箱船航海日誌 2010年03月

日々雑感、出来事などを思いつきに任せて綴っていこう

過去の日誌コンテンツ

’10/03/31 (水)

開花


 昨春に同じく、今や咲こうとしてなかなか咲けない庭の桜である。もうこれ以上待てないとばかりに、ちらほらと咲き出した。2010年の桜は、今日を以って開花である。

 この冬は結果的に暖冬少雪だったと言える。切れは悪いケド。その影響か、3月のうちに開花するのは2007年以来3年ぶりである。昨年に比べると花付きが良さそうだ。週間予報によれば6日〜7日に晴れて暖かくなるというから、その頃が満開になるかもしれない。入学式にピッタリです。

 まだ少し寒いけれど、当地にも春がやってきたようだ。

’10/03/30 (火)

1Q83


 1986年に初購入し、24年(途中針交換1回)経った今なお使い続けているビクター MC-L1000だが、そもそもこのカートリッジの初出は何時だったのか。突然気になって調べてみた。

 手元に「'84 COMPONENTS LINE-UP 国内・海外オーディオ機器事典」(1983年11月20日発行)という、分厚い本がある。その「カートリッジ」項の一番最後にMC-L1000が載っている。

 写真はそのページである。'83年11月20日発行の本に実物写真が間に合わず、しかも「価格未定」となっていて、諸元のところに「予価(\85,000)」とある。これからするに、MC-L1000は1983年秋の新製品だったわけだ。

 阪神タイガースが21年ぶりの日本一になる2年前、ロサンゼルスオリンピック前年の発売である。太古も太古、ほとんど化石のようなカートリッジと言ってよいだろう。そのようなものがいまだに第一線で実働し、しかも多くのオーディオファンを魅了せしめるのだから恐れ入る。

 この後、AD関連機器はCDに圧倒され衰退の一途を辿ることになる。CDの所為でADが死んだ。それは誤った見方ではないと思う。だが、視点を変えてみれば、1982年のCD出現があったからこそMC-L1000が製品化されたとも言えるのではないか。ディジタルに負けてたまるか。当時のカートリッジ技術者の声が聞こえるようだ。

 27年後の今も、その恩恵に与っている。

’10/03/29 (月)

真冬の風景


 上の写真は、29日午後11時頃に撮ったものである。正しく真冬の風景だ。気温−1℃。昨年も寒い3月に気分が滅入ったものだったが、今年はそれに輪をかけてヒドイ寒さである。30日の朝は除雪が要るンじゃあるまいか。

 ネコはコタツで丸くなっています。

’10/03/28 (日)

TTWeights


 海外レコードショップを徘徊していて、いささかならず好奇心を刺激されるものを発見した。TTWeights Audio という、カナダのメーカー製ターンテーブル(TT)プレートである。

 写真のモデルは「TTCopperCarbon ULTIMATT - 1.8 KG」という、最上級タイプである。ポリカーボネート、銅、カーボンファイバーの三層構造、直径11.54インチ(約29cm)、5.5mm厚、重量1.8kg。お値段は$608.35というから、現在のレートで56,000円くらいか。高級品である。

 これが優秀であるかどうかは、まったく分らない。個人的には、樹脂やカーボンファイバーが混ざっているのは気に入らない。おそらくは現用のY31さん謹製砲金TTプレートのほうが強力だろう。従って、これを買うつもりなどあるはずもないのだが、ただ、僕はこーゆールックスに、ヒジョーに弱いのである。

 このほかにも純銅製、カーボンファイバー製など、TTプレートだけでも多くの製品があるようだし、もちろんスタビライザーもある。珍しいところでは、国産には絶滅して久しいリング型クランプ(レコードの外周を押え込むリング)が、複数モデル用意されている。効果は抜群、だが、使い方を誤ったらエラいことになる、恐ろしいアクセサリーである。

 ADファンとしては、見ているだけで楽しくなるのだった。

’10/03/27 (土)

超ゲテモノ到着


 23日に載せた、262タイトル目のA級盤が届いた。これを発見した在米のショップから「今は忙しい時期で、発送が遅くなる。ゴメン」とメールが来たわりには、随分と早い到着である。突然ヒマになったのかしらん。

 盤、ジャケットともまずまず良い状態である。ただ、米盤特有の扱いの悪さによる細かな傷と汚れはある。致し方なしだ。再生前のクリーニングは必須。例によって、レコパックもどきを実施してからの試聴になる。

 超ゲテモノかタイクツか。いずれにしても楽しみなのである。

’10/03/26 (金)

切れが悪い


 なーにが「あとは春爛漫へ一直線」だ。今日は朝から雪降りで、ムチャクチャに寒い日であった。三寒四温どころか、これでは冬へ逆戻りだ。もう勘弁してほしいのである。

 夕方からは晴れ、今はきれいな星空が見えている。しかし、寒さはさらに増したようだ。放射冷却である。冬の星座オリオンは西の彼方へ消え去った。かわりに北斗七星が登場し、夜空は冬の終りを確実に告げている。なのに、この寒さは何だ。

 昨年にも増して、切れの悪い冬である。

’10/03/25 (木)

メンドクサイ


 さあ日誌を更新しよう、としたら突然PC画面上に「新しいウイルスソフトをインストールできます」というメーカーからの案内が現れた。現用ソフトの有効期限いっぱいまで無料で使えるという。ありがたいことだと、気楽に実行ボタンを押した、ものの。

 すぐに後悔した。ダウンロード、インストールはともかく、そのあとの各種設定がメンドクサイのである。さっさと日誌を更新し、今夜は早く寝ようと思っていたのに、エラく手間取ってしまった。相変わらず、パソコン音痴は治らない。

 けれどもまあ、最新のウイルスソフトに更新できたことは、大きなメリットだと思う。ムカシとは違い、webとつながっただけでウイルスがどんどん入り込んでくる時代なのだから。

 ちゃんと設定できているのだろうか。ああ心配だ。

’10/03/24 (水)

謎の円板SUS


 パワーアンプの電源を取っているテーブルタップである。惜しくも故人となってしまった友達の自作によるものである。ケーブルを除いても優に10kg以上あろうかという、装甲車か戦車のような奴だ。

 さらにその下、テーブルタップが載っている円板、これがまたなかなかのものだ。240mmφ×18mm厚のSUS円板である。実測重量6.1kg。産業廃棄物として打ち捨てられる寸前、友達が救出したものを譲り受けた。これがゴミとは、実にモッタイナイお話である。よくぞ救出してくださった。

 先日まで、どこに使おうかと思案しつつ、ふと思い立ってテーブルタップの下に敷いてみることにした。特段に意味はない。音に向上があるのかどうかも、ゼンゼンわかりません。おそらく、大勢に影響はないと思う。

 ムクモノ・ヒカリモノマニアの欲求を大いに満たしてくれるルックスは、ヒジョーに気に入っている。如何にも意味ありげで、実はそうでもないという、イワユル一つの「ファンファーレ」なのである。

 箱船には、こーゆーの多いです。

’10/03/23 (火)

262


 久しぶりに、外盤A級セレクション収録のLPレコードを入手できそうで、大いに喜んでいる。前回は昨年の4月だったから、ちょうど1年ぶりである。ウシの歩みだ。

 第3集202番収録「THE HUMAN HOLIDAY」(米A&R AR1001)。長岡先生によれば、このタイトルは「超ゲテモノ」ということに、なっている。僕は20年くらい前、友達から借りて一度だけ聴いたことがある。確かに奇妙な味のレコードだと感じたけれども、超ゲテモノ、とも思わなかった。ただ、ちょっとタイクツだったような。

 なにしろ大昔のこと、しかも一度きりの機会だったから、確かなことは言えない。今回手元に届いたら、ちゃんと聴いてみたいと思う。尤も、超ゲテモノだろうがタイクツだろうが、ちっとも構わない。300タイトルコンプリートに、僅かでも近づけたのだから。

 残りは、38タイトル。

’10/03/22 (月)

ブライテスト・ホープ


 試し、というよりはほとんど興味本位で買ってみた、LED電球である。箱船1階照明全部交換、はさすがに見送るとしても、ともかく実際に使ってみないことには正体を暴けない。例によって、余計な好奇心の発露であります。

 東芝 LDA5N 昼白色型である。ランプ単体の直下照度は60W形白熱球相当。定格消費電力は4.6W、定格寿命40,000時間。これらの数字だけを見れば、まさに「エコ」な電球である。近所の量販店で2,780円だった。これでも30%OFF。

 実物を手にするのは初めてである。驚いたのは、その重量だ。実測120g。持ってみればすぐに分ることだが、電球1個としては非常に重いのである。比較のため、従来の100W形ナス球を実測すると35g、同ボール型でも55gだった。2倍〜3.5倍重いことになる。

 単なる電球というよりは、システム化された照明器具、のような印象だ。それもそのはず、電気回路に詳しい友達によれば、根元にLED駆動回路が仕込まれているそうだ。半球形の発光部分に特徴的なネックの形は、その所為なのだ。フィンは放熱用らしく、当然金属製である。そりゃ重いはずだ。

 基本的には白熱球と交換するだけですぐに使える、のだが、制約もある。まず、調光機能つきの照明器具には使えない。ワイヤレスリモコンタイプもダメ。放熱の関係で、断熱材施工器具はNG。誘導灯、非常用照明器具は不可。HIDランプ(水銀灯、ナトリウムランプ、メタルハライドランプ)器具も不可。「絶対に使用するな」と書いてあるから、わりとエラいことになるのかもしれない。

 母屋の照明器具で、問題の無さそうなところを選んで使ってみた。昼白色のメリットで、見かけ上の明るさは増した。光り方は随分と違う。指向性が強く、電球直下は充分な照度が得られるものの、周囲は暗い。スポットライト的なのである。この点、一概にデメリットとは言えない。使い様によってはメリットにもなり得ると思う。

 ジワッと点灯する感じは皆無で、スイッチONとまったく同時にチカッと点き、パッと消える。トランジェント最高である。LEDの特長だ。当然のことながら、寿命については現時点不明。どれくらい持つかは、今後要観察ということになるだろう。

 消費電力、寿命、重量、駆動回路からのノイズの危惧、対応器具の制約、光り方(指向性)、単体コスト。それらをもとに総合的判断すると、すべての白熱球をLED電球に交換するのは、やはり時期尚早。と個人的には考える。然りながら、ランプ界の「ブライテスト・ホープ」であることは、間違いないと思う。

 将来に、大きく期待したい。

’10/03/21 (日)

サクラサイタカ


 お彼岸の行事も盛会裡に終り、心から安堵している。寒いお中日にもかかわらず、大勢のお参りを、本当にありがとうございました。

 異様に暖かかった20日とは、打って変わって寒くなった21日であった。いわゆる「三寒四温」ということなのだろう。こうしてだんだんと春になるのだ。

 気がつけば桜の蕾も随分と大きくなり、うっすらと紅色がさしている。大阪では開花しているそうだし、四国の高知ではすっかり満開だという。当地でも、間もなく開花しそうな気配である。

 「サクラサク」と言えば、この春高校を卒業した愚息1号の進路である。紆余曲折はあったものの、どうやら落ち着き先を決めることができた。オヤヂとしてはイロイロと言いたいことがあるのだが、現時点では黙っておくのである。

 子を育てるのは、本当に、難しい。

’10/03/20 (土)

LED電球


 低消費電力、長寿命、しかも明るいと、昨今話題のLED電球なるもの。近ごろ低価格化が進み、爆発的に普及する兆しがあるという。ナルホド。100%白熱球照明を採用する箱船1階のヌシとしては、ヒジョーに気になる存在である。市場調査(量販店で値段見てきただけ)に出向いてきた。

 そもそも僕は、ローコスト化する前の価格を知らない。ムチャクチャいい加減である。そーゆーわけだから、店頭表示を見てびっくらコイてしまった。100W形白熱球相当の明るさを持つタイプは、1個6,000円以上。60W形相当でも2,000円以上である。

 箱船1階は100W形を8灯使っている。これらすべてをLED電球に置き換えると、50,000円近くの投資が必要になる勘定だ。1個200円〜300円程度で買える白熱球からすると、とんでもない値段のように思われる、わけだが。

 長期間のランニング・コストでは、圧倒的にLED電球有利である。ざっと計算すると、ウチの使用環境なら2〜3年で初期投資のモトが取れると出た。今すぐ全交換するのが、頭の良い選択と言えそうである。そうと分かっていながら、即実行に移す気になれないのは、何故か。

 LED電球に対する、工業製品としての成熟度を危惧するからである。もう少し作り込まれ、製品として安定度が増してからでも遅くないのではないか。オーディオ機器への影響(ノイズの有無)など、不明な点も多い。

 試しに1個だけ、買ってみようかな。

’10/03/19 (金)

彼岸が来れば


 今年の春分は3月21日、その日はお彼岸の中日でもあるから、昨日18日は「彼岸の入り」になるわけだ。

 「暑さ寒さも彼岸まで」。昔の人はよく言ったもので、ずいぶんと春めいてきた感じである。2日前には春一番も吹いた。今日は22℃まで気温が上がったし、裏庭の土手は写真の花、イヌフグリが一面に咲いている。10日前の雪がウソのようだ。

 ここまで来れば、あとは春爛漫へ一直線。

’10/03/18 (木)

Corroboree 最新復刻盤


 AUDIO BASIC誌最新号(2010春 第54号)誌上、島護氏連載の「アナログ盤S級セレクション」に、興味深いLPレコードが紹介されている。

 長岡先生ファンなら知らない人はいないほど有名な「Corroboree」の、米CLASSIC RECORDSによる最新復刻盤である。既に同レーベルからは180g盤、200g盤(いずれも33回転盤)で復刻されてきたわけだが、今回のものはちょっと特別である。

 片面カッティング45回転盤3枚組、「クラリティ・ヴァイナル」というカーボンフリーの半透明200g盤による復刻である。マスタリング・エンジニアは、名手バーニー・グランドマン。島氏曰く「45回転盤はまさに(音質の)桁が違う」と。

 これは買わねばなるまい。と、海外通販ショップをあたってみると、$38〜$40程度(もちろん新盤)で買えるようだ。送料込では$70くらいか。念のため、国内ショップでも検索すると、e-reco.comのカタログにあった。税送込6,680円。

 Amazonにもそれと思しきものが、さらに安くで出ているのだが、記載されている情報があやふやでよく分らない。何だかキショク悪いから、e-reco.comに注文した。

 「Quiex Clarity SV-PII Clear Vinyl 200g 45rpm LPs SERIES」(名前長い)と銘打たれたこのシリーズ、既に30タイトルほどがリリースされている。幾つか聴いてみたいものも含まれているから、折を見て買ってみようと思う。

 純然たる新譜、とは言えないにしても、今後の展開がヒジョーに楽しみである。

’10/03/17 (水)

重要会議の日


 浮かれてばかりも居られない。今日は年度末恒例の、重要な会議の日であった。

 先月末から不得手な事務処理に追われ、準備した資料にもどうやら間違いがなく、議事は無事進行終了し、今大いに安心しているところである。ああ、ヨカッタヨカッタ。

 来年度(平成22年度)は、当寺設備の一部改修工事を控えている。おそらく、今後二度とないと思われる、大きな事業である。住職としてはやはり心配もあるわけだ。しかし委員諸氏から「大丈夫です。皆で協力して完遂しましょう」という心強いお言葉をいただけた。誠に以って、ありがたいことだと、思う。

 今夜からは、ちょっと安心して眠れそう。おかげさまである。

’10/03/16 (火)

グルーヴ・ブースター


 ライブ終演後は、例によって記念に神保さんグッズを買い、サインをお願いする。これまではTシャツを選んできたが、今年は写真のグッズを買った。と言っても、ドラマーさん以外には何のことだかよくワカラン、というお話だと思う。

 神保さん考案による、「グルーヴ・ブースター」という。やや伸縮性のある厚手の布で作られた、幅80mm×長さ400mmの帯である。一端のループ状部分を親指に引っかけ、手の甲から外向きに手首を一巻きしてマジックテープを止めれば着装完了。写真のようなグワイである。

 これを着ければアラ不思議。イキナリ神保さんに大変身。するほどドラムは甘くありません。けれども、今まで叩き難かったような速いストロークが、楽にこなせるようになる。リスト(手首)を半固定したような状態になるから、却って動かしにくくなるように思われて実は、逆なのである。

 これは非常に不思議な感覚で、神保さんの豊富なