箱船航海日誌 2001年02月

日々雑感、出来事などを思いつきに任せて綴っていこう

過去の日誌コンテンツ

’01/02/28 (水)

準備


 ほんの僅か、桜の新芽が大きさを増したようである。まだまだ蕾ともいえないが、春への準備は着々と進んでいる。今日はことのほか好いお天気で、空には一片の雲もなく暖かい日だった。昨日までは冬に逆行したように寒い日が続いた。三寒四温とはよく言ったもので、これを繰り返しながら季節は春に向かっている。

 雪の心配をしなくて済むのがいちばんうれしい。お客様をお迎えするにも憂いがない。工作もやりやすい。日も長くなる。いいことばっかり、だがものごと全て一長一短、庭の雑草が生えまくって、ひがな草引きに追われるのもまた事実。エンジン刈払い機を振り回して土手の草刈に腐心する。古い家なので春先は百足がゾロゾロ出てくる。

 でも、僕はやっぱり春から夏にかけてが、一年でいちばん素敵な季節だと思う。

’01/02/27 (火)

勇み足?


 花火を収録したCD−Rに比べると、どうも出足が良くない。自衛隊演習CD−Rである。前二作では準備の段取りが悪く、申し込みいただいた皆さんには大変お待たせし、多大なご迷惑をおかけした。その反省もあって、今回は充分にストックができてからの頒布ご案内にしたわけだが、どうも勇み足の様相を呈し始めたようだ。

 音源が特殊なせいもあるのだろうか? 以前、方舟のスーパーレアでCD「日本の自衛隊」を聴かせていただいたとき、僕のよろこびようを見た先生が「こんなソフト聴いてよろこぶような人は変人ですよ、変人。オレもそうだけどね」と楽しそうにおっしゃったが、やっぱりそうなのかしらん。

 これをご覧の「変人」(失礼!)の皆さん、ストックはまだまだあります。奮ってお申し込みください。...って懸賞と違うっちゅーの。

 不良在庫になったらどうしよう。フリスビーにして遊ぶか。

’01/02/26 (月)

旧聞ですが


 いささか旧聞になってしまった。「TOY STORY」と「TOY STORY 2」のセットパックである。ブエナビスタエンターテイメント/VWDS4450。去年の暮れ、何時も世話になっている電気屋さんに頼んでおいたが、何か手違いがあったようで今月になってやっと届いた。僕よりも愚息たちがお待ちかねで、箱船で見るより先に居間のテレビで見てしまった。

 「TOY STORY」はビスタサイズ・スクイーズ収録。4対3・スクイーズ収録の映画ソフトが無い現状では理想的なタイプである。「TOY STORY 2」は4対3・スクイーズ無しの収録。画面は大きいがスクイーズが無い分、見かけ上の解像度では損をしている。どちらも片面二層ディスクである。

 収録方法が違うので、単純に同列比較はできない。物の質感、風景の奥行き、動きの自然さ、色数の多さ、多くの点で「2」が勝っている。音声も「1」に差をつける。

 「2」のチャプター19、古ぼけたウッディをリペアマンのじいさん(このじいさん、「バグズ・ライフ」のボーナストラックにあった「ゲーリーじいさんのチェス」でおなじみ)が修理する場面、磨かれたウッディの目玉の艶、足の裏に書かれた「ANDY」の文字を塗りつぶした塗料の質感、エアブラシから吹き出る塗料が飛び散る様子などは思わず見惚れてしまうほど、実に綺麗である。顔が上下につぶれるのを承知でスクイーズしてみたら、さらに美しい映像が得られた。

 なぜ、両方ともビスタ・スクイーズにしなかったのだろう? 今や主流はワイドテレビ、スクイーズのほうが圧倒的に有利だと思うのだが。

 「1」は既にLDで見ている。このLD、かなりがんばっている感じだ。総合的にはDVD勝利だが、LDも相当優秀な映像を見せる。音声はやはりLDの圧勝。LDも捨てたものではない。

 「2」がスクイーズで収録されていたらお薦めソフト、ちょっと残念である。内容は基本的に「1」同様のドタバタコメディー、ある意味で安心して見ていられる。充分楽しめた。2枚セットで税抜き¥7,800、高くはないと思う。定番のNG集も楽しい。

’01/02/25 (日)

去り往く思い


 長岡先生が亡くなって、早9ヶ月を過ぎようとしている。つい先日には「こんなスピーカー見たことない〜図面集編II〜」が発行され、逝かれてなお先生のお仕事は終わっていないのだと、複雑な思いを抱いたのである。今後も新刊が予定されていると聞くが、嬉しさ半分、切なさ半分、素直に喜べない自分がそこにはある。

 久しぶりに、オーディオ諸国漫遊記第一回が掲載されたFMfan’97年17号を開いてみた。箱船の椅子に先生と隣り合わせで座っている写真。これを見るのが辛くて、この記事は開けなかったのである。

 そこには先生の切れの良い文章が躍っている。時間と空間を、自分のフィールドで共にした記録。この時からまだ4年足らず、しかし僕の感覚では何だかもう遥か彼方の遠いムカシムカシになってしまったようである。

 このクリニックがきっかけとなって、スーパーネッシー+38cm二発サブウーファーのシステムへ変更したわけだが、もし、先生が今もご健在で現状のシステムを聴かれたらどう評価されるのだろうか。「情報の少ない“地方”には、ムチャクチャなことをしているヤツがいる」なんて書かれるんだろうな。

 先生からいただいたもの、それはいつも近くにあって、しかし思い出はどんどん遠くへ去ってゆく。

’01/02/24 (土)

こんなのも


 A級外セレ第3集299番、「Rhythm Devils」(WILSON AUDIO/W−8521)のRYKO盤CDである。RCD−10109。このタイトルもウィルソンオーディオでは既に廃盤、手に入らない。CDが出たのかどうかも僕には分からない。ADを手に入れることができず、捜していたらRYKOにCDがあった。

 箱船の客室にM85さんからRYKODISC「The Other Side Of This」(RCD−10207)というタイトルについてのコメントをいただいている。詳しくはそちらをご一読願いたいが、「Rhythm Devils」もオリジナルに比べると随分音が違う。ADを1〜2度聴いただけの僕にも分かるくらいの違いである。M85さんがおっしゃるが如く、音場と音像にその差が大きい。レンジも少しばかり狭いようである。

 ただし、これもメタクソな音にはなっていないので、ADを持っていない僕にとってはそれなりに価値のあるCDなのである。見つけたときはとてもうれしかった。もちろん本当はADが欲しい。今のところ未入手、いつかは何とか手に入れたいと思う。でも、WILSON AUDIOのADって、もともと数が出ていないと聞くので、なかなか難しいかな。

’01/02/23 (金)

惜しいっ


 このソフトはご存知の方も多いだろう。外盤A級セレクション第2巻186番「デフォス」(米リファレンスレコーディングスRR−12)である。

 ところが実は写真のCD、RRから出ているものではなく、米RYKODISC(ライコディスク?)からリリースされた盤である。版権の関係か、RR盤はAD、CDともに廃盤になっている。ADは持っているがCDがなかったので、一生懸命に捜して手に入れたものである。

 そこまでは良かったが、このRYKO盤、惜しいことに超低域が切れている。意識的なものか、結果的にそうなったのか、わからない。先生が書いておられるように、このソフトの最大の聴き所は、恐ろしいほどの超低域の圧力である。固いコンクリートの床に、巨大でクソ重い鉄の塊を力いっぱい叩きつけたような、すさまじい音が入っているのだ。そこのところの超低域が、少ないのである。う〜ん、実に惜しいっ。

 方舟でも先生と一緒に聴いたが、ほんの少し聴いただけで先生は黙って2階へスタスタ上がり、ややあってRR盤CDを持ってこられた。RR盤を聴いた後、「一味違うね。こっち(RYKO)はちょっといじってあるみたいだね」とおっしゃった。残念。

 RR盤はAD、CDともに今や入手困難になってしまった。RYKO盤、珍品としては値打ちがあると思うのであった。といっても決してメタクソな音ではないので、買っておかれるのも良いと思う。

’01/02/22 (木)

音については不論


 現在はカタログから落ちているのだろうか? 買ったのは10年以上前だからやっぱりそうかな。オーディオテクニカから発売されていた「Sound Guard」。アナログレコード専用の静電気除去スプレーである。取説によると『宇宙工学を駆使したレコード保護潤滑被膜剤』とある。さらに、『今までのシリコン系のクリーナーでは得ることのできなかった音溝の磨耗と静電気の発生をほとんどなくし、さらにノイズや歪みの増大も防ぎます』とも書いてある。

 確かに従来のレコードスプレーのようにベタベタせず、特有のいやな臭いもない。効果に偽りはなく、スプレーしたレコードは静電気がほとんど(と言うより全く)起きない。ナイロンのレコード内袋がまつわり付いてくることも、パチパチ音を立てることもすっかり無くなるのである。効果絶大。

 しかし、『被膜剤』と謳ってあるからにはレコードの表面に膜を作るわけで、ここにひっかかってまったく使わなくなってしまった。一時的には、こりゃあイイと220cc入りのエコノミーボトル(写真がそれだ)を4本も買ってしまい、そのうち3本は全く未使用のままである。もったいない話だ。

 何かに使えんものかと思案していたところへ、あるオーディオ雑誌を読んでいたら「ケーブルに発生する静電気を除去し音質改善するスプレー」なるものが紹介されていた。商品名もメーカーも全く忘れてしまったが、そういうものがあるのなら、この「Sound Guard」だって使えるんじゃあないかと、早速自作6Nコードに試してみる。

 使い方はレコードの時と同じ。液がピンプラグにかかるのは避けたいので何かでカバーしておく。まず、充分に缶を振り、コード表面に満遍なくスプレーする。ハイテククロス(テイジンのミクロスター)製の手袋をしてコード全体を磨く。これだけである。

 音に変化はあるのか? う〜む、微妙である。たぶんブラインドで聴かされたら判別は困難ではないか。敢えて誤解を恐れずに言えば、多少音が明るくなったような感じはある。歪み感が減ったような、静かになったような。こりゃあ取説のバイアスかな。

 10年以上前のこととて、フロンガス使用である。地球環境保護のため、使っちゃ遺憾か。

’01/02/21 (水)

不調


 どうもおかしい。CDプレーヤーGT−CD1である。時々音が途切れてしまう。一昨年の夏だったか、「花火」のCD−Rを聴いている時に、この症状が出たことがあった。正規CDでは何の問題もなかったので、CD−Rのせいかなとさして気にも留めなかった。それっきり治まっていたのだが、2、3日前、今度は正規CDでも突然音が途切れてしまった。すぐに復帰するが曲の先のほうへ飛んでしまっている。同じところをリピートして確かめるが、症状が出たり出なかったりで、どうもはっきりしない。全てのソフトで試したわけではないが、他のCDでは問題なくプレイするようである。

