箱船航海日誌 2013年05月

日々雑感、出来事などを思いつきに任せて綴っていこう

過去の日誌コンテンツ

’13/05/31 (金)

知らない世界


 現状、ADプレーヤー3号に使っているカートリッジはLYRA HELIKONである。フォノケーブルはZonotone 7NTW-7060 Grandio(名前長い)、それがフォノイコライザーヘッドアンプ HX-10000につながり、C-280VのLINEに入っている。

 この組み合わせは以前、ADプレーヤー2号でも試したことがある。その時の印象は「非常に静かできれいな音だがやや暗めの音調、溌剌さに欠ける」といったものだった。したがって今回も、そのような傾向になるのか、そうであれば何らかの対策を打たねばならん、と考えていたのだが。

 オーディオは面白い。案に相違して大変明るく溌剌としているのである。先日も書いたとおり、切れと立ち上がりの良い、爽快な音だ。暗さはまったく感じられない。

 もちろん、2号機と3号機ではキャビネットもアームボードもアームもぜんぜん違うわけだから、出てくる音も違って当り前。そうとわかっていても、こんなに変るものなのかと、驚くのだった。僕はもう、フォノケーブル7060とHX-10000を、改めて見直してしまうのである。こーゆー音も出るンだ。

 まだまだ知らないオーディオ世界が、あるんだなあ。

’13/05/30 (木)

消滅

 オーディオ誌のワルクチなんか書くから、言わんこっちゃない。共同通信社の「Gaudio」が、今号を以って休刊するという。「AUDIO BASIC」からリニューアルしてから、たった3号を刊行したのみで終わってしまうわけだ。休刊とは、実質廃刊と同義である。休刊から復刊したオーディオ雑誌の例を、僕は知らない。

 さもありなん、というのが正直な感想である。力んでリニューアルはしてみたものの妙に中途半端で、却ってクオリティ低下の著しさを印象づけてしまった感が強い。昨日も書いたとおりである。一読者とすれば、中途半端に変身するよりも、思い切ったライターの刷新を図ったほうがよかったンじゃないかと思う。オーディオ評論の質低下も然ることながら、そもそも文章として面白くないのである。一読感銘を与えるような文章を紡ぐ難しさは身に沁みて知っているけれども、そこは商業誌に書くプロなンだから。

 最終号223項に掲載された休刊の言にも、いささかならぬ違和感を持つわけだが、まあ、もうよしとしよう。僕も「従来のスタイルのオーディオという趣味」に未練がましくかかずらわり、「新たな入門者の獲得」にわずかばかりも寄与できなかった「高齢者」の一人なのだ。あまりエラそうなことは言えない。

 誌名体裁変更後、間もなく休刊。これは一つのパターンである。ある意味末期症状なのだろう。最近、永い歴史を持ったあるオーディオ誌が、誌名こそ同じであるものの版の大きさを変えた。編集方針に大きな転換こそないようだが、僕は一抹の不安を拭い切れない。どうもイヤな予感がするのである。

 趣味としてのオーディオが、消滅しようとしている。

’13/05/29 (水)

凋落

 今日は長岡先生13回目のご命日である。あっという間の13年。僕のオーディオは当時と何も変っちゃいないけれども、世にあるオーディオはずいぶん変化が大きいのである。

 装置やフォーマットは進化多様化し、良くなったこともあれば悪くなったこともある。ただ、そういった状況をとりまくオーディオメディアは、どんどん劣化する一方に感じている。

 オーディオ雑誌の凋落が著しい。ほとんど読むところがありません。特に腹立たしいのは、シロウトに毛の生えたようなヤツが、プロ評論家気取りで偉そうな記事を書いていること。否、こんなことゆったらシロウトに失礼だ。シロウト以下。なんだ、あれは。

 ずいぶん以前から少なからず違和感を持っていたが、最近は特にヒドイ。最新号なんかもう、支離滅裂である。名指しでボロクソに言いたいほどだ。あんなヤツに書かせるなと。できないケド。

 今のオーディオ雑誌に期待するほうが馬鹿なのだ、それほどイヤなら読まなきゃいい。その通りなのである。これまで惰性のようにして購読してきたけれども、ここらが潮時。永く読み続けている4誌のうち、少なくとも2誌は次号から買わないことに決めた。お金払って腹立てていても仕様がないのである。

