箱船航海日誌 2009年02月
日々雑感、出来事などを思いつきに任せて綴っていこう
失敗
材料を仕入れたところで挫折し、結果、工作名人である友達の手を煩わせることになった自作指掛け。今回、V24Cさん謹製SiCシェル・ロングバージョンを使ってみようと思い立ち、それに具する指掛け自作に再挑戦したのだった。 結果はご覧の通りである。写真では、グワイ良く出来た、ように見える。実際は、不グワイだらけである。 シェルに取り付く部分と、指がかかる部分が同じ幅寸法になってしまっている。本当は、後者部分が2mm程度細くなっていないと遺憾のである。金切鋏で切ったところが、そこまでの細工が出来なかったのである。妙に太く、デクデクしていて高級感ゼロ。ヒジョーに不格好である。 裁断時にかかった板へのストレスを取りきれず、雨樋状の歪みが全体に及んでいる。これではまるで、出来の悪いブリキ細工だ。 切り口を補正するため、カドにRをつけるためにヤスリをかけたら、そこらじゅう傷だらけになって、これまたルックス最悪。しかも切り口の歪みは完全に補正できていない。ナニやってンだか。 思惑通りに成形できなかった所為で、重量が0.89gになってしまった。ほんの少しでも軽量化したいところへ、この有様である。カートリッジはテクニカAT33ML/OCC(たぶん後期型)、総重量30.98g。カウンターウエイトを増やしてあると言えども、この重量はかなり苦しいと思う。 失敗の原因。第一は、僕の工作技術が低いこと。それがほとんどすべて、と言ってよいわけだが、加えて、工具の質が低かったこともある。その辺のホームセンターで買った金切鋏、0.5mm厚SUS板を1回切ったら、刃がめくれ上がってオダブツである。やはり某国製498円では、ダメだな。 小さな部品とは言え、ヤスリがけの時にはバイス(万力)が要る。蔵のどこかにミニ万力があったはずだから、2作目を作る時にはひっぱり出してこよう。 工作名人をして、手間を取らせた工作である。僕如きがいきなり成功するはずもないのは当然なのだ。と、言いわけをしておいて、2回目の自作に挑むのである。 SUS板は、まだまだあるぞ。 |
支持器でした
L字型アルミナセラミックスは、写真の如き状況でオーディオ用として使うことになる。「また明日」などと引っぱるほどのことでもない、例によってケーブル支持器、である。 乗っかっているのは、トーンアームからMCヘッドアンプへつながる出力ケーブルである。箱船システム中、最も微弱な信号が流れていると思われるところだ。こういうケーブルが、床にべったり這っているのは何となくキボチ悪くて、以前から何か方法はないものかと、思案していたのである。 金物で浮かすのはどうもパッとしない。と言って木材では軽すぎてイヤだ。そこへL字型アルミナセラミックスである。渡りに船と、喜んで使ってみたわけである。 L字型だけではケーブルを固定し切れないから、前にもらった直方体型のブロックを組み合わせて使う。適当な間隔で二箇所、上手く床から浮かせることができた。 さりとて、この対策が大いなる音質向上をもたらすのか。対策後、実際に試聴してみたケレドモ、まあ、何となく透明感が上がったような、そうでもないような、くらいの違いである。プラシーボ効果かもしれない。少なくとも悪くはないようなので、このまま使うことにする。 個人的には、ヒジョーに気に入っております。 |
用途外使用
写真の物体は今月初め、工作名人であるところの友達からもらったものである。アルミナセラミックスの人形用座椅子、ではない。 昨年12月2日の日誌に載せた、食品解凍用として採用のアルミナ円盤。それと併用して解凍効率アップを狙うための、パーツである。円盤に載せた冷凍食品を、L字型のコレで囲って解凍速度を上げよう、というわけだ。 元々はロの字型だったものを、わざわざL字型2つに切ってくださった。いつもながらの細やかなお心配りである。僕は、実物を見て触った瞬間、オーディオモードONになってしまった。幅40mm、高さ76mm。接地部分の厚み14mm、背もたれ部分11mm。1個283g。これを解凍用に使うのは、いささかモッタイナイ。ありがたく、オーディオ用途として使わせていただくのである。 何処にどーやって使うか。それは、また明日。 |
また、これか
