箱船航海日誌 2013年11月

日々雑感、出来事などを思いつきに任せて綴っていこう

過去の日誌コンテンツ

’13/11/30 (土)

久右衛門さんの抹茶だいふく


 オツトメ出張版で、京都府宇治市へ出かけてきた。当地から宇治市まで、以前はずいぶん遠かった。近年、自動車専用道が整備されたおかげで所要時間が1時間以上短縮、往復がさほど苦にならない。京都府も、ようやく南北が短くなってきました。

 宇治市へ行ったならば、どーしても寄りたいお菓子屋さんがあるのだった。「京都 宇治 伊藤久右衛門」である。江戸時代創業の、元々はお茶屋さんである。今はお茶とともにそのノウハウを活かし、抹茶風味豊かな和洋菓子も作っている。これが実に美味なのである。

 何を食べても美味しいのだけれど、中でも僕の絶対的イチオシは「宇治抹茶だいふく」である。これは是非お試しいただきたい。初めて食べた時、世の中にこんなに美味い大福餅があったのかと、僕はもうぶっ飛んでしまいました。webページからお取り寄せ注文できるから、まずは御賞味あれ。大福餅のイメージが変ります。

 写真は最近の新商品「緑茶あぶらとり紙」である。細かく轢いた茶葉を紙に漉き込み、あぶらとり紙に仕立ててあるわけだ。淡い緑色とほんのり香るお茶の匂いがなかなかヨロシイ。って、僕はまた良からぬ用途に使おうとしているから、どうにも遺憾のであった。

 もちろん「宇治抹茶だいふく」も、美味しくいただきました。

’13/11/29 (金)

ビミョーな違い


 クドいようですが、昨日のレコードと同内容、蘭DECCA盤(D117D 2)のジャケットも載せておく。ご覧のとおり、縁取りが赤、左上カドの「DECCA」ネームの下に「2LP SET」という表記がある。メータさんの写真は同じものらしいが、わずかにトリミングのグワイが違うようだ。

 曲名・演奏者名のタイポグラフィにも違いが見られる。蘭盤は縁取り以外独盤に近いし、仏盤は独自の字体で構成してあり色も異なっている。何となく、フランス臭いから不思議なものだ。

 この2枚、予備知識なしにそれぞれ単独で発見したとして、即座に判別できるだろうか。独・英盤となら見分けられるかもしれない。縁取りの有無で印象がずいぶん変るからである。しかし蘭・仏盤となると、ちょっとアヤシイ。実際、初めて仏盤を見たときはまごついた。何か違うような気がする。蘭盤引っ張り出して見比べて、「あー、ヤッパリ違うわ」と。

 ジャケットの話よりも、音はどうなのだ。

’13/11/28 (木)

未聴


 20日の日誌に載せた「メータ指揮 / マーラー / 交響曲第3番」の、仏DECCA盤(DECCA 7709〜10)である。プレスも仏。ジャケットデザインは基本的に独、蘭、英盤と同じだが、上側と右側にオレンジ色の縁取りがある。これは蘭盤にもあって(但し赤色)、独、英盤にはない。独は縁取りなし、英は箱入り、蘭は赤縁取り、仏はオレンジ縁取りと、各々の外観特徴で見分けることができるわけだ。

 独盤は先生の評価に「ワイドでダイナミックで鮮烈」とあるが如く、まさに壮絶サウンドマニア向けの凄い音である。英(米LONDON)盤は、ややスマートになる感じだが音場の見通しが良く、より自然なニュートラルサウンドという印象。これもまたたいへん良い音だ。

 あとはこの仏盤と蘭盤である。実はまだ聴けていないのである。2枚組の重厚長大な曲を通して聴くには、それなりの覚悟と決意が要るのだ。しかも、苦手意識のあるマーラーですから。イヤ、オーディオ的にも音楽的にも良い曲だとは思うンだが、な〜んとなくシンドイんだなあ、この人の曲は。

 まだまだ修行が足りないのである。

’13/11/27 (水)

やはりこれだ


 「フランス宮廷の歌」(仏ARION 30 A 096)である。これが初版になる。外盤A級セレクション第2集107番に紹介されているのは後発の廉価盤(同 ARN 31941)である。ジャケットはぜんぜん違います。僕は紹介盤よりも先にこのオリジナル盤を買っている。もちろんたまたまである。狙って買ったのなら、立派なものだが。

 どちらも仏プレス、しかし同じバージョンではない。オリジナルのほうが厚く重く硬く、155gある。廉価盤は薄く軟らかく、128g。こちらが軽いのではなく、オリジナルが重いのである。

 音は両者とも極めて優秀。今さら僕が語るまでもない。ただ、盤質に違いがある所為かどうか、艶、透明感、音場の見通し、切れなどの点で、ややオリジナル盤が勝っているように聴こえる。さほど大きな差ではないけれども、1枚だけ買うならオリジナルのほうが良いかもしれない。

 僕の限られた経験からすると、海外中古市場ではオリジナルのほうが発見しやすいように思われる。価格もまったく高価ではなく、ごく一般的、或いはそれよりもずいぶん安く買える。国内ではどうなっているのか、寡聞にして不知である。

 ヤッパリAna-Maria Mirandaさんの声は、こうでなくっちゃあイケナイ。

’13/11/26 (火)

ハズレARION


 やはり「似て非なる」レコードでアリマシタ。「シャルル5世の宮廷の歌」。

 何だか音に生気がなく、影が薄い。ボーカルは伸びがないクセに声を張る部分にジリジリした歪みが付きまとい、耳障りである。音場は上下前後左右とも無理に切り詰めたような展開で、聴いていて息苦しくなる。全体的に埃っぽく、これは「ハズレARION」の音だ。

 アトリウム・ムジケのレコードなどで御馴染みの曲が次々と飛び出してきて、内容そのものは決して悪くないから余計に残念である。これでもう少しでも音が良かったら楽しめるのに。簡単には優秀録音盤を引き当てられない。そーゆーことなのである。

 Aana-Maria Mirandaって、こんなに痩せた声だったかな。そう思うと、第2集107番「フランス宮廷の歌」を聴きたくなった。

 このレコードには悪いけれど、耳直しに。

’13/11/25 (月)

似て非なる、か


 「CHANTS A LA COUR DE CHARLES QUINT / ANA MARIA MIRANDA」(仏ARION 30 A 051)。邦題に直訳すれば「シャルル5世の宮廷の歌」ということに、なるのだろうか。

 このレコードに関する予備知識はほとんどゼロである。内容も録音もまったく知りません。ただ、A級盤である「CHANTS A LA COUR DE FRANCE」(同 30 A 096 / 先生の紹介盤は再発盤でARN 31941 / 第2集107番)と同じミュージシャンによる古楽演奏であり、タイトルも似ている、という理由だけで買ってみたのである。

 録音データ、(C)(P)などの記載なし。30 A 096は1970年録音というから、カタログ番号からするとそれ以前かも知れないし、同じ頃かもしれない。確かなことは不明である。盤は新盤同様の美しさであった。ジャケットも傷みは少なく、しかし古びた感じは否めない。リリースはかなり昔、のような雰囲気をカモシ出している。

 似ているから買ってみた、というパターンは、これまでにいろいろなタイトルで何度も試している。多くのバヤイ、狙いは外れるのである。滅多に当りません。今回も例に漏れず、そういう予感がしているわけだが、どうなりますことやら。

 どちらにしても、楽しみである。

’13/11/24 (日)

使い様


 11月も下旬になり、当地はずいぶん寒くなってきた。暖房前の室温は15℃くらい、日によってはそれ以下になることもある。

 室温が15℃を下回ると、レコパックもどきには少々の使いにくさが出てくる。液が冷えて粘度が上がる(強くなる)のである。ぜんぜんダメ、ではないけれども、アプリケーターに適量入れたつもりが、盤面1周してもたっぷり余ってしまったり。グワイよく展開しづらくなるわけだ。

 夏用と冬用で粘度を変えて2種類作る。それも一つの方法だと思う。ケド、メンドクサイ。手っ取り早いのは、液を温めることである。ちゅうわけで、写真のようなことに、なっているのである。

 水温を一定管理できるウォーター・バスで温めているところ。25℃程度に設定してある。たぶん、20℃くらいでもOKだと思う。15分も湯煎すれば丁度好い加減、使い頃である。これはたいへんグワイがヨロシイ。

 このウォーター・バス、友達からもらったものである。パック液を作る時にも便利に使っている。あらかじめアトフィスグルー(PVA糊)を温めておいてから他の材料と攪拌すると、ダマになりにくく滑らかなレコパックもどきが出来上がるのである。但し、喜んで温め過ぎては遺憾。せっかく混ぜたアルコールが、どんどん飛んじゃいますから。

 そーゆー失敗も、しているのだった。

’13/11/23 (土)

何が趣味だか


 レコパック1回完了後の試聴に比較すると、ノイズレベルは劇的に下がった。時々、深い傷によるクリック音が耳に障るけれども、それ以外の部分は新盤にも引けを取らない静かさを回復している。楽音自体もずいぶんと透明感が増した。状態最悪と見られたレコードがここまで改善されたならば、クリーニングは大成功と言ってよいだろう。

 これで充分。と感じる一方で、もっとやったらもっと良くなるかも知れん、とも思う。スケベなのである。以前、今回以上に傷みと汚れの激しいレコードがあって、そいつには8回パックしたことがある。いささか意地になっていたわけだが、それなりの効果は確認できた。同様に、やってみるか?

 このタイトルは2枚組だから、1回4面。×8回で32面分。すでに3回12面分は終わっているから、残り20面分。ハァ、前途遼遠。今回はここでヤメておこう。聴いている時間よりも、パックしている時間のほうが遥かに長いのだから仕様がないのである。

 趣味は何ですか。レコパックです。あながち間違っちゃいないケド。

’13/11/22 (金)

傷は消えずとも


 レコパックがよく効くのは、埃と汚れである。目に見えずダスパーも効かず、音溝の奥に潜んだ微細な埃、指紋に代表される油脂性の汚れ、カビ、などには絶大な効果を見せる。

 一方、傷にはまったくの無力である。尤もこれはどんなクリーナーでもそうなのであって、「たちどころに傷が修復されます」なんちゅうのがあったら、それはたぶんオカルトである。ないと思うケド。傷ついたレコードは、二度と元に戻りません。丁寧に扱いましょう。

 傷そのものの修復は、まず不可能である。しかし、それに起因するノイズのレベルを抑えることは、複数回のレコパック実施によってある程度可能と考えている。

 パックの回数に応じ、ノイズレベルが下がってくる、或いは耳障りな感じが低減されるのである。もちろん傷は消えないわけだから、ノイズも消え去ることはない。しかし、レベルと質には明らかな違いが出る。これは何故なのだろう。

 音溝に埃や汚れが入り込むのならば、傷にも同じことが起るのではないかな。傷の底に隠れた汚れが除去されることで、ノイズの出方に差異が出るンじゃなかろうかと、僕は勝手に考えている。科学的根拠はありません。

 そーゆー期待を持って、LONDON盤マーラー3番には今のところ3回目のレコパックを実施している。1回目を終えての試聴では、ノイズがまだまだ目立ったけれども、さて、向後どうなるでしょうか。

 積年の汚れは、手強いのである。

’13/11/21 (木)

手際が良くなり


 ナンギなレコードをどうにかフツーの状態に近づけるために僕ができること。ナントカの一つ覚え、例によってレコパックである。盛大な傷は如何ともし難いけれど、年季の入った指紋汚れと微細な埃には効果があるだろう。少しでも状態が改善できれば、それで吉。

 さあやるぞと、思ったらレコパック切れである。おっかしいなあ、もう1本満タンボトルがあったはずなのに。ボケているのである。仕方がないから追加生産にとりかかる。

 レコパックもどきの自作を始めたのは2008年の5月である。はや5年半も経ってしまったわけで、これまでにどれほどのパック液を作ったのだろうか。風呂桶一杯分、は言い過ぎだな。

 さすがに近頃はずいぶん手際が良くなり、2,250cc(ボトル約5本分)を生産するに1時間もかからなかった。何事も、継続は力なり。

 では、歴戦の勇者をパックする。

’13/11/20 (水)

ナンギななあ


 写真のレコードは、外盤A級セレクション第1集50番「メータ指揮 / マーラー / 交響曲第3番」(独DECCA 6.48127)の、米LONDON盤(CSA-2249)である。米、とは言っても盤はイギリスプレス、つまり実質的には英DECCA盤なのだ。2枚組である。