 長岡先生没後、本物のプロは最早絶滅寸前である。悲しいなあ。

’13/05/28 (火)

豪快且つ繊細


 ロングアームについてリクツを述べたけれども、要するにレコードが良い音で再生されればすべて吉、なわけである。

 実際には、素晴らしい音で鳴っている。殊に際立っているのは立ち上がりの良さ、低域の伸びと締まりである。前者はアームボードの重量・強度が増したから、後者はロングアームの持ち味ではないかと思う。

 アームボードを純銅・真鍮の二層構造にしたのは大正解。それぞれ単体では盛大に鳴くけれども、重ねてネジで止めてしまえばほとんど鳴かない。テスト運転で使った30mm厚真鍮板と比較して、うんと静かである。同じ厚さの純鉛板よりも鳴かないかもしれない。

 こうなるとデメリットよりもメリットが前面に出てくるわけで、それは「立ち上がりの良さ」という形で如実に表れている。アームの足元がしっかりと踏ん張れるから、トランジェントが良くなるのだろう。余分な音が少なく、分解能も非常に高い。22.5kgの目方は、無駄ではないのだ。

 WE-506/30のほうは、上にも書いたとおり低域の伸びが素晴らしく、しかもぐっと引き締まっていて大変力強い。周波数特性に違いが出るわけはないのだが、聴感上ではレンジがぐんと広くなったような印象である。何を聴いても実に楽しい。特に、キチンと録音されたフュージョンやポップス音源では、最高のパフォーマンスを示す。シェフィールドの「Pat Coil / Just Ahead」(TLP-34 HQ)などは、聴いたことがないような豪快且つ繊細な音が飛び出してきてビックリ仰天。

 現時点でこの音であれば、まず以って問題なし。細かな部分を追い込むうち、さらに良い音へ進化してゆくだろう。

 ちゅうわけで、早速アームボード下部のデッドスペースに粒状鉛を押し込んでみる。Ziplocに封入して約5kg分。調子に乗って入れすぎて、入り口からハミ出している。かっこわる。体裁は後で整えるとして、音の向上には少なからず寄与したようだ。

 やっぱりオーディオは楽しいなあ。

’13/05/25 (土)

わかっちゃいるけど


 オーディオを趣味にしてずいぶんになるけれども、ロングアームを使うのはこれが初めてである。

 ロングアーム、と言って明確な定義があるわけではなく、一般的に実効長(有効長にオーバーハングを加えた長さ)が12インチ(約30.5cm)程度のアームをそう呼んでいる。WE-506/30のバヤイ、実効長は295mmになっている。

 元々は、大昔にあった40cmLP再生に対応するため生れ出でたアームである。30cmLPが主流になって以降は、厳密に言えば需要がなくなったはず、なのだが、主にトラッキングエラーの少なさが重宝され、現在も生き残っている。

 理論上、支点から針先の長さが長くなればなるほど、トラッキングエラーは少なくなるわけだ。針先が描く弧が、限りなく直線に近づくからである。ならばリニアトラッキングなんてメンドウなことはやめて、実効長1mくらいの超ロングアームを作ればよい、と思うが現実はそう簡単には行かないのである。

 長くなれば機械的強度が落ちる。強度を上げようとすると重くなって使い物にならない。慣性モーメントが大きくなり、追従性が悪くなる。長いヤジロベエを思い浮かべていただければ、イメージしやすいと思う。一旦傾いたら、元の位置に戻るのに時間がかかるわけだ。盤のソリによってアームが跳ね上げられてしまうおそれがあるし、何よりも音溝を正確に追っかけられなくなる。

 リクツだけで考えれば、トラッキングエラーの点を除いて明らかに短いほうが有利なのである。一般的にショートアームと言われるものの実効長は9インチ(約23cm)、たった7cm程度長いだけである。それによって得られるトラッキングエラー改善のメリットよりも、強度低下、慣性モーメント増大によるデメリットのほうが大きいのではないのだろうか。

 そのように心得ていても、僕はロングアームを使ってみたかった。理由は単純明快。カッコイイから、である。特にWE-506/30は、他のどのロングアームよりも美しくカッコイイ。二十数年前、僕が敬愛して止まない友達の一人がこれを使っているの見て以来、ずっと憧れてきたアームなのだ。その夢が、今叶うわけである。

 オーディオは、顔が命です。

’13/05/24 (金)

完全形へ進化


 1週間のご無沙汰でございました。激しい寒暖差に立ち遅れ、しっかり風邪をひいてクタバッておりました。まだ咳がケホケホ出るけれども、そろそろ復帰せねば遺憾。いやですねえ、歳を取ると治りが遅くて。

 そうしているうちに、予定よりもずいぶん早く本番製品アームボードの加工ができあがってきた。これのおかげで元気が出たかな。早速組み立てにかかり、勢い余ってWE-506/30の取り付けまで完了してしまった。ご覧の通りである。

 20mm厚純銅板+10mm厚真鍮板、都合30mm厚の迫力は凄い。実測重量22.5kg。予想したとおり、素のまま手掛かりなしでは安全な取り付けが望めない。友達の智慧も借りつつ、ちょっとばかり工夫を加える。それでもなお、軽々とは行かなかった。

 これでめでたく、ADプレーヤー3号機完成である。思い立ってから何年かかったのか。WE-506/30を入手してからでも2年半経っている。牛の歩みですらなく、最早蝸牛の歩みである。

 総重量130kg超。ウッドキャビネットを基本とするADプレーヤーとしては、かなりの重量級に仕上げることができたと思う。ただ重けりゃいいってもんでもないけれども、少なくとも軽いよりはいいはずだ。ルックスも個人的には大いに気に入っている。無骨ではあるものの、上品さを欠かなかったのは山越木工房クオリティキャビネットのおかげさま。

 さあ、どんどん聴こう。

’13/05/16 (木)

ホラ穴の功罪


 アームボード下のデッドスペースは、このようなグワイになっている。長岡先生のオリジナル設計に比べると、容積はかなり大きい。キャビネットの構造強度低下、余分な空洞による共振などで、音的にはデメリットになるだろう。

 アーム設置のことだけを考えれば、もう少し小さくすることもできたわけだが、敢えてそうしなかったのにはワケがある。写真に見えている開口寸法は54mm×130mm、これくらいあると手が差し込めるのである。実用上、これはわりと大きなメリットになるのだ。

 例えば今使っているEPA-100MkII。このアームはアームベースと本体が一体型分離不可能である。従って、アームをボードに取り付けたあと、あらかじめアームコードを接続しておいてからキャビネットに載せる段取りになる。アームボードが重いバヤイ、この作業がヒジョーにやりにくく、キケンを伴うのである。

 キャビネット裏側の開口から手が入れば、まずアームが付いたボードをキャビに設置してしまい、そのあとコードをつなぐことができるわけだ。実際にやってみると、とてもラクチンである。危機感ゼロ。やはり間口を大きくしておいたのは正解だったと思う。

 では、デッドスペース容積が大きくなってしまったデメリットは、どうやって回避するか。強度低下については、仕方がないと思う。妥協しましょう。空洞共振のほうは、吸音材と得意の粒状鉛で対策すれば、何とかならん、かな。

 ただ、現状対策していなくとも、特に不グワイは感じない。アームボードの横幅が狭い所為で、上面の開口を覆い切っておらず、一端が閉じたホラ穴空間になっていないからかもしれない。

 後日、本番製品アームボードを載せ、改めて様子を見たい。

’13/05/15 (水)

載せる


 まずは好調な3号機である。大喜びで1日に最低1枚はレコードを聴いている。ヤッパリ、アナログは良いなあ。

 現状、少しばかり気になるアームボードの鳴きを抑える工夫をしてみた。あまり頭の良いやり方とは言えない。純銅、砲金スタビライザーを載せ、その上さらに某社アンプからひっぺがした純銅製の脚を置いてみただけのことである。

 急場凌ぎの実験だからルックスは無視、ご覧の通りムチャなことになっている。だが、こんなことでも音は変るのである。高域に載っていたツッパリ感が消え、よりスムーズな音になったようだ。ただ、鳴きが抑えられてそうなったのか、目方が増えた(+3kg)効果なのか、その両方なのか、イマイチよくワカリマセン。まあ、結果オーライならそれで吉。

 テスト運転はさらに続きます。

’13/05/14 (火)