カートリッジをとっかえひっかえしていた間にも、ちょこちょこレコードは買っていて、上の写真はそのうちの1枚である。 またこれか、のタイトルだ。何度載せたかわからない。BOSTONのデビューアルバム「BOSTON」(邦題 / 宇宙の彼方へ)である。今回のバージョンは、2008年9月に米EPICから出た180g盤リマスターADである。Amazonからの「おすすめメール」で知ったものだ。もちろん、未開封新盤。レコード番号は「88697335571」と、やたらに長い。 180g盤のわりに1,964円と安価である。復刻盤というよりは再発盤に近いものだと思う。ショップのカタログにも、ジャケット・クレジットにも、リマスターについての詳しい記述無し。何だかよくワカランADだ。 開封し、盤を取り出してみる。確かに重く厚い180g盤だが、埃だらけである。ついでに正体不明の汚れもくっついている。ロック系、特に米盤にはこういうモノが多く、殊更に驚くほどのことはない。それにしても、これホントに新盤ですかと言いたくなるような、ひどい汚れ様であった。 こういうバヤイはともかくレコパックだ。汚れていただけで、キズがなかったのは幸いである。もう少しでいいから、丁寧な製品管理を望みたいところ。 中低域は厚めで、力があって良い。残念ながらハイの伸びと切れがイマイチ。中域も痩せたような印象があり、ややヒステリック。総体的にハイ落ちローブースト型である。試しにMo-Fiの200g復刻盤と比較してみたが、勝負あり。Mo-Fi盤の圧勝である。まあ、こんなものだろう。 オリジナル発売から33年、未だに復刻再発され続けるのは、驚くべきことである。さらに、それを買い続ける物好きなニンゲンがいるという事実。我が事ながら「アホやな」と思う。 これも趣味である。 |
最後のADファン
常用カートリッジはEminentで決まり、で結構だが、未だβチタン合金ビスを試用していないカートリッジもあるわけだ。写真のものである。今後はこれらもビス交換し、試聴したいと考えている。特にMC-L1000などはヒジョーに興味深い。 2ヶ月以上にわたって、手持ちカートリッジを聴いてきた。多くの発見と驚きがあって、AD再生の奥深さ、趣味性の高さに改めて気付かされたのだった。旧いカートリッジだからといって、音まで旧いわけではないこと。高価なカートリッジの音には、それだけの強い説得力があること。個人的には、どうやってもADの音が好きなこと。 音声、映像ともにディジタル化が主流の今、ADがオーディオの王座に復活することは絶対にない。けれども、完全に消え去ることもなく、生き残っている。何故だろう。音の良いから、ではないと思う。 規格統一がいい加減で取り扱いに手間がかかり、音を変える要素がやたらと多く、しかもお金がかかる。ヒジョーに厄介である。厄介なものほど楽しいのが趣味の常、簡単一発に望みが実現してしまったのでは、面白くも何ともないのである。この辺りが今も細々と生き残る因になっているのだろう。 但し、若い人向きではない、とも思う。実際、僕の周りにいるADファンは四十過ぎのオッサンばかりで、二十代なんか一人もいない。三十台もいないかな。だからこそ「細々」としているわけで、まあ、やがては絶滅するのである。いろはにほへとちりぬるを。 「最後のADファン」になれれば、本望だ。 |
Eminent Sound
Eminentを再びアームにつけて聴いたが最後、ほかのカートリッジに換える気が失せてしまうだろうと、思っていたらやはりその通りになった。 ビスを換装し、第一音が出た瞬間、格の違いに唖然としてしまった。文字通り、他を圧倒する音の良さである。恐るべき情報量の多さ。恐るべき解像度。目も眩むトランジェントの良さ。それでいて歪み感、滲み感はまったくない。音に猛烈な力感があり、実在感抜群。音場、音像ともリアルの極致である。あまりにも良い音なものだから、僕は感激してナミダが出てしまいました。 SUSキャップビスで取り付けていた時の音に、特に文句も不満もなかったわけである。今こうして聴いてみれば、明らかに従来を上回っている。ビスを換装して、Eminentの良さがさらに際立った感じである。まさに「eminent」なサウンド、というわけだ。 βチタン合金ビスの最大のメリットは、そのカートリッジが持つ能力を最大限に近く引き出すことだと、ますます強く感じるのである。「ビスの音」としての自己主張は、ほとんど感じられない。ここで聴ける音は、ビスの音ではなくカートリッジそのものの音、と言ってもよい。もちろん、リスナーや環境の違いによって、必ずしも好結果が得られるとは限らないのは当然である。だとしても、一度は試してみる価値が、充分にあるビスだと思う。 それにしても凄いカートリッジだと、改めて感じ入るのである。高価だが、実際に音を聴けば、伊達にお金をかけているのではないことを強く実感できる。 信頼感絶大。やはり僕の常用カートリッジは、Eminentで決まり、である。 |
今夜は写真だけ
今日はビスを換装したEminentを聴かねばならん。思いはそうあっても、叶わない日もある。一日のオツトメを終えて、箱船に入ったのは午前1時過ぎだった。ちょっと、くたびれました。 気力、集中力が低下している時にアナログ周りを触っても、ロクなことにはならない。酔っ払ってレコードを聴き、翌朝正気に戻ってカートリッジを見たらカンチレバーがお亡くなりになっていた。斯くもオソロシイ話を友達から聞いたことがある。 そんなふうにしてしまったらエラいことである。今夜は写真だけご覧に入れ、試聴は明日のことにしようと思う。 このカートリッジを聴くのは、おおよそ2ヶ月ぶりである。 |
何故か、変わる
大きな変化はないだろうと、思ったら然に非ず。カートリッジ取り付けビスを換えたバヤイほどではないにしろ、確かに音は変わって聴こえるのだった。 SUSキャップビスでコネクターを固定した時よりも、音の陰影がくっきりする感じである。映像に喩えれば、よりフォーカスが良くコントラストを上げた画を見ているような印象だ。ひっくり返ってビックリするような差ではないけれども、音は確かに良くなっている。 とても不思議である。なぜ音が変わるのか。ドシロウトである僕が考えたところで、そのメカニズムが解明されるわけはない。休むに似たり。しかし、これはオカルト的現象ではないはずだ。然るべき知識を持った人が然るべき様に探求すれば、きちんとした理論が成立するのだろう。うーむ、面白いなァ。 こうなるというと、AT33PTG固定ビスもβチタン合金に、との思いはますます強くなるのである。15mm長まではあるのだから、18mm長がゼッタイに無いとは言えない、と無知な僕は考える。 諦めず、探し続けるしかない。 |
ここにもβ-Ti
6日の日誌に載せた、V24Cさん謹製SiCシェル+AT33PTG、工作名人謹製指掛け付き、である。名前長い。指掛けが付いてから聴くのは、今日が初めてである。 ヤッパリ僕には指掛け絶対必要だ。使用感極めて快適、安心感最高。ついでにルックスも最高である。音への悪影響は、感じられない。良い音だ。 できればここでもカートリッジ取り付けビスをβチタン合金に換えたいところだが、残念ながら不可能。長さが足りないのである。最長15mmまでのところへ、18mm必要。惜しいなァと思いながら眺めていて、コネクターを固定するビスなら、15mmでピッタリなことに気が付いた。 さっそく従来のSUSキャップビスから交換したのが、上の写真である。上手いグワイにシェルとビスが同系色、目立ちにくくてなかなかよい。指掛けなし状態の総重量(27.46g)からすると、指掛けで0.62gの増、ビスで0.66gの減、差し引き0.04gの減、総重量27.42gとなった。好い塩梅である。 この部分にβチタン合金ビスを使う主な狙いは、全体の軽量化とより強固な締め付け、にある。音への直接的な影響はさほど大きくないはず。と踏んでいるわけだが、さて。仮に僅かな違いがあったとして、それを聴き分けられるかどうか。 自信は、ない。 |
M2.5だった
これまでEminentを支えてきたSUSキャップビスを緩める。なにやらいつもと感触が違うのである。思ったより締め付けが甘く、回す時に感じるネジ穴とビスとの遊びも、多いような気がする。いずれもあまりよろしくない手応えである。 怪訝に思いながら完全に外し、外観を見るとさらに様子が変だ。ビスが細く見えるのである。ノギスでネジ径を測ってみて、あっ、なんということだ。このビス、M2.5ではないか。 導入以来5年近く、僕は何ら疑問も抱かずM2.5ビスで固定したEminentを聴いてきたのである。ユルユルガタガタだったわけではないから、大きな問題はないはず。実際、音に難はなかった。とは言え、如何にも無責任なのである。 写真左2本が、取り外したM2.5×8mm SUSキャップビス、右2本が今回換装するM2.6×10mm βチタン合金ビスである。ヘタクソな写真で見ても、ネジ径の違いは一目瞭然。HELIKON同様、ネジ穴いっぱいにビスが入ることを狙い、従来より2mm長いタイプを使う。 材質の違いだけにとどまらず、図らずも太さ、オマケに長さまで違うビスへ換装することになってしまった。これでは音に変化があっても何がその因なのか、正確な判断を下す自信が、僕にはありません。やはり僕のやることは、どこか間が抜けているのである。 まあ、ヨロシイ。ビスを換えて音が良くなれば結果オーライ、ということに、しておくのである。 いい加減、ここに極まれり。ハズカシイお話です。 |
好奇心
ART2000はしばらくの間、ULS-3Xとの組み合わせで聴くことにして、βチタン合金ビスを試用すべきカートリッジは、まだある。現在僕が最も信頼し常用するところの、Eminentである。 ご覧の通り現状は、SUSキャップビスでPH-L1000に取り付けてある。音は、大変よい。特に不満もない。少し前の僕なら、仮にβチタン合金ビスの存在を知っていたとしても、わざわざ買い求めてまで使おうとは考えなかっただろう。 だが、今は違う。C3、C3MkII、HELIKON、ART2000への使用で、音が良くなるという明らかな事実を知ってしまってはもうイケナイ。もとより、マトモな知識もないクセに好奇心だけは一人前以上の僕である。斯かる事実を前にして眤としていられるわけはないのだ。 これまで好結果を出してきたからと言って、Eminentでも同様の結果を得られるかどうか。それは実際に聴いた者以外、誰にもわからない。だからこそ余計に好奇心を刺激されるわけだ。 では、換装するか。 |
決め難し
カートリッジの音を正確に把握するのは、実に難しいことだと、思う。ULS-3Xにβチタン合金ビスで取り付けたART2000は、これまでに聴いたことがない明るさと切れ味の鋭さを示すのだった。 部屋の照明を一段も二段も明るくしたような印象である。おそらく「Hi-Fiサウンド」という意味ではLH13+アルミナ板のほうに分があると思うけれども、個人的にこの明るさは、大きな魅力である。SiCシェルのPH-L1000で聴いた時には感じなかった印象だから、これがULS-3Xの持ち味、或いはキャラクターなのだろう。系統としては両者ともセラミックス系、しかし音はずいぶん違う。 高域の切れ味抜群、シャープでダイナミックである。しかし、よーく聴くと、ほんの少し余分な音がついていることに気が付く。僅かに滲む感じだ。この部分が、あるソフトではグワイのよい演出になったり、また別のソフトでは生々しさを殺ぐ因になったりもする。LH13+アルミナ板には感じなかったことである。 どちらが良いのか。これはもう良し悪しでは決められない。お好きなほうをどうぞ、と言うほかなし。僕としては僅差でULS-3Xを採りたいような、しかしLH13+アルミナ板に戻りそうな、実に微妙なところなのである。 暫くはこのままで、聴くことにする。 |
ART2000+ULS-3X
念願の、ART2000+ULS-3Xである。先ずはSUSキャップビスで、と思いながら、メンドクサイし早く聴きたいしで、イキナリβチタン合金ビスで取り付けてしまった。 15mm長でギリギリである。理想的には16.5mmくらい欲しいけれども、僕の知る限りのネジ専門店では、15mmを超えるものが見つからない。カートリッジによっては18mmが必要にもなるから、何とか探し出したいのだが。 実測重量26.27g。LH13+アルミナ板に着けていた時の重量が26.37gだったから、ちょうど0.1gの減、である。ルックスはご覧の通り、純白シェルにART2000が映えてヒジョーに美しい。音がどうなるかは今のところ未知数にしても、この姿形はとても魅力的である。これだけでも満足、しているバヤイではないな。 試聴が楽しみである。ART2000+ULS-3Xにβチタン合金ビス。それぞれの個性がどのような形で音に出てくるのか。興味は尽きない。 さあ、試聴だ。 |
一巡
保有カートリッジをぐるっと一巡り、再びART2000に還ってきた。ULS-3Xへ付け替える前に、やはりアルミナバージョン+βチタン合金ビスで聴いておかねばならぬ。 掲示板にご投稿いただいたてんてんさんのインプレッションは、極めて正確である。てんてんさんが「暗く鳴る」と表現されている音色、おそらくそれは僕が「薄味」、或いは「淡白」と感じている部分なのだろうと思う。どうもこのカートリッジは、ごく普通に使うとややシラけたような、沈み気味の音で鳴るのである。 アルミナ板の追加で、かなり明るく、しかも濃い目の音に変化する。陰影が深くなって実在感が出てくるわけだ。そこへトドメのβチタン合金ビス、である。さらに開放的になり、踏ん張りが利いて馬力が出てくる。ART2000においても、このビスの効果は明らかだ。 効きグワイはよく分かった。次はシェルを換える。 |
クリーニング屋
驚くべきクリーニング効果を発揮した物体。それは、アズマ工業株式会社が製造販売するところの、「おそうじ消しゴム」である。「消しゴム」と言うも素材はゴムではなく、メラミン樹脂をミクロン単位で微細に発泡させた、スポンジである。 数年前、愚妻が台所周りの掃除に使っているのを見て、これはオーディオ用にもイケそうだと感じ、買っておいたものである。ようやく出番がやってきました。 これに、通常は水道水を含ませ、固く絞ってゴシゴシ擦る。今回は相手がオーディオアクセサリーということで、ちょっと奢って精製水を使った。 アルコール綿棒ではほとんど落ちなかった汚れが、マホウのように落ちる、落ちる。確かに「消しゴム」のようにカスが出る。ボロボロになったら新しいものに換えて、どんどん擦る。コネクター部分はスポンジに突っ込んで、ピンは突き刺してグリグリ回す。 