 このプレーヤーを使い始めたのは’92年11月29日だから、既に8年を超えたわけだ。昨年、ピックアップの動作不良で一度修理している。それまでの7年以上はトラブル皆無、いたって健全なプレーヤーだった。

 CDプレーヤーを買い替えもせず8年以上使うというのは、ひょっとすると愚の骨頂なのかもしれない。デジタル技術は日進月歩、1年も経てば過去の産物として打ち遣られるもの、いかに当時の高級機であったとしても、今となっては古色蒼然としたプレーヤーだと言われても仕様がない。

 不調に託けて言うわけではないが、交換の時は近いと見るべきか。しかし、何にすればよいのだろう。GT−CD1は当時50万円、今、パフォーマンスだけでいえば低価格でこれを上回る物があるのは充分承知している。が、やはり同クラスのものが欲しい。そうなると答えは自ずから決まってくる。アキュフェーズDP−75Vである。音の良さは間違いなし、デザインも文句なし、SACDへの発展性もある。

 分不相応にもDP−100/DC−101のセットにも色気を出している。各方面から聞く話によると、おっそろしく音の良いプレーヤーだそうだ。

 アンバランスこそマニアの証明であると、それはまさに真理だが、う〜ん、価格はGT−CD1のちょうど3倍、ということは30年近く使わなければモトは取れんか。そうすると僕は70歳。

 生きてまへんな。

’01/02/20 (火)

遅れ馳せながら


 SY−99さんタカサキさんに続いて僕の録音も頒布を始めることにする。「平成12年度 陸上自衛隊富士総合火力演習」である。4トラック36分11秒。申し込み方法については掲示板「箱船の客室」に、録音状況とF特は「音の形」ページに載せてあるので、そちらをご覧いただきたい。また、SY−99さんのHP「音の仲間達」にもご紹介いただいている。併せてご一覧されんことを。

 今回もジャケットを作ってみた。前回は友人の手を煩わせたが、毎回それでは申し訳ないので乏しい知識を頼りに四苦八苦して完成。友人からヒサゴというメーカーのCDジャケットテンプレートがダウンロードできることを教えてもらいそれを利用したので、ワードが使えてとても効率が上がった。だが、ジャケットの良し悪しは、結局写真で決まるのである。録音だけでヒッシになっていた僕に、良い写真を撮れるような余裕などあるはずも無い。イマイチ捻りのないジャケットになってしまった。

 頒布価格を上げさせていただくのは極めて不本意なのだが紙代が思ったより嵩み、止むを得ず送料込み1枚1,500円とした。誠に申し訳ないことである。どうか宜しく御了解願いたい。

 内容は、総合火力演習の後段部分を丸録りしたものである。それをそのままCD−R化しただけ、いつものことだが編集などは一切していない。音源はあまりにも強烈、DATデッキのほうで−20dBのアッテネーターを入れているが、マイククリップはどうしようもなかった。部分的にはかなり聴きづらいところもある。録音に詳しい友人に意見を求めると、「う〜む、ちょっとツライなぁ〜」ということだった。ま、しかしSY−99さん、タカサキさんの録音もあることだし、それらと聴き比べてもらうのもまた一興、ヘボが録るとこういうことになるという実例として、存在価値を認めていただければ幸いである。長岡先生も「石は石としての価値もある」とおっしゃっていたし。かなり我田引水だな。

 よろしくお願いしたいのである。

’01/02/19 (月)

春の兆し


 この間ねこそぎ採って食べてしまったので、もう無いかと思ったら、ありました。フキノトウ。えらいもので、あれから新たに芽を出した物のようである。辺りを見ればこれ一つではなく、五つ六つ顔を出している。食い意地にまかせて根絶やしにしてしまうと、夏の山蕗も来年のフキノトウも充分に味わえなくなる。今日は写真だけで我慢しよう。

 15日には遅駆けの雪が一日で50cm積もった。だが、雪の下では確実に春が近づいているようだ。風にはかすかに春の匂いが含まれてきたし、日差しも僅かながら柔らかくなったように感じられる。日没も目立って遅くなってきた。

 イナカに住んでいて良かったと思うこと。それは、季節がアナログ的に変化しているのを実感できる事、かな。

’01/02/18 (日)

...と言いながら


 ネタに困って今日もCDを紹介する。米dmp『THOM ROTELLA BAND』 GOLD−9001。14トラック、63分18秒。元々レギュラーCDでリリースされていたものを20BITでリマスターし、金蒸着CD化したものである。以前長岡先生がダイナミックソフトで紹介された『FLIM&THE BB’s/TRICYCLE』 GOLD−9000と同じシリーズの2枚目である。

 ギター、ベース、キーボード、ドラム、パーカッションの編成によるフュージョン。dmpは、録音エンジニアのトム・ヤングによって1983年に設立されたレーベルである。2トラックデジタルレコーダー一発録り。いわゆるスタジオライブ形式か。

 フュージョンが好きな人にとっては楽しめる曲ばかり、僕も非常に気に入っているタイトルだ。音は大変ダイナミック、立ち上がりが良く、力もある。Dレンジもわりと広く、細かい音がよく録れている。この手の音楽には良い録音が少なく、その水準で聴けば優秀録音だと思う。だが、本当の意味での優秀録音とはちょっと違うようだ。

 全体にリミッターがかかっているようで、特にギターの音にそれが強く感じられる。シンバルは派手に聴こえるが、最高域までの伸びはないようだ。やや歪みっぽい感じもある。2トラック一発録りといっても、ペアマイク録音などとは違うはずなので、生のような音場感は望めない。

 だが、僕はこのCDが大好きである。多少歪みっぽくても、音場感が感じられずとも、リミッターがかかっていようとも、このCDの音は捨て難い。馬力があるのだ。

 フュージョン好きで、でも録音の悪さに聴く気がしなかったという方がいらっしゃれば、是非一聴されることをお薦めしたい。溜飲が下がるはずである。

 僕が買った頃は、ステレオサウンドレコーズに頼んで簡単に買えたが、今はどうなんだろう? 