パワフル・ストレート


 それぞれのパーツに問題がなければ、正常な再生ができて当然。のはずだが、やはり一抹の不安は拭いきれない。と同時に期待感もあるわけだ。3号機初の音出しである。

 ラック内には50kgの御影石とリタイヤしたPRA-2000ZRを重石代わりに入れ、そして出てきた音は、すごくいい音だった。一聴して際立っているのは、たいへん静かなことである。余分な音が出ない。キャビネットの工作精度が高く、曖昧な部分がないからだろうと思う。

 音そのものは緩み弛みがなく、極めてパワフルでストレートである。細かい音まで十全に再生される。立ち上がりは鋭く、しかも耳障りにならない。一片の雲もない晴れ渡った青空を見るに似た爽快感、透明感がある。

 真鍮アームボードの鳴きはまったくない、とは言えないようで、音源によってはちょっと気になるところもある。けれども、予想していたほどではない。もっとクセが出るかと心配していたのである。純銅+真鍮の本番製品は、思っていたより上手く行くかもしれない。そういった手応えを感じさせる音でもある。

 設置直後のADプレーヤーは、ロクな音が出ない。ままあることだ。今回は、いきなり凄い音が飛び出してきて、いささか驚いている。未だ少々の生硬さや浮ついた感じがあるのは否めないものの、現時点でこの音ならば、3号機の前途は洋々である。

 やはりキャビネットは、極めて重要なパーツなのだ。

’13/05/13 (月)

3号機、発進


 完全形ではないものの、ADプレーヤーとして一応の完成を見た3号機である。アームボードは必要な部分だけを切り取って載せたような形で、実用的にはまったく問題なし。ガタなくぴったり収まっている。厚みが30mmだったのは幸いである。

 この状態で、御影石を含む総重量は118kgになった。仕上がり待ちのアームボードに載せかえると、+12kgで130kgになる予定。当初の目標値であった総重量100kg以上を、無事クリアしたわけだ。その点では、成功と言える。

 しかし、ADプレーヤーとしての成功作か否かは、レコードを再生して初めて分るわけである。キャビネットは最高の出来、フォノモーターは現状健全。アームも、ゼロバランスから調整した感じでは動作に問題はないようだ。カートリッジにLYRA HELIKONを選び、YAMAHA HX-10000からC-280Vへ繋いで音出しに進む。

 何年やっても、この瞬間は堪えられない。

’13/05/12 (日)

過去の遺物


 現状、3号機に使える手持ちのアームボードは420×100×30mm真鍮製、φ62のアーム取り付け穴が開いているものである。穴径とその位置からして、EPA-100MkII専用と言ってよい。厚みは3号機にピッタリだが、縦横寸法は足りていない。実用的には何ら問題はなく、当面はこれでテスト運転する。

 アームはご覧の通り。スペアがあります。「アナログなんかカスだゴミだ過去の遺物だ」とボロクソに言われ、多くの人が見向きもしなかった頃(1990年〜92年頃)に入手した中古品である。状態は抜群、ほとんど新品であった。今になってみれば、よくぞ買っておいたものだと思う。

 ずいぶん永く動かしていないから、その点では不安がないでもない。ざっと点検したところでは、外観上の不グワイは見られなかった。劣化しやすい樹脂部分も大丈夫そう。あとは可動部分、カウンターウェイトと、特に重要なのはサポート部である。これらの状態については、実際に使ってみないと分らないわけだ。

 健全でありますように。

’13/05/11 (土)

AT677


 このTTシートを買ったのはいつのことか、忘れてしまうほど大昔である。たぶん、1986年か87年だったと思う。27年前って、ホントに大昔だ。

 audio-technica AT677である。2005年から2009年まで2号機に使い、このたびは4年ぶりの再登場になる。φ289mm、外周7mm厚、内周4.5mm厚、重量980g。砲金製に比べれば貫禄負けするのは否めないけれども、決して悪いものではない。見た目の色から真鍮製と間違われることがある。実際はアルミ製である。表面がサファイア(酸化アルミニウム)処理されていて、真鍮に似た色に見えるだけ。27年経っていても劣化がほとんど見られないのは、サファイア処理の効果である。

 今回のような条件で使うのは初めてである。砲金シートとは当然違った音になるであろうけれども、何となく上手く行きそうな気がする。少なくともヘンテコリンな音には、ならないンじゃないかな。と、確たる根拠もなく期待している。