あとに多少の水気が残るから、それはハイテククロスで拭き取り、念のため最後にピンをアルコールで磨いてクリーニング完了。仕上がりは、ご覧の通りである。昨日の写真と比べると、その差一目瞭然。あまりの違いにゴマカシがあるように見えるかもしれないけれども、間違いなく同じものである。マックロケだったピンはピカピカ銀色に輝き、本体は新品同様の純白を取り戻したのだった。僕はもう、大喜びである。 「おそうじ消しゴム」の効果には本当に驚いた。はっきり言って、劇的効果である。溶剤の類が一切関わらないのもよい。クリーニング対象物が、非常に硬度の高いアルミナセラミックスであったことが、効果を上げた一因か。メッキ部分もロジウムで良かったのかもしれない。 あまりに気持ちよく汚れが落ちるものだから、掃除の終わりが残念に思えるほどだった。もっとクリーニングしたいぞ。ULS-3X専門のクリーニング屋でも始めるか。 汚れが気になるとお嘆きの貴兄に。いつでもおそうじさせていただきます。 |
3個目
先月に続き、ULS-3Xをもう1個、入手した。これで3個目になるわけである。そんなにあってどーする。アルミナ板を追加して好結果が得られたART2000を、僕はどうしても100%アルミナシェルに着けて、聴いてみたかったのである。一旦湧き上がった好奇心を、抑えることができませんでした。 純然たる中古品、パーツはすべて揃った完品である。但し、汚れがひどい。本来純白であるはずのシェル本体は、総体に褐色の汚れがこびりついている。タバコのヤニのようにも、ハンダに練り込んであるフラックスのようにも見えるが正体は不明。カーソル裏にもくっ付いていた。 コネクター部分は写真の通り、黒くくすんでいる。特にピンの汚れは酷く、ロジウムメッキの銀色がほとんど見えない状態。当然、このままでは使えない。かなり気合を入れてクリーニングする必要がありそうだ。しかし、ナンデこんなに汚れているンだろうか。 先ずは定石、アルコール綿棒で拭いてみる。本体、ピンとも、ほとんど反応なし。綿棒の先っちょが少しばかり茶色くなっただけである。このシェルの表面は鏡面ではなく、微細な凸凹がある。そこへ汚れが入り込んでいるようだ。梨地仕上の面に付いた汚れが落としにくいのと同等である。これでは遺憾と、次なる策を練る。 アルコールに漬けて2〜3日放置するか。イヤ、それではコネクターの樹脂部分に悪影響がありそうだ。歯ブラシに研磨剤つけてゴシゴシ擦る。それも何だかイヤダ。できれば薬品、溶剤の類を使わずしてキレイにしたい。何とか方法はないものかと、ヒッシに考えて思い至ったのが、写真中、シェルが乗っている物体である。 コイツの効果は、驚くべきものだった。 |
説得力
結論から先に書いてしまおう。βチタン合金ビスは、最高である。少なくとも、僕が箱船のオーディオ環境で聴いた中では、これほど明確に音質向上を認められるビスは、なかった。明らかに純チタンボタンキャップビスを上回っている。 情報量がまるで違っていて、HELIKONの持ち味であるDレンジの広さを、さらに拡大してみせる感じである。全域に渡って切れと浸透力が向上、それでいてうるささはまったくなく、かなりの大音量でも歪み感がない。圧倒的である。 C3、C3MkIIの時と同様、カートリッジの持つ個性を、より正確に聴き手へ示しているように感じられる。設計者は、こういう音を聴かせたかったのではないか。僕の勝手な思い込みかもしれないけれども、そう言わずには居られないような、説得力ある音で鳴るのである。 通常、カートリッジに付属してくるビスは、アルミか真鍮のマイナスビスである。HELIKONには、SUSキャップビスが付属されている。これは珍しいケースだ。LYRAのやることだから、おそらく慎重な試聴の末に決定されたものだろう。今後、βチタン合金ビスも付属品選択肢の一つに加えて欲しいと、マジメに考えてしまうのである。 大いに気に入ってしまったβチタン合金ビスだが、アルミナ板同様、これとて「魔法の杖」ではないはずだ。手持ちカートリッジ、シェル、そのすべての場合に良い結果が得られるとは思えない。だからこそ面白くて、次々試してみたくもなるわけである。 ART2000。次はこれだ。 |
最適化
HELIKONの取り付けビスを、M2.5純チタンボタンキャップからM2.6βチタン合金に換装する。友達が送ってくれたスペア分は、長さ15mmのものが4本ある。 これまで使っていたものは10mm長、大きな問題はないけれども、もう少し長寸でもよい感じである。と言って15mmでは長すぎる。改めてHELIKONに最も適したビス長を測ってみると、12〜12.5mmだった。この寸法ならば、ボディに切られているネジ穴いっぱいにビスが収まることになる。大した違いではなかろうものの、ネジ穴がキッチリと埋まるのは何となく気持ちが良いし、僅かながらも取り付け強度が向上するはずだ。 そこで、例によってローコスト圧着ペンチの付録機能で切断に挑む。SUSよりナンギするか、と思いきや、これまたあっけなく切れてしまった。素材が硬い所為か、切断部分のネジ山損傷は極少。ほとんど修正不要で、スムーズにねじ込むことができた。 実測重量24.98g。純チタンボタンキャップビス使用時に比較して、0.15g増である。何ら問題はない。 試聴は、また明日。 |