 紹介盤は独プレス独DECCAだが、このタイトルには仏プレスDECCA盤、蘭プレスDECCA盤、それに英プレス米LONDON盤、以上4種のバージョンがある。内容はすべて同一、大元のマスターテープも同じだと思う。

 ディープでコアなレコードマニアさんの間では、米LONDON盤に最も高い価値がつけられていると聞く。事実、検索してみてもこれが最も少なく、最も高価である。独、仏、蘭盤はごく一般的なゲートフォールド(二ツ折)ジャケットにレコードが2枚入っているが、LONDON盤だけは箱入りで、ちょっと豪華な仕立てになっている。

 わざわざ高価なものを買おうとは、思わない。けれども、それが激安となれば話は別だ。考えられないくらいの安値で出ていたものだから、反射的に買ってしまいました。

 しかしちゃんとオチはあるわけで。写真をご覧いただけばお分かりだろうと思う。箱の表紙には大小シールがベタベタ貼り付けてあるし、稜線は擦り切れて折り返し部分が脱落、今やフタの用を為していない。蝶番部分はビニールテープで補強してある。一度ちぎれたのだ。

 図書館所蔵レコードの払い下げ品である。貼り付けてあるのは、図書館の名称、貸し出しと返却についての注意書き、レコードの扱い方法、管理番号などが書かれたシールである。ビニールテープでがっちりカバーしてあるから剥せない。むりやり剥せば表紙がノッペラボウになる、どころか、箱がぶっ壊れてしまうだろう。

 盤の状態も壮絶だ。埃こそ少なめだったものの、盛大なひっかき傷と年季の入った指紋汚れで満身創痍である。不特定圧倒的多数の手で扱われてきた結果だろう。センターラベルには図書館のでっかい印章が押してあり、勢い余ってラベルをはみ出し盤の上にまでインクがついている。センターホール付近の探り傷は最早「傷」とは言えず、穴の周りが磨かれたようにテカテカだ。なんか凄いな、コレ。

 状態が良くないことは購入前に説明があったから、文句を言うつもりはまったくない。承知で買っているのだ。何よりも、こんなのだからこそ破格に安かったのである。

 しかしまあ、ナンギなことになってますなあ。

’13/11/19 (火)

お返しします


 シラミが出てきてのけぞり、スタイラスがぶっちぎれていて卒倒しかけたMC-L1000は、その後快調、と言っては遺憾、どうにか大過なくレコードを再生できている。

 超低域のレベルが高いもの、ハイが伸び切っているもの、中域に強烈なピークがあるもの、そういったレコードも恐る恐る試してみたが、今のところ問題なくクリアする。これなら友達へ送還しても大丈夫、かしら。なーんだかまだ心配ではある。

 この友達も僕同様、アナログレコード大好き人間である。ただ、僕ほど偏ってはいないようで、どちらかと言えばCDやSACD、或いは配信ディジタル音源を聴いている時間のほうが長いという。ちゃんと時代に対応した健全なオーディオファンなのである。斯くありたいと思えども、これがなかなか。

 良い意味でいい加減、のんきで付き合いやすい。長岡先生ファンではあっても、先生推奨機種にはあまりこだわらない。自分の好みは明確である。けれどもそういう彼をしてなお、MC-L1000は魅力的であったらしい。不グワイありを覚悟して買った中古品、とはいえ、ちゃんと鳴ったほうが良いに決まっている。

 明日発送すれば、週末に間に合うだろう。連休にゆっくり聴いてね。

’13/11/18 (月)

ちっとも安くない


 海外ショップで異様に安い優秀盤を発見。大喜びで飛びついた。さあ支払いを済ませよう、として僕はフリーズしてしまったのである。

 Paypal決済はもちろん、クレジットカード決済もNGである。支払い方法を説明した欄をよく読んだら「Bank transfer only」と書いてある。銀行振り込みのみの対応。エラいこっちゃ。安いのに喜びすぎて、購入確定前に読むのをすっ飛ばしていたのである。アホだ。

 送金は可能である。郵便局窓口で写真に見える「国際郵便振替請求書」をもらい、必要事項を記入すればよい。口座間送金がいちばん簡単である。基本的には国内送金と大きな違いはないのだ。ただ、「IBAN」とか「BIC」とかいう海外送金に特有の国際銀行コードが必要になる。尤も、これは相手方が知らせてくるから心配はないのだが。

 問題は手数料である。1件につき2,500円。それに加えて5.50ユーロ(ドイツのバヤイ)の仲介手数料がかかる。送金諸経費だけで3,200円以上が必要になる勘定である。レコード本体は確かに激安だったけれども、結局はちっとも安くない買い物になってしまったわけだ。なーにやってンでしょーか。まあしかし、これも授業料だと思えばヨロシイ。この方法で送金したのは初めて、いろいろ勉強になった。

 相手方は英語が不得手なドイツの人で、僕は英語もドイツ語も大不得手な日本人である。こんな者の間で、支払方法や住所の問い合わせメールを取り交わすのだから大変だ。相手にあわせ、翻訳ソフトに頼りっきりドイツ語でメールを書いたが、きっとすごく珍妙な独文になってたンだろうなあ。

 それでも通じたらしいから、これでいいのだ。

’13/11/17 (日)

これは良い


 Luc URBAIN / Orchestre de Chambre tchecoslovaque de Prague つながりでCalliopeのレコードをもう1枚紹介する。「ANTONIO VIVALDI / SIX CONCERTI POUR FLUTE OP. 10」(仏Calliope CAL 1620)。

 1977年5月、Royaumont(発音ワカリマセン)修道院での録音。エンジニアは、アンドレ・ナヴァラのバッハ無伴奏チェロ組曲三部作(CAL 1641〜1643)で有名なジョルジュ・キッセルホフである。カタログ番号は昨日のレコード(CAL 1616)のほうが若いのに、録音はこちらのほうが古くなっている。必ずしも録音順にリリースしているわけではないようだ。

 ヴィヴァルディのフルート協奏曲はたいへんポピュラーである。名曲・名演奏に名録音なし、とはよく言われることだが、この録音は優秀である。昨日のレコードとはずいぶん違う。

 音に力と伸びがあり、エコーがとても美しく朗々と響き渡る。弦が少し鋭くなるものの、切れが良く痛快でもある。主役のフルートはコロコロとよく弾みとてもチャーミング。定位がぴしっと決まってしかもエコーが拡散してゆく様子はなかなかのものである。きびきびしていてもたついたところがなく、スマートな演奏も個人的には大好きだ。

 ロケーションが修道院ということで、曲間で小鳥の声が聴こえる。自然のバックグラウンドノイズが、僕の好きな協奏曲3番「ごしきひわ」(B-1)にぴったりである。聴いていると幸せな気持ちになれます。ジャケットは無愛想だが、良いレコードだ。

 検索してみると、このタイトルの中古盤は国内外に限らず極めて安価で手に入るようだ。数もある程度出ている。それだけ有名なのかな。

 興味のある方は、是非。

’13/11/16 (土)

ウマい話はない


 外盤A級セレクション第1集に2タイトル(32番・49番)選ばれている仏approcheは、長岡先生の解説にもあるとおり、基本的には仏Calliopeのレーベル内レーベルである。音にこだわったD2D45回転盤を中心に、僕の知る限りでは10タイトルのリリースがある。

 そのすべてがapproche独自のD2D、というわけでもないようで、Calliopeでリリースした33回転盤のテープマスターから45回転に切り直したのではないかと思われるタイトルも含まれている。

 先日、ちょっと面白そうなCalliopeのレコードを発見し、興味本位で買ってみた。上の写真がそれだ。ごく普通の33回転盤である。ただ、ジャケットにフルカラーの絵が使われているのは、Calliopeとしては珍しいと言える。

 「W. A. MOZART / CONCERTO POUR FLUTE ET HARPE K. 299 / CONCERTO POUR FLUTE K. 313 / CONCERTO POUR FLUTE K. 315 / Luc URBAIN, flute / Vassilia BRIANO, harpe / Orchestre de Chambre tchecoslovaque de Prague / direction Alain BOULFROY」(仏Calliope CAL 1616)。

 このレコードのA面に収録されている「K. 299」が、第1集32番(approche AP 009)と同じ曲であり、録音年月(1979年11月)、演奏者も同一である。AP 009はD2D45回転盤で、この曲のみの収録。両面合わせても25分50秒と、ヒジョーに贅沢な、或いはもったいないカッティングになっている。音にこだわっているわけです。

 ひょっとしたらAP 009収録時に同時パラ録りしたテープマスターからCAL 1616を製作したンじゃなかろうか。などと、都合の良い考えで聴いてみたわけである。

 残念でした。ゼンゼン違います。AP 009は響きがとても豊かで、大変伸びやかな気持ちのよい音と演奏である。少々ハイ上がりではあるけれど、切れが良く鮮度が高い。それに比べてCAL 1616のK. 299は、かなりデッドで乾いた感じ。埃っぽさもあって息苦しく、聴いているのが辛い。演奏も何だか精彩を欠いている。これはもう、まったく別のテイクである。

 そんなにウマい話は、ないのでした。

’13/11/15 (金)

電光石火


 「Louis Couperin, Francois Couperin / Pieces de Clavecin / Albert Fuller」(米nonesuch H-71265)。(C)1972。非常に古いレコードである。長岡先生の紹介記事もずいぶん古い。「長岡鉄男のレコード漫談」赤本(第1集)の6話目「不思議大好きノンサッチ」に載っている。おそらくStereo誌1980年6月号掲載分だと思う。

 何故か僕はこのタイトルに縁がなく、今まで買い逃していたのである。入手が比較的容易で、いつでも買えるとタカを括っていたこともある。先日、極めて良心的な価格の未開封盤を見つけ、ようやく手に入れたというわけだ。悠長にもほどがある。

 未開封とは言っても、ここまで古くなると油断はできない。しかもnonesuchである。クリーニングなしでそのまま聴けるほど甘くないだろうなあと思いながら開けてみれば、案の定。埃は多いしスレているし、正体不明の汚れもある。ただ、この時代のnonesuchの常、紙の内袋に直入れしてあるおかげで、ビニール焼けがないのは幸いだった。

 電光石火・疾風怒濤を楽しむには、レコパックが必須なようだ。

’13/11/14 (木)

至ってマットウ


 接着剤 E-30CLの取説に示されている硬化時間は160分である。しかしそれはあくまでも硬くなりました、という意味であって、規定強度に達するにはさらに長く静置しておいたほうが安全である。功を焦ってしくじるのもいやだから、余裕を見て48時間を待ちギャップクリーニング実施。ようやくにして試聴まで漕ぎつけた。

 試聴を開始するにあたって僕はもう一点、とても気になることがあった。ダンパーである。もし、それがヘタっていたならば泣きっ面に蜂。こればかりは実際に針圧を印加してみないことにはわからないのである。沈み込みが大きく盤面に腹を擦るようなら、またぞろ苦行を強いられるところであったが。

 写真にご覧の通り、まずはOKだった。ああ、ヨカッタ。やや沈み込みは大きいものの、充分実用可能な範囲だと思う。但し、ソリが大きい盤では問題が出る可能性あり。そーゆーヤツを再生しなければ、まずまずイケるだろう。

 して、再生音は。スタイラスぶち切れ、プリントコイルクラック入り、斯くも満身創痍のMC-L1000である。とんでもない音で鳴るかと思いきや、案に相違し至ってマットウである。歪みが酷いわけでもなく、位相が変になるわけでもなく。L1000特有の切れの良さ、情報量の多さも感じられる。ただ、少々トゲトゲしい感じがあるのは、無理な修理の所為なのかもしれない。作業前の試聴はしていないけれども、現状、友達が言うような「明らかに変」な音でないことだけは、確かである。

 真実改善されたかどうかは、友達の試聴報告を待たねばならない。個人的には、修復成功と言いたい、ところだが、大いに不安もある。今の状態がいつまで保たれるのだろうか。

 オリジナルとはまったく異なる(であろう)接着剤を使っている。その強度低下、経年劣化、或いは収縮によるクラックの助長。破断したスタイラスの脱落。或いは再破断。不安定要素は極めて多い。修復はあくまでも延命治療に過ぎない。何より、無学な輩によるシロウト仕事なのだ。友達には「向後1〜2年も使えれば御の字と考えて欲しい」と連絡しておいた。

 事ほど左様に、MC-L1000の中古品は、危ない。今回の個体を見て、その思いを一層強くしたのである。今に至って健常な中古個体は極めて稀だと、考えるべきではないか。

 尤も、発売以来30年である。鳴っていること自体、奇跡とも言えるか。

’13/11/13 (水)

もう一発CRACK


 トラブルは終り、ではなかった。

 接着剤の様子を調べていて、さらなる不グワイを発見したのである。写真をご覧いただきたい。プリントコイルを保護するためにコーティングされている樹脂(正体は不明です)の表面にクラックが入っている。

 このクラック、単独ではなく、先に発見した部分からここまで回り込んできているわけだ。ちゅうことはつまり、今後はさらに割れが進行すると見るのが自然であって、なんとしてもこのまま看過はできないのである。

 念のため、クリスタルイヤホンで導通を確認する。コイルは正常に導通しているようだ。クラックは樹脂表面で止まっているか、仮に微細なコイルパターンまで達していても、現状断線させてはいないらしい。しかし今のうちに手を打っておかないと、早晩ブチ切れること間違いなし。このカートリッジにおける致命的損傷の典型である。そうなったら一巻の終り、二度と復活することはない。

 以前、いつもお世話になっている工作名人に教えてもらった方法を採用する。名人はこれまでに似たようなケースのMC-L10をレストアしているのだ。プリントコイルをエポキシ接着剤で薄くコーティングし補強する、という手法である。

 細長い三角形に切ったアルミフォイルの先端に、やや多め(と言ってもツマヨウジの先っちょほど)の接着剤を取り、クラックに沿って塗布する。最初は少し盛り上がり気味に塗っておき、ヒビに沁み込む(かどうかは、わからんケド)のを待ったあと、同様の形に切った油取り紙で余分な接着剤を吸い取らせる。ゴテゴテ盛り上げてしまっては、たぶん遺憾と思う。

 この作業、肉眼視下では絶対に不可能である。何にも見えません。実体顕微鏡があってこそできるもので、その意味では僕はとても幸運と言える。ありがたいことである。

 あとは、ええと、もうないかな。

’13/11/12 (火)

CRACK


 バグったMC-L1000に発見された致命的とも言える損傷とは。

 コイル・スタイラス・カンチレバーの結合部分に、クラックが入っていたのである。写真矢印の部分からカンチレバー根元方向へ。しかもクラックは接着剤だけにとどまらず、カンチレバーを貫通してプリントコイルに直結してあるダイヤモンドスタイラス自体も破断させている。最悪の状況である。

 クラックの隙間は極めて狭く、肉眼ではまったく視認できない。おそらく100分の数mmくらいだろうと思う。顕微鏡下では、プリントコイルがカンチレバーから浮いているのがはっきり分る。細く切ったアルミフォイルをスキマにそっと挿し込んでみると、カンチレバーの挙動とは無関係にコイルがぐらぐら動くのである。

 誇張して言えば、極細リード線を介してプリントコイルがカンチレバーにぶら下がった、ような状態になっているわけだ。身の毛もよだつ光景である。そりゃあ音も変になるだろう。それどころか、よくぞ無事に鳴ったものだと思う。奇跡だ。もしこの状態に気付かず使い続けていたら、クラックはどんどんカンチレバー根元方向へ進みプリントコイル脱落、ついには断線となっていたに違いない。

 ギャップクリーニングの前に、ともかくこの状況を改善せねばならない。ドシロウトの僕が思いつく方法、実施可能な手段は一つだけである。クラックの充填接着だ。

 スタイラスはカンチレバーを挟んで上下に分断されている。有体に言えば、このMC-L1000は最早「ダイレクトカップリング」ではなくなっているわけで、仮令クラックを修復できたとしても、そう呼べるカートリッジに復活することはないのだ。これはもうナンボ考えてもどーしよーもない。きっぱりと諦めよう。ともかくはクラックを充填接着しコイルを固定、カートリッジとして成り立たせるのみを狙う。対症療法、延命治療と言ってもよい。

 この作業には、極めて狭く微細なスキマにうまく沁み込み、しかも硬化後の収縮が少なく衝撃に強い接着剤が必要である。そんなものがあるのか。思いつくのはエポキシ接着剤だ。低粘度・低収縮・高耐衝撃性のエポキシ接着剤を探した結果、ロックタイト E-30CLというヤツが見つかった。もちろん、これが最適かどうかは、ゼンゼンわかりません。

 実際に使ってみると、2液混合した状態での粘度はPVA洗濯糊くらいで、エポキシとしてはかなりゆるい感じである。「ウルトラ・クリア」と謳われているだけあって透明度が高く、何となくこれならイケそうな感触を持った。