’01/02/17 (土)

手に負えない


 一年でどれくらいの数のソフトを買っているのだろう。ちゃんと数えたことがないから正確ではないが、AD、CD、DVD合わせて100〜150タイトルくらいだろうか。DVDは映像中心のソフトだからちょっと除外して、音だけで評価すると、そのうちに含まれる「当たり」ソフトの割合は、多く見ても10%未満。後は大方ハズレである。150タイトルの10%といえば15タイトル、実感としてはそんなにあったかなという感じである。これらのソフトを紹介できれば何かのお役に立てるかもしれないが、恒常的に続けるのは僕の手に負えない。不連続であれば少しずつ紹介できそうなので、この戯言航海日誌を利用してみようかと思う。

 残り90%以上のハズレソフト、これを紹介せよとの声もある。長岡先生は、読者の要望もあって意識的に「石」ソフトを紹介されたが、それは先生だからできたこと、僕が同じようにやるわけにはいかないだろう。先生が書かれたものは良否に係わらず信頼すべき「評価」となるが、僕がネガティブなことを書けばそれは単なる「悪口」あるいは「中傷」になるのである。やはりハズレについては何も触れないほうが無難だと思う。

 ということで、ここに1枚のCDを紹介する。仏アリオン『クロード・バリフ/打楽器のための全作品集』ARN−68289。16トラック、61分38秒。輸入盤である。このソフトは「ディスク漫談」でも取り上げられた。実は僕が先生に差し上げたCDである。内容はモロ現代曲、ジャケットに見えるバリフ氏の表情のような(?)曲ばかり、少なくともBGMにできるようなものでないことだけは確かである。

 打楽器を種類別にグループ分けし、ステージ上に立体配置して録音。マイクの数、配置など僕にはわからないが、ものすごく音場感の良い録音である。特に奥行き表現は恐ろしく深く、遥か彼方から猛烈なエネルギーを伴った音がウナリを上げてぶっ飛んでくる。シンバルの切れと輝きは研ぎ澄まされたナイフのように鋭く透明感最高、CDでは滅多に聴けない音だ。バスドラムはヤケクソみたいな力を持っていて圧倒的重量感で鳴り渡り、痛快これ極まりない。Dレンジは広大、最小音を聴き取るためにはボリュームをかなり上げなければならないが、そうすると最大音では大変なことになる。それがまた面白い。きわめて生に近い音と音場である。できるだけ大音量で聴きたい。歪み感が少ないのでうるさくはならない。曲が曲だけにリスナーを選ぶが、それを除けば超優秀録音盤だと思う。サウンドマニア必聴。

 はっきり言ってゲテモノである。って、この表現もグワイ悪いかな。

’01/02/16 (金)

対策(9)−サイドパネル〜試聴


 サイドパネルは左側のみの対策である。右側は面が波型で鳴きが少なく、それでも細かくやれば良いのかも知れないが、もうメンド臭いので止めた。

 さあ、とりあえずこれで今回の対策はオシマイ。大したことはやっていないが何だかくたびれた。ムカシはこれが楽しくてのべつまくなしにやっていたが、久しぶりにやるとしんどいなあ。なんだかチマチマしているし。

 内部にたまった埃などを軽く掃除し、ネジの締まり具合を点検してボンネットを元に戻す。ゲンミツに言えばネジの締め付けトルクだけでも音は変わるはずで、ボンネットを外した段階で元の音ではなくなっているわけである。対策による音の変化ではなく実はネジのトルクのせいだった、なんてえのは笑えない話である。

 メインシステムに繋ぎ、丸一日ウォームアップした後、試聴する。カートリッジはオルトフォンMC−Rohmann、HX−10000からC−280Vのチューナーへ入力しての試聴である。

 一聴して対策前と違うのは、付帯音の量である。明らかに少なくなっている。ややファットな感じだった低域がかなり締まり、解像度が上がった。透明感も出てきたようである。中高域にはさほど変化は感じられない。いくぶん切れが良くなったかなという程度。もう少し繊細感が出てくるかと思ったがこれは期待外れだった。もっと徹底した対策が必要なのか、ダンプのし過ぎで音を殺してしまったか、それは分からない。もともと音場感は非常に良いアンプだが、付帯音が減ったせいか、さらに良く拡がるようになった。見通しが良くなった感じである。結果として、対策は大成功とも言えず、しかし失敗ではなかった、というところか。

 ただし、僕の対策は機械的なものに過ぎず、パーツの入れ替え、グレードアップなどには一切手を出していないので、このアンプが持つもともとのキャラクターを根底から変えるほどの影響力は、無い。この手の対策を良とするか否とするかは実行する本人次第である。それと、対策(1)にも書いたが、実行したことで事故が起こる可能性も充分考えられる。あるいはメーカーサービスを受けられなくなる恐れもある。そういったリスクがあること、その責任は実行する本人のみにあることを最初に良く承知しておかねばならない。当然のことながら、僕も責任は負えない。

 対策の効果-(それに伴うリスク+手間)=???? それでも対策、やりますか。

 やらんか、誰も。

 
〜この項了〜

’01/02/15 (木)