未だ尽きず
昨日から、HELIKONでいろいろなソフトを聴いている。いずれも非常に良い音で、なるほどこれはよくできたカートリッジだと、改めて感じ入っている。 良い音であればあるほど、さらに良くはならないだろうかと、強欲に思うのがオーディオマニアである。手許には友達が送ってくれたβチタン合金ビスが、まだ残っている。強度で純チタンを上回るこのビスを、試してみない手はない。 カートリッジの話題は、まだ尽きません。 |
HELIKON登場
純チタンボタンキャップビスの試聴は、このカートリッジでいくことに決定。LYRA
HELIKONである。げんきまじんさん、お待たせしました。 先ずは従来のまま、SUSキャップビス(M2.6×10mm)を使って取り付けてある状態で聴く。シェル込みの重量25.49g。メインのプレーヤーでHELIKONを聴くのは、とても久しぶりである。 一聴して驚くのは、Dレンジの広さである。爆発的な音から密やかな音まで、細大漏らさず完璧に描き切る感じだ。音場感は広大である。瞬発力絶大、同時に繊細感抜群。低域に独特の腰があり、それを土台にして抜けのよい中域、スピード感抜群の高域が乗る。これは良い音だ。 このままでも文句はまったくないわけだが、ここは実験、ということで、取り付けビスを純チタンボタンキャップビス(M2.5×10mm)に交換する。ネジに詳しい友達から「M2.6とM2.5はピッチが同じだから、問題なく使える」との教えがあったから、不安なく締めることができた。まったく問題なしである。 SUS1本0.55g、純チタン1本0.22g。ビス2本で0.66g軽くなり、シェル込み24.83g。ここまで28g以上の重量級を使ってきたから、ずいぶん軽いような印象を受ける。アームとの相性に、問題はない。 さらに音の質が上がる。Dレンジはより広く感じられ、音場も一回り広くなる感じ。定位明確、音像に厚みが出てリアルそのもの。実在感抜群である。全域で切れと抜けが向上、やはり音量の増大感があって、エネルギーのロスが非常に少ない音に聴こえる。音の色彩感が極めて豊か、こういうところはさすが高級機といった感じだ。実に見事なHi-Fiサウンドである。 C3、C3MkIIに使ったのはβチタン合金ビス、HELIKONには純チタンビスである。同じ仲間とは言え、厳密には違う材質だ。けれども、音の傾向は極めて似ている。どちらもカートリッジ取り付け用として、よく適していると思う。但し、ネジ径の合致、という点では、M2.6タイプが揃っているβチタン合金(+ナベネジ)のほうに、分があるだろう。 両者とも、小型ネジとしては高価である。1本50円〜80円くらい。仮に、僕手持ちの全カートリッジに使ったとして、必要数は40本程度である。80×40=3,200円。「オーディオ用」と銘打ったビスセットの内容と値段を知れば、物の数ではない、か。 明日も、HELIKONを聴く。 |
太古製品なれども
ボタンキャップビスの実験は後にして、先に完全形と成ったC3MkII+ULS-3Xを聴く。取り付けビスはβチタン合金小頭タイプに換えての試聴である。 写真はアームに取り付けた状態。オリジナル指掛け付きのC3(写真左)と比較しても、木に竹を接いだような違和感は皆無である。見劣りもしない。とても美しく上品である。当たり前だが、使い勝手は最高。これもすべて友達のおかげさまだ。 C3の試聴時同様、やはりβチタン合金ビスに換えたことによる音の差は大きい。C3MkIIの音も、多くの点で向上を見たのである。音量の増大感も、気の所為ではないことを確認できた。指掛けが付いたことでの弊害、少なくとも僕の耳では判別することができない。 面白いと思ったのは、両者のキャラクター相違が、より明確に感じられるようになったことだ。C3は良い意味でのしなやかさと瑞々しさが出てきたうえ、より力強く骨太で男性的に、C3MkIIはSNの良さに磨きがかかり、より静かに分解能の高い音で上品に鳴る。どちらも質感が大きく向上した印象である。 現行商品であった当時の価格で、両者ともULS-3X込み37,500円。驚くべき安さだと思う。今どきこの値段でこれほどの音と、持つことの喜びを与えてくれるカートリッジ、シェルはどこにもない。 太古の製品が、最新機器に少しも引けを取らないばかりか、むしろそれを凌ぐような音で鳴る。 痛快至極である。 |
Ti ボタンキャップ
ルックスに喜んで眺めてばかり、指掛けつきC3MkII、AT33PTGの音も聴けていないうちに、注文しておいたちょっと面白いネジが届いてしまった。 純チタン製M2.5×10mm、ボタンキャップビスである。キャップタイプでありながら、頭の形状がナベネジ様になったビスだ。 この形状である必要はまったくなく、一般的なキャップビスがあればそれでよいのだが、残念ながら純チタン(或いはβチタン)製キャップビスにM2.6サイズは見つからない。最も小さいサイズでもM3である。 このボタンキャップにもM2.6は無い。ではM3からかというとそうでもなく、最小サイズはM2.5である。本来必要なのはM2.6なのに、M2.5で大丈夫なのか。 わずかのガタはあるものの、相手がM2.6ネジ穴でも正常に締結できることはできるのである。但し、ネジ山がピッタリ一致しているわけではないから、不グワイが起きる可能性はある。ので、何方にでもお薦めできるものではない。あくまでも僕の個人的好奇心により、実験してみたかったのである。 購入できる最長サイズは10mmである。それより長いものはない。こうなると、使えるシェル+カートリッジはある程度限定されるのだった。箱船の環境では、eminent、HELIKON、MC-Rohmannの3種に使える。 どれから行こうかしらん。 |
格別の喜び
工作名人である友達は、常に微に入り細を穿つ配慮を忘れない人である。今回の指掛け工作で、製作を頼んだのは1本。なのに「スペアにどうぞ」と2本作ってくれた。しかも、好みで選べるようにと、わずかに幅寸を変えてあった。 オリジナルに近い幅のものをULS-3Xに具し、それよりも幅広に作ってあるもう1本は上の写真にご覧の通り、V24Cさん謹製SiCシェルに取り付けた。恰もこのシェル専用に誂えた(実際、誂えたワケだが)かの如く、寸法ぴったりである。使い勝手はもちろん、僕の好みからするとルックスも格段に向上したと思う。実に精悍で重量感あるヘッドシェルとなった。 AT33PTGを取り付けたこの状態で、実測重量28.08g。拙箱船の環境でもまったく問題なしである。完全形となったULS-3Xも嬉しいけれど、こちらにはまた格別の喜びがあるのだった。 先日も書いたとおり、指掛けに関しては賛否両論あるわけである。針と盤の安全性を優先し、是とする人もいれば、音を汚す元凶と、非とする人もいる。昔付き合いのあったスーパーエキセントリック・マニアさんは、独立して取り外せないPH-L1000の指掛けに業を煮やし、ペンチでぶった切ってしまっていた。 音、ルックス、使い勝手。いずれを優先するも人それぞれ。趣味なのである。自分が納得していれば、音も自ずから良くなると、僕は信じている。 早速、使ってみたい。 |
工作名人
ヨシ、では指掛けを自作しよう。と意気込んでSUS平板を探す。オリジナルの厚みは0.6mm、市場には0.5mm厚が圧倒的に多く、0.6mmがあってもかなり割高である。0.1mmくらい薄くても大方問題なかろうといい加減に考えて、安い0.5mm厚を買った。 そこまではよかった。実際に板を手にした途端、僕は途方に暮れてしまったのだった。0.5mmは思ったより厚い。どうやって正確に切れというのだ。金鋏で切ればナントカなるか、くらいに見くびっていたらとんでもない。そんな切断法では、切り口ビロビロのワカメ状態、絶対に上手く行きっこないのである。 他の方法もアレコレ考えたが、ついには困り果てて工作名人の友達に相談する。ここからは話が早かった。ヨシキタ任せろ作ってやると、あっと言う間に出来上がってしまったのである。いや、僕は待っているだけだからそう言えるものの、実際の工程はかなりの手間だったと聞いた。例によって、申しわけなく、しかしなんともありがたいご厚意である。おかげさまです。ありがとうございました。 さっそく実装してみた。上の写真、右がSAECオリジナル、左が友達謹製の指掛けである。素晴らしい出来栄えだ。切り口のヨレは皆無、曲げ加工は完璧で傷もない。わずか幅広に作ってあるのは、0.1mmの板厚不足分を補う配慮によるものだろう。初めて見る人なら、どちらがオリジナルか判別は不可能だと思う。本当によく出来ています。 半ばジャンク品だったULS-3Xが、見事完全形となって使えるのである。音には良くない影響があるとしても、やはりシェルには指掛けが無くてはイケナイ。僕はもう嬉しくて嬉しくて、幾度も幾度も矯めつ眇めつするのである。今夜は枕元に置いて寝たいくらい。 さらにこの上、嬉しいことがもう一つ。それについてはまた明日。 |
絶対必要