 ルックスも、悪くないし。

’13/05/10 (金)

TTシート


 次に思案するのはTTシートである。ソフト系かハード系か。前者なら往年の名シート、パイオニアJP-501がある。極めて優秀。よい意味でのオーソドックスサウンドを狙うならこれで決まりだと思う。2002年までは僕もこれを使っていた。

 2002年以降はY31 project謹製砲金TTシートになっている。それから12年、1号機2号機とも継続して使い続けている。ハード系の最右翼である。尤も、今やこの手のものは市販品にほとんど存在しないから、右も左もないわけだが。

 音もまさにその通り。と言ってしまって誤解があると遺憾。金属的な音はまったく出ない。実に清澄で立ち上がりの良い、明るくシャープな音である。盤のスリップを懸念するムキもあるようだが、心配には及ばない。但し、スタビライザーは絶対必要。僕の選択は、やはりこれになる。

 と言ってもおいそれともう1枚買えるものでもなく。ではどーするか。ハード系で行くことだけは決定し、先ずはその下準備を。というわけで、写真はfo.Q RS-912の1mm厚シートを置いたところである。この上に、大昔の市販ハード系TTシートを載せようというわけだ。

 すでにネタはバレている。

’13/05/09 (木)

ランニングテスト


 プラッタが着けば、一応フォノモーターとしては完全な形になったわけである。プレーヤーとして出来上がるまでにはもう少し。ここで功を焦っては遺憾。モーターが正常に動作するか否か、テストせねばならないのである。

 なにしろ来歴不明の太古品である。傷の多さから見て、丁寧な扱いを受けてきたとも思えない。回転軸への注油はどーなっているのだろうか。ヒジョーに気になったから今後の安全を見てオイルを注し、試運転開始。

 ちゃんと動いている。33、45、78各回転すべて正常。ストロボの揺らぎはなく、擦れの異音も発生していないようだ。回転するプラッタの縁を真横から、文字通り目を皿のようにして凝視しスリコギ運動の有無を確認。OKである。スタートストップも問題なし。瞬時に定速回転へ達し、瞬時に停止する。

 新たに注したオイルがまんべんなく軸へまわるよう1時間程度連続運転し、当面のテスト運転は完了とした。今後使っていくうちにぶっ壊れても、それはもう仕方ないのである。その時々で対応して行くしかない。

 次は、ええと、何だっけな。

’13/05/08 (水)

プラッタ取り付け


 プラッタ取り付け。最も緊張し、最もいやな作業である。SP-10MkIIIを使い始めて25年以上、これまでに何度着け外ししただろうか、未だに慣れることができないでいる。

 センタースピンドルを目指し、できる限り真上から垂直に落とし込まねばならない。プラッタ裏側のハカマ部分にはマグネットが内貼りされていて、ユニット側のコイルと一定以上の距離に近づくとグイッと引っぱり込まれるのも、作業を難しくする原因の一つである。

 今回お役御免となったYAMAHA GTラックを踏み台とし、キャビネットを跨ぐような格好で慎重に取り付ける。完全に嵌まり込む直前の感触は、やはりブキミである。まずまず無事に嵌まった様子で一安心。

 写真はセンターロックナットを締め込んでいるところである。その際、迂闊にプラッタの外周部を押さえてはいけない。センタースピンドルがキケンである。しかしどこかを手がかりにして踏ん張らないと、プラッタがクルクル回ってしまって充分に締まらない。ので、プラッタ取り付け用のハンドルを1本残し、これを手がかりとする。

 ずいぶんADプレーヤーらしくなってきた。

’13/05/07 (火)

鎮座


 モーターユニットの取り付けを完了し、所定の位置に鎮座するの図。ここまで来ると、もう「ADプレーヤー」と呼んでも差し支えない、かな。

 キャビネット24kg+粒状鉛15kg+モーターユニット8kg、計47kg。ドラム椅子からスライドさせるように載せたわけだが、思ったよりは危機感なく移動させることができた。ただ、スライドさせる際、御影石に敷いた8mm厚鉛板がずれそうだったから、端っこに40kgくらいの重石をかけておいた。それが奏功したようだ。

