御様子だった。そこを何とか頼み込んで聴かせていただいた数タイトルのうちに、このADが含まれていたのである。

 方舟で聴いたこの音は、凄かった。CDなど鎧袖一触、広大な音場感と超強烈なアタックにぶっ飛ばされてしまったのである。この他に打楽器のADを幾つかと、「日本の自衛隊」も聴かせてもらったような気がするが、これは別の機会だったかもしれない。一通り聴き終わった後の先生曰く「久しぶりに聴いたけど、やっぱりADはいいね〜。でも、一般的にはもう薦められないです」と。

 あれからもう早10年。僕は今、自分のシステムでこのADを聴く。あの時の方舟には遠く及ばないけれど、やはりこの音は凄い。

 長岡先生、10年経った今も、ADは確かに生き延びてますよ。