写真は、ULS-3Xの指掛けである。厚みは0.6mm、おそらくSUS製。重量を実測すると、0.62gだった。 ULS-3Xはカーソルにネジが切ってあるタイプだから、まずカートリッジをビスで締結固定し、カーソルから突出したビスに指掛けをはめ込み、上からナットで固定する、という取り付け順になる。昨日、一昨日の写真をご覧になれば、おおよそお分かりいただけるかと思う。 この方式のメリットは、カートリッジをシェルからリリースするしないにかかわらず、指掛けだけを独立して着脱できるところである。アナログマニアの中には、指掛けの存在を嫌う人もいる。余分な金属片が振動子となり再生音を汚す、という考え方である。そういった向きには、メリットが生きてくるわけだ。 音には好影響ありといえども、使い勝手からするとイマイチである。特に僕のような粗忽者には、明らかに不向きといえる。指掛けがなければ、シェルか或いはアームパイプをつまんで操作することになる。扱いには相当な注意と熟練が要りそうだ。僕などがそれをやったら、熟練するまでにカートリッジを壊すか、アームを壊すか、盤を傷めるか、いずれとんでもないことになるのは間違いないのである。 個人的には、指掛けがもう1本、絶対必要。だが、アナログ最盛期ならいざ知らず、現状このパーツだけを入手することは、不可能に近い。ならばどーするか。 例によって「無いなら作れ」、というわけで。 |
C3MkIIも
好結果に喜んで、C3MkIIの取り付けネジもβチタン合金ビスに交換した。友達にはたいへんな無理をお願いし、12mmタイプを4本、10mmタイプを2本、小頭化してもらっていたのである。 ご覧の通り、指掛けがありません。ちょっと待て。ないのはC3ではなかったか。そのとおりである。1本しかないからC3のほうへ使い回したわけだ。何とも不便というかいい加減というか。この件については、改善計画が進行中である。結果は後日、報告したい。 βチタン合金ビスを使えば、C3MkIIの音もまた変わって聴こえることになるだろう。必ずしも良くなるとは限らないにしても、大いに楽しみである。 音を変える要素が無数にあるAD再生は、やはり面白い。どこを触っても音に違いが出る。下手をすると何が何だか分からなくなってしまう危険性も孕んでいるわけだが、迷路にハマるもまた吉。迷いに迷った末、気が付いたり学習したりすることも多いのだ。 それでこそ、趣味である。 |
ベリー・グッド
βチタン合金ビスに換装したC3の音は、予想以上に変化の度合いが大きく、いささか驚いたのだった。真鍮からSUSへ換えた時には、これほどの違いはなかったのだが。 違いを最も強く感じるのは、低域の出方である。SUSよりもさらに締りが良く音程明確、しかも重心が下がって非常にパワフルである。心なしか音量も上がったように聴こえる。中高域に関しても、抜けと透明感が明らかに向上する。骨太なだけではなく、良い意味でのしなやかさが出てきたようだ。カートリッジを一段階グレードアップしたような感じである。 C3+ULS-3Xの組み合わせ、加えて箱船のオーディオ環境においては、βチタン合金ビスの相性は大変良いと感じた。ただ、他のカートリッジ、シェルでは未試用であるし、環境が変われば音も変わるだろう。すべてのバヤイで好結果が得られるとは限らない。 ネジ素材の硬さが音に影響しているのだろうか。締め込み時にあった独特の感触が、そのまま音に出ているようなイメージである。 一所懸命に削ったSUSビスだが、どうやらβチタンで決まりの様子。 |
ネジネタは続く
2月になってもネジネタは続く。毎日毎日ネジとカートリッジばかりイジっていて、何が楽しいのか。なんか知らんが楽しいのだから仕方ないのである。 βチタン合金ビスを、SAEC C3取り付けに使ってみたの図。頭径縮小寸法はピッタリで、何ら問題なくみごと収まっている。従来、付属専用ビス(おそらく真鍮製)1種しか使えなかったものが、これで3種使えることになったわけである。選択肢が増えるのは、大変よいことです。 このビス、締め込んだ時の感触には独特のものがある。いっぱいまで締め切ったところでガチッとロックし、それ以上はまったく動かなくなる感じ。真鍮、SUSのビスにはなかった感覚である。両者とも、いっぱいのところからもう少し締められそうな感触が残るのだが、それがまったくない。曖昧さがないのだ。βチタンという素材の硬さを、強く実感するのである。ある意味、これは快感だ。 総自重は28.25g。計算どおりSUSキャップビス使用時(28.79g)に比べて0.54g軽くなっている。ここでの−0.54gは、大幅な軽量化と言ってよい。然るにこれは、有利か不利か。物事すべて一長一短。箱船現状の条件においては、有利な方向へ働くのではないかと思う。 試聴が楽しみである。 |