 鉛板の表面、キャビネットの底面、それぞれに微妙な粗さがあるおかげで、スリップなく容易には動かない、という実にほどよい食い付きグワイである。意図してこうなったわけではないところが、如何にも僕の所業である。運が良いのかアホなのか。たぶん後者だ。

 次は10kgのプラッタを取り付ける。

’13/05/06 (月)

ナットを締める


 締め付けに使うのは、蝶ナットか長ナットか。ブラインドタッチになることを考えて蝶ナットを用意したのだが、やってみると長ナットをメガネレンチで締める方法でもまったく問題ないことがわかった。どう考えてもそのほうが確実なわけで、ここは迷いなく長ナットを選択する。

 底板はご覧の通り、ネジ穴周囲をφ60に切り抜いてある。1枚の板厚は27mmあるから、この程度の径で抜いておかないとレンチが使えなくなるおそれがあるのだ。もちろん、山越木工房さんの技術を以ってすれば、ザグリの深さは自由自在、任意に決められる。1枚分を抜いてしまわなくともよいわけだ。浅めのほうがレンチ使用には差支えが出にくい、のだが。

 さりとてザグリが浅すぎると、長ナットの頭が下方へ飛び出すおそれも出てくる。板厚分の深さ27mmは、ナット頭が確実に引っ込みレンチ使用に問題が出ない、ちょうど良いくらいの寸法なのである。

 死に物狂いのチカラで無闇に締めてはイケナイ。5本のナットをできるだけ均等に、強すぎず緩すぎず、必要にして充分な力加減で締めるのがよい。これはなんとも表現し難いグワイであって、幾度かやっているうちに何となくわかってくる、といった類のものである。音にも少なからず影響するから、疎かにはできない。

 この作業を無事通過できれば、まずは一息。

’13/05/05 (日)

モーター取り付け


 デッドスペースの処理が終わったならば、次はモーターユニットの取付である。先月2日の日誌に書いたとおり、裏側の取り付けネジ穴から「全長指定全ネジ」の脚を生やし、キャビネットを裏返さず上から取り付ける。

 これは大変上手いグワイに収まった。何のストレスもなくカチッと決まって万々歳。165mmで注文した全ネジの長さもちょうど好い加減である。キャビネットが特に重くなくても、こうしたほうが楽に、しかも安全に付くンじゃないかな。支える「馬」はドラム椅子である必要はなく、比較的しっかりした円形スツールのようなものなら使えると思う。

 あとは、底板のほうから蝶ナット、または長ナットで締め付ければ、モーターユニット取り付け完了となるわけである。

 形が見えてきた。

’13/05/04 (土)

吸音材投入


 粒状鉛を詰めた上には、脱脂綿を敷いた。吸音材を入れることで、空洞共振をより抑え込もうというわけだ。それともう一つ、モーターユニットの底を下から軽く押し上げ、鳴きを抑える狙いもある。

 この方法は決して僕のオリジナルではない。昔、長岡先生が薦めておられた対策である。どこだったかはまったく忘れました。たぶん、stereo誌か、別冊FMfanではなかったかな。極めていい加減な記憶です。

 先生の記事の中では「寸法よりも少し厚めのスポンジを入れ、底を押し上げるようにしておくと良い」というような記述であった。これを読んだ僕は、アンプ底板の鳴き止めに応用したのだったが、大失敗。アンプの熱でスポンジが激しく劣化、風邪をひきニチャニチャになって往生したことがある。

 それ以来、僕はスポンジがキライになった。トラウマである。或いは、羹に懲りて膾を吹く、と言ってもよい。自分が馬鹿な所為でこうなったクセに。

 スポンジはキライ、グラスウールはチクチクするしカラダにも悪い、粗毛フェルトは毛埃がたくさん出るからイヤ、っちゅうわけで、僕の選択吸音材は脱脂綿なのである。第一安いし、どこでも手に入るのがありがたいのである。自然素材だから安心。だが、虫が湧きやすいとか、ゴキブリさんの好物であるとかのデメリットもある。

 まあ、おおかた大丈夫だろう。

’13/05/03 (金)

デッドスペース対策


 御影石の上には鉛板を置く。これも事前にコツコツとワウフタッラー歪みを熨しておいたおかげで、ガタなく水平が出た。各パーツが順次到着したメリットである。いっぺんに全部揃っていたら、こうは行かなかったと思う。次はいよいよキャビネット+モーターユニットである。