 アルミフォイルを極細クサビ状に切り出し、先っちょにホンの僅か(肉眼では見えないくらい微量)の接着剤を付け、実体顕微鏡下で凝視しながらスキマに差し込む。手元が狂ってスタイラス先端に塗っちゃったらエラいことである。上手いグワイに毛管現象でクラックの奥まで沁み込んでくれた。低粘度のおかげである。3〜4回作業を繰り返し、どうやらクラックは充填できたようである。

 上の写真は作業後のものである。作業前は精神的に追い込まれ、作業中はヒッシのパッチで、写真はまったく撮れなかった。接着剤の完全硬化を待ってギャップクリーニングしたあと、試聴する。

 トラブルは、これで終りか?

’13/11/11 (月)

BUG


 再開早々キボチ悪い画像をご覧に入れる。実体顕微鏡による拡大写真である。実はこのムシ、先日友達から預かったMC-L1000の磁気ヨークにくっついていたものである。またか!っちゅう感じだ。

 前回はダニだった。今度のコイツは一体ナニモノか。ムシ図鑑などをしらみつぶしに当って調べたら、シャレにもならん、ホンマにシラミであった。もちろん屍骸である。生きてたら大騒動、こんなに冷静ではいられません。

 このほかにダニの屍骸(脱皮殻?)も出てきた。もうカンベンして欲しいのである。なんでこうなるかな〜。磁気ギャップには間隙を埋めてしまうほどの埃、極細金属性の糸ゴミ、鉄粉がぎっしり詰まっていて、プリントコイルの動きを阻害している。

 斯くも惨憺たる状況ではあるわけだが、これは現オーナー友達が悪いのではないのだ。中古で買ったら音が変だから調べて欲しいと、送ってきた個体なのである。

 埃や鉄粉はべったりと湿っていて、ヨークには錆が目立つ。かなり湿度が高い環境下で使用・保管されていたのだろう。ムシが湧くのも頷けるというものだ。ああ、想像するだけでキボチ悪い。屍骸とは言えシラミですよ、シラミ。

 まあ、こんな状況でもクリーニングは可能である。前回同様細心の注意を払って作業すれば何とかなる。と、思ったら、あっ、何ということだ。さらに深刻なトラブルを発見してしまったのだった。うーむ、これはひょっとして致命的損傷ではないのか。

 さて、どうすべえか。

’13/11/10 (日)

一秋を終えて


 一夏まるまる休んだ後は、一秋まるまる休んでしまいました。毎日更新どころか、これじゃ毎季更新ではないか。何だかなあ。

 とまれ、ご無沙汰いたしました。ワタクシは元気です。各地では秋の間に竜巻やら大雨やら台風やらでとんでもないことになっていて、まったくにお気の毒としか言い様がない。お見舞いを申し上げるばかりである。幸いにして当地は、ほとんど平穏の秋であった。朝晩の気温はぐんと低くなり、冬の匂いが漂い始めている。

 日誌を休んでいても、オーディオは一向に変化がない。毎夜毎夜のレコード探しである。なかなかに困難ではあるけれども、成果がまったくないわけでもなく。先月、ようやくにして写真のタイトルを入手できた。外盤A級セレクション第3集283番「Lyndon Baglin's Best of Brass」(英SAYDISC SDL-347)である。

 SAYDISCのアナログレコードは「ものすごく稀少」というわけでもなく、検索してみればある程度まとまった数でヒットする。なのにこのSDL-347は滅多に発見できないのである。僕がネット上で見つけたのはこれが初めてだ。しかも、他のレーベルから出ているブラス物5枚セット売りでジャケット写真が隠れていたものだから、危うく見落とすところだった。

 CDジャケットはぶっきらぼうで殺風景な感じだったけれども、ADはずいぶん風格が違う。写真はうんとカラフルできれいだし、意匠も高級感がある。やっぱりオリジナルがいいのだ。販売当時のままのシュリンクが残っていて、傷もスレもなく状態が良い。盤も同様の美しさで、ほとんど新盤状態だった。諦めずに探し続ければ、こーゆーこともあるのだなあ。

 これでA級盤は299タイトルまで揃って、残り1タイトル。探すぞ。