対策(8)−リヤパネルII


 お待たせしました。リヤパネルへの対策は上のようになった。左のフィルターコンデンサーに隣接しているのはACコード引き込み部分を保護するカバーである。これが薄い鉄板製で盛大に鳴いてくれる。逆L字型、上面にはPタイル、垂直面にはハードフェルトを貼った。リヤパネルにはハードフェルト、これがいかほどの効果があるのかわからない。

 さて、あとはサイド面をダンプして対策を終わりたい。気になるところは他にもあるが、構造上無理が多いのである。対策に拘るあまり『木を見て森を見ず』状態に陥り、本来の目的から逸脱しても仕方がない。

 でも、音を聴いてあんまり変わってなかったら、ちょっと悲しいかな。

 〜この項続く〜

’01/02/14 (水)

忙殺

 なんちゅう日であるか。一週間分のオツトメが一気に集中したような一日だった。僕の仕事で何が困るといって、予定無しにこういうことが起きてしまうことである。『アイドリングナシの状態からいきなりフルパワーで低インピーダンススピーカーをドライブさせられた電源の弱いパワーアンプ』みたいなものである。はっきり言ってキゼツ寸前。

 と、言い訳の前振りをしておいて、今日も対策記事を編集できませんでした。再び、どうもスミマセン。明日は必ず。

 〜この項続かない...はず〜

’01/02/13 (火)

スイッチ切れました

 前回スイッチが切れたのは1月12日、やっぱり月に一度はこうなるのかなあ。どうもスミマセン。また寝てしまいました。

 庭の雪が溶けたので掃除をしていたらフキノトウが箱船の周りにいっぱい顔を出していた。春はちかいぞ、こりゃあいいやと採って天ぷらにして、あんまり美味しかったからちょっとワインを飲んだら、その後スイッチが切れました。シアワセというか、ノンキというか...。

 明日からまた対策の続きを書くつもりなので、どうかお許しを。

’01/02/12 (月)

対策(7)−リヤパネル


 リヤパネル以外の板厚はアルミ板、鋼板含めすべて3mm以上あるのに、ここだけ2.5mm厚と薄くなっている。なぜ3mmにしなかったのか、わからない。何か音造りの上での狙いがあるのだろうか。それとも他に力を入れすぎてここで息切れしたか。ここには入出力ピンジャック、アース端子、電源コード、ACアウトレットなどが付くわけで、それなりに強度が必要なところではないかとシロウトは思うのだが、どうなんだろう。ピンジャックの振動は音にかなり影響するはずである。ということはやっぱり音造りの一環かなあ。それとも深い意味は無いのかな。

 ただひたすらにダンプしまくるのも芸が無いので、ここには内側からハードフェルトを貼ってみよう。どうもキャビネット内の共鳴音(定在波?)が気になる。だが、必ずしもこの対策が良い結果を生むとは言えない。却って音を殺してしまうこともあるからだ。いずれにしろ、やってみないことには何もわからない。

 対策を実行するのも良し悪しである。音を良くするためなのか、対策を施したというアドバンテージを得るためなのか、やっているうちに分からなくなってくる。ここにこんな対策を打てば多分こういう音になるだろうと、凡その目算を立てて実行するわけだが、その動機付けがあやふやだと対策のための対策に陥ってしまうことになる。

 適材適所、急所を押さえた対策とは如何にも難しいことである。

 
〜この項続く〜

’01/02/11 (日)

対策(6)−底板


 底板にもPタイルを使う。上の写真では、外側からの対策しかわからないが、内側からもダンプしてある。しかし、まだ鳴きが残る。とにかく、厚めの金属板が多用してあるので、いかにも厄介である。とはいえ、対策前はゴンゴン鳴いていたのがコツコツという音に変わったのは、一応効果ありということなんだろう。

 かなり中途半端な貼り方になったが、脚が接着してあり外せないので仕方がない。もしかすると中途半端な寸法のほうが良いのかも知れない。バラツキがあると共振点が分散して、クセが減るのではないかと思うからだが、きっとこれは言い訳になるのだろうな。ゴメンナサイ。

 まったくこのアンプ、正に金属の鎧を纏ったような奴であって、あらためて物量の凄さを思い知らされるのであった。1987年ごろって、こんなのがあったんだなあ。

 構造的な弱点があるとすれば、それはリヤパネルだろうと思う。明日はそのリヤパネルへの対策について書いてみたい。

 
〜この項続く〜

’01/02/10 (土)

対策(5)−ボンネットII


 Pタイルを貼り終わると、こうなった。これでも鳴きは残っている。やらないよりマシという程度だろう。ただ、ボンネットを持ち上げてみた感じでは、ちょっと重くなったようである。実測してみると、4,180gから4,600gに増えている。やはりPタイルはけっこう重いのである。重いが非常に脆く剛性は極めて低いので、補強材としては使えない。

 さて、次は底板へいこう。底板は左右大小2枚に分かれている。3mm厚鋼板、本体から外して叩くと盛大に鳴いてくれる。これも容易にはダンプできそうにない。しかし、何とかやってみよう。これは一つの実験である。やってダメなら止めればいいのだ。

 底板に限らないことだが、できるだけ綺麗に対策したいとは思っている。

 
〜この項続く〜

’01/02/09 (金)

対策(4)−ボンネット


 本体から外したボンネットである。π(パイ)字型とT字型のアルミ板をネジで組み合わせた天板に、天然木ムクのサイドウッドがアルミ製L字型アングルを介してネジ止めしてある。これだけで4,180g、軽量級DVDプレーヤー1台分という感じである。天板の厚みは6mm、チンチンとは鳴かないが、ピッチの低い鳴きはある。これだけ厚くて重い金属板をダンプするのは容易なことではない。

 実際に使う段には天板の上にTGメタルの鉛フラットボードを置くが、それでも鳴きは止まらない。やはり、内側からの対策を打ってみたくなる。

 ここにもPタイルを使うことにした。Pタイルを多用する理由は、
  • 鳴き止め効果が高い
  • 比重が大きく重量付加の効果もある
  • 比較的クセが少ない
  • 絶縁体である
  • 加工し易い
  • 安い
 ということなのだが、決してベストというわけでもない。他にもいろいろ考えられるはずである。ただし、導電性の素材を内部に使うときには、ショートの危険を伴うので細心の注意が必要になる。

 内側のフレーム位置などに注意し、適当な大きさにカットしたPタイルを貼り付けていく。

 
〜この項続く〜 

’01/02/08 (木)

対策(3)−シールドケース


 写真はシールドケースを接写したところである。5mm厚アルミチャンネル材を輪切りにし、四隅にタップを立ててある。3mm厚鋼板の中仕切りにがっちりと取り付けてあり、ビクともしない。だが、フチを軽く弾くと鳴きがある。フタはなんとかダンプしたが、このシールドケースはどうしようか。

 内側から対策するのはちょっと無理がありそうだ。やるなら外側からになる。ここにPタイルは使いたくない。鉛シートも何かイマイチだ。ハードフェルトを小さく切り、ランダムに貼り付ける? あるいはガラス繊維入りテフロンテープをグルッと一周巻きつける? う〜ん、どれもパッとしないな。

 何日かほったらかしにして考えた結果、ここは対策なしでいこうと決める。やれば音が変わるのは確かである。だが、なんだかやる気にならない。こういう時は、何もしないのが一番。気乗りしないまま無理やり対策を打って、とんでもないことになった時のトラウマがそう言っている。

 「対策しないのも対策のうち」などと訳のワカランことを言って、ここは逃げておこう。

 
〜この項続く〜

’01/02/07 (水)

対策(2)−フタ


 Pタイルをフタより少し小さめにカットし、発泡ブチルテープを貼る。写真上右が切り出したPタイル、上中がそれにテープを貼ってセパレーター紙を剥がすところ、上左がPタイルを貼る前のフタ(裏面)、下が貼り終わったもの、である。

 確かに鳴き難くなった。しかし、まったく鳴かないというところまでには届かない。やはりPタイルは置いておくだけのほうがダンプ効果は高い。当たり前だが。まあいいだろう。Pタイルは比重がわりと大きく、重量付加にはなるし。と言い訳しておこう。

 後で気が付いた。ダンプにこだわらずPタイルではなく粘着材つきハードタイプのフェルト(セメダインのP−205など)を貼って、シールドケース内の共鳴音を吸音してしまうという手もあったのだ。ひょっとするとそのほうが効果があった、かもしれない。

 ネジ穴に見えるのが石綿かセラミックのような物質でできたワッシャである。ケースとフタの間にスキマをつくり、放熱に一役買っているのであろう。しかし、それだけなら別に金属、あるいはモールドワッシャでも良いわけで、わざわざ非金属、非樹脂製にしているところに、このヘッドアンプフォノイコライザーのこだわりが伺えるのである。

 ともかく4枚のフタ全てに対策し、次はシールドケース。だが、これがなかなかの難物だ。

 
〜この項続く〜 

                     閑話休題

 アクセスカウンターが15,000を超えた。皆さんのご愛顧のおかげさま。毎度のことながらひたすらに御礼申し上げるばかりである。
ありがとうございます。

 最近、どういうわけかアクセス件数が増加傾向にある。昨年中は一日平均110〜120件(これでも僕から見れば凄い数!)だったものが、今年に入ってからは140〜150件に増えている。多くの方に閲覧いただけるのは、大変ありがたくうれしいことである。

 ご覧いただくに値するだけの内容が、はたしてあるのかどうか、常時忸怩たる思いを持ちながらのサイト運営だが、少なくとも「毎日どこか更新」の縛りだけは守っていきたいと思っている。今後ともこれまでと変わらぬご愛顧をいただけるよう、宜しくお願い申し上げたいのである。

’01/02/06 (火)

対策(1)−開けてみました


 どこに書こうか迷った挙句、結局日誌に載せることにした。既に旧聞になってしまった、HX−10000の対策報告である。しばらくの間連載することになるので、よろしくお願いしたいのである。ここに書けば毎日のネタに困らないというセコい読みもあるわけだ。大き目の画像を挙げることでページが少々重くなるが、何卒お許し願いたい。

 以下に述べる対策は、決して決定版ではない。もちろんベストでもない。もしかするとワーストかもしれない。少なくともメーカーから見ればそうだろう。これを実行することで却って悪い結果をもたらすおそれもある。事故が起こった時の責任は全て自分にあることを覚悟しておくべきである。本来はボンネットも開けてはいけないのだから。

 さて、対策を打つため、まずボンネットを開けてみる。写真はその様子。詳しい内部構造については昨年11月12日の日誌を参照してほしい。写真上がフロント側である。左3/2が回路基板部分、右3/1が電源部だ。シールドケースで仕切られたユニットアンプ方式、上二つが左右ヘッドアンプ部、下二つが左右フォノイコライザー部だろう。間違っていたらごめんなさい。

 対策は、このシールドケースのフタをダンプすることから始める。本体の左側に見えるのがそれだ。5mm厚アルミ製、ネジ穴に糸を通してぶら下げ、かるくはじけばチーンと鳴る。基板(ウラ)側と天板(オモテ)側のクリアランスを慎重に調べ、どちら側からダンプするかを決める。表側は天板ギリギリ、裏側はパーツとの間がわりと空いている。ダンプ材の落下事故を考えれば表のほうが安全だが余裕がない。裏には余裕はあるが、落下すると危険である。

 結局、ズレの少ない発泡ブチルを使って裏側からPタイルを貼り付けることに決定。接着してしまうとPタイルのダンプ効果は半減するのだが、ここは仕方がない。発泡ブチルテープに淡い期待を持とう。鉛シートも考えたが鳴き止め効果をあまり期待できないのと、剥がれて基板の上に垂れ下がり回路をショートさせたらエライことになるので見送った。

 
〜この項続く〜

’01/02/05 (月)

忘れてた


 ふとバッド・カンパニーが聴きたくなり、レコードラックから引っ張り出した。彼ら4枚目のアルバム「BURNING SKY」である。1977年発表。

 バッド・カンパニー : フリー解散後、ポール・ロジャース(Vo)、サイモン・カーク(Ds)の二人がミック・ラルフス(G)、ボズ・バレル(Bs)と1974年に結成したイギリスのロックバンドである。歌手(かお笑いか最近ワカランが)の円広志がポール・ロジャースを大尊敬していることはあまり知られていない事実だ。

 14歳〜21歳くらいまでの間に買い集めたロックのレコードは500枚くらいあるが、オーディオするようになってからは殆どプレーヤーに乗せていない。これも箱船では初めてだろうと思う。全曲かけてみて、すり切れるほど聴いたレコードだったことを思い出した。すっかり忘れていたのである。特にB−2の「PEACE OF MIND」という曲は、四六時中鳴らしていたほど好きだったにもかかわらず、昨日まで思い出しもしなかった。ナゼだかわからない。記憶にシールドがかかっていたみたい。

 箱船で鳴らすこのレコードの音、どうかなと思ったが、ロックとしては良いほうである。低域がしっかりしているし、歪み感も比較的少ない。ただし、ギターにエフェクトとしてかかっているディストーションは別だ。あまり音をいじっていない録音らしく、妙なクセが少なく素直に聴ける。しかし全体的に見ると、やはりレンジは狭いし、まともな音場感などは望むべくもない。典型的なマルチモノ録音である。最後に聴いたのが何時だったか忘れてしまったが、その時よりもシステムの質が良くなっているようで、こんな音も入っていたのかと感心させられる部分もあった。

 概して録音が良くないロック系のレコードではあるが、もう一度聴き直してみるのも新しい発見があって面白いかも知れない。でも、昨日これの後プレーヤーにかけたジェファーソン・スターシップの「FREEDOM POINT AT ZERO」の音は、???だったなあ....。

’01/02/04 (日)

ケーキの好い話


 と言って経済評論をするわけではない、って写真を見ればお分かりですな。お客様からケーキを戴いた。フ○ヤのケーキである。アホ息子達も愚妻も大喜び、早速食らいつく。まるでサトウにたかるアリみたいなもんである。

 フ○ヤのケーキなんかどーせマニュアル管理下で作られたプラスチッキーな物だろうとハスに構えて見ていたが、食べてみるとこれがなかなかオイシイ。右端に写っている「ストロベリースペシャル」というヤツをいってみたが、思いの外クリームが油っぽくなく軽い食感である。ムカシはもっとコテコテしていたような気がするんだが。

 オーディオ界の主流がマイルド志向に変わったのは何時頃からだったか。’86〜’87年の“598SP戦争”が終戦を迎えた頃からかな。高剛性ツッパリサウンドからマイルドネクラサウンドへ。前者は緊張感が強く、体に堪えるので長くは聴けない。後者は“音”としての面白みには欠けるが、心地よく長い時間聴ける。そういう音を、時代は欲しているのかなあ。

 以前より食べやすくなったフ○ヤのケーキを眺めながら、くだらないことを連想してしまった。

’01/02/03 (土)

猪突猛進

 きのうの深夜、箱船から母屋へ行こうとドアを開けたら、5mほど先にある残り物置き場から林のほうへ向かって、あわてて逃げる獣の姿。ネコではない。もっと大型の動物だ。いつものタヌキにしては身のこなしが速い。イヌか? いや、もっと大きいな。キツネでもない。あっ、なんということだ、あれはイノシシではないか。ひえ〜、いろんなヤツがやってくるが、イノシシ君は初めてだ。まだ成獣ではないらしく、そんなには大きくないが突進してこられたら充分ぶっ飛ばされそうなくらいはある。こんなところまで出てくるとは、いったい何事か。畑のイモが一晩で全部食べられたというハナシはよく聞くが、残飯あさりは聞いたことがないぞ。雪の多い年でエサに貧したか?

 ほんの一瞬こちらを振り返ったその獣、凄い勢いで箱船裏の土手を駆け上がっていった。ウ〜ム、やはりイノシシだ、あれは。迂闊に外へ出ると、牙で突き殺されるかも知れん。

 落語家の桂文珍さんが丹波篠山に住んでいた頃、毎晩のようにインターホンを押しにやってくるイノシシがいたと語っていたのを聞いたことがある。夜遅くに「ピンポ〜ン」とチャイムが鳴る。奥様が受話器を取ると、「ハァハァ、フゴッ、ハフハフ」という声が聴こえる。文珍さんが「こんな遅うに、誰や?」と訊くと、奥様「いや、わからへんねん。名前もいわんとフゴフゴゆーたはる」。外を覗いてみるとイノシシがインターホンに鼻をこすりつけていた、というような話だったかな。

 イノシシだけに“ボタン”がお好き? おあとがよろしいようで。

’01/02/02 (金)

凄いモノ II


 そしてもう一つ貸して下さったのは、オルトフォンJubileeである。これも実物を見るのは初めてである。

 雑誌などに掲載された写真を見た時、何だか鉄仮面みたいな異端のデザインだなと思ったが、実物はさにあらず、なかなか格好が良い。シェルとの接触面積が非常に大きく、安定した取付を実現する。そういうことも考えた上のデザインなのだろう。細かいスペックについては不明、推奨針圧は2.3gとオルトフォン伝統のローコンプライアンスタイプである。

 HELIKONと同じシェルに取り付けてあるが、総重量はこちらの方が重いようで、カウンターウエイトに鉛シートを三重巻きしたEPA-100MkIIでもゼロバランスが取れない。ウエイトの最後端に10円玉を2枚追加してOKだった。見た目にはHELIKONのほうが重そうだが、実はJubileeって重量級なのね。コイルは6N銀線、磁気回路はオルトフォン独自の新開発のものである。HX-10000、C-17ともに100Ωで受けてウェルバランスだった。

 音は文句なしである。全域に渡ってハイスピード、絶妙のバランスで音楽を朗々と鳴らし切る。まったく破綻のない音だ。HELIKONにくらべて緊張感が少なく、安心して音楽に没入できる。若干の硬さを感じるのは、やはり室温が低いせいか。HELIKONにしろ、Jubileeにしろ金属を多用しているのでなかなか温まりにくいようである。

 切れがよく、実にシャープな音だが、どこか優雅な印象があるのは面白い。突き抜けたようなところがないのである。分解能も高く
すべての音を混濁させずに描き分けるところなど、良い意味での超優等生サウンドと言えるだろう。それだけにHELIKONで感じたような「ギョッ」とさせられるようなところは少なかった。叩きつけるような迫力、なりふり構わず突っ走るような感じではHELIKONに一歩譲るようだ。ただし、これは僕の極めて個人的な試聴感想であって、決して良否、あるいは良し悪しを論じているのではないので、そこはご承知おき願いたい。

 同じメーカーであるというバイアスがかかっているせいかも知れないが、MC-Rohmannを想起させるようなところもあって、ちょっと安心(?)した。ヘッドアンプとの相性は、HX-10000がベター。C-17も悪くないが、やや線が細くなるか。

 二つのカートリッジ対決、僕個人的好みにおいての結果は、力相撲の末寄り切りでHELIKONの勝ち。だが、Jubileeはもう要らないというわけではない。将来的にはぜひとも手に入れたいカートリッジである。両方持っていれば、さぞシアワセなことだろう。

 この稀有な機会を与えてくださった某氏には、この場を借りて心から御礼を申し上げたい。

                ありがとうございました。

’01/02/01 (木)

凄いモノ I


 ご厚意によりお借りしている。LYRA/HELIKONである。実物を見るのはもちろん初めて、その質実剛健な造りに感激する。

 いわゆるケースというものは存在せず、分厚い金属ブロック刳り抜きベースに、振動系と磁気回路部分ががっちりと固定される構造である。コイルとマグネットが収まっている部分には薄い保護シートがかけてあるだけ、出力チップまでの微細な銅線は側面に露出している。音質徹底重視のデザインだが、不思議と無骨な印象はない。機能的に優れたものは、見た目も自ずから美しくなるという実例か。

 コイルは6N銅、出力チップはロジウム銀でメッキされている。出力は0.35mVとMCカートリッジとしてはやや大きめ、MC-L1000を0.13mV上回っている。インピーダンスは5.5Ω、C-17、HX-10000ともに100Ωより30Ωで受ける方が良い結果が出た。

 これは素晴らしい。高域の切れと圧倒的なトランジェントの良さが非常に印象的である。中域には独特の透明感がありボーカルの伸びは最高、詰まった感じは全く無い。低域はやや硬さを感じるが、これは箱船システムのキャラクターと、もう一つは気温の低さも影響していると思う。

 数時間前から部屋を暖め試聴に備えたが、カートリッジ本体は充分温まらない。15℃以下では音にならないのである。理想的には室温20℃を12時間以上保持したいが、ちょっと無理がある。そういう状況下での試聴なので、低域の硬さはある程度仕方ないだろう。アナログに冬は厳しい。

 凄まじいまでの切れを聴かせ、しかも歪み感極少、いくらボリュームを上げても絶叫調にはならない。分解能はおそろしく高く、圧倒的大音量再生でもまったく崩れを見せない。記録されている全ての音を描き切って目の前に差し出してくるようなところがあり、聴き慣れたレコードでも「ギョッ」とする瞬間が何度もあった。デジタルでは絶対に聴けない音である。

 長めのカンチレバーを持つこのカートリッジ、このタイプでこういう音を聴くのは、初めてである。切れと解像度ではMC-L1000をはるかに凌いでいる。今までに聴いたことのない音だ。

 ヘッドアンプとのマッチングはHX-10000よりもC-17の方が良いようだ。ただし、C-17を使うときにはイコライザーがC-280Vのものになるので、その辺も大いに関係していると思う。

 これは手に入れずばなるまい。一人で聴くには惜しいほどの音である。DNAアナログファンには絶対お薦め。高価なカートリッジだが、CPは高い。