 モーターが取り付く抜き穴の深さは、指定寸法よりもかなり深い。お釜の底からキャビ底板までのデッドスペース容積が、大きくなっているわけだ。そのまま何もせずとも致命的な問題にはならないだろうけれども、ホラ穴を残しておくのはあまり気色の良いものでもない。

 プレーヤー全体の重心を考えた時、今のままではやや右(アーム方向)に偏っている。持ち上げてみればすぐに分ることである。モーターが付きアームボードが付いても、各パーツ重量からしてその状態は大きく変らないはず。となれば、モーター下部にマスを付けることで、重心を少しでも左(センタースピンドル付近)へ移動させることができるかもしれない。

 そこで、お釜の底下部に粒状鉛を詰め込む。キャビを床に置いてこれをやってしまうと、持ち上げられなくなること必定。高さを無段階で調節できるドラム椅子に載せ、一端をラックで支えながらの作業である。鉛粒をそのままバラバラ詰めたら復原に困るから、ビニール袋に小分けして11包分、約15kg入った。

 重心の補正、デッドスペースの有効利用、全体重量の増加、空洞共振の抑制など、一石三鳥四鳥を狙った対策だが、正確なAB比較試聴はほとんど不可能だから、効果のほどは分らない。

 役に立っていると、思っておきましょう。

’13/05/02 (木)

セッティング始め


 セッティング始めは、まず土台から。キャビネットと同じく山越木工房謹製バーチラックYBR 001を、2号機の隣に置く。少し前へ出っ張っているのは、この後に床付けコンセントがあるから。余計なお話だが、将来オーディオ専用ルームの建築を考えておられる方に於かれては、床付けコンセントの位置、或いは設置の有無について、よほど熟考されたほうがヨロシイ。後になって困ります。ワタクシのように。

 コンセントを取っ払うこともできるけれども、今回はこのままで設置を進める。床とラックがスキマなく密着し、しかも一発で水平が出れば文句なし。だが、そんなに上手くは行かない。ラックの底板はまっ平らに仕上がっている。しかし、コンクリートコテ仕上げの床は、強度は高くも有体に言ってデコボコだらけなのだ。

 天板に業務用の大型水平器を置き、床とラックのスキマにPタイル、鉛薄板、0.3mm厚天然ゴムシート等を使い、慎重にガタを取りながら水平を出す。それだけで2時間以上かかりました。ああ、しんど。

 ラックが設置できたら、次は御影石である。これは一発でガタなく水平が出た。ラック天板とも、ほぼ密着している。注文を多く付けて注意深く作ってもらったおかげである。

 尤も、互いに完全平面、などということはあり得ない。もしそうであれば、置いただけでくっ付いて離れなくなります。ミクロの目で見ればスキマだらけであろうけれども、まあ、その辺は妥協してしまうのである。念のため御影石の上に立って幾度か足踏み、再度水平器を確認して、ラック+御影石までの設置完了。

 次へ進みます。

’13/05/01 (水)

3号機キャビネット到着


 ADプレーヤー3号機に具するキャビネットが、山越木工房さんから届いた。梱包を開いてみれば、実物は写真で見るよりずっと美しく重厚である。体重計で量ったら、24kgあった。一人で持つにはそれなりに身構えねばならない重さだ。純粋に、キャビネットだけの重量である。

 あんまり嬉しくて気が逸り、モーターユニットと手持ちの真鍮製アームボード(420×100×30mm、約10kg)を載せてみたのが上の写真である。うーむ、かっこいい。この状態ですでに42kg、何とか持ち上げるだけならできても、狙いを定めて正確に設置するのは無理だと思う。

 キャビネットの出来は、最高である。美しさはもちろんだが、何よりも素晴らしいのは、底面、天面の平面度である。イヤラシくもサシガネを当てて調べてみたら、まっ平らだった。さすが山越木工房クォリティ。僕のようなシロウトの自作では、絶対に実現できない平面度である。

 御影石、鉛板、キャビネット、さらにアームボードと、接着せず重ねて設置するバヤイ、各接触面の平面度を正確に出すことは極めて重要である。1号機のキャビネットでは、それを出すのに塗炭の苦しみを味わった。現状でも、満足できる域には到達していない。

 では、初期セッティングを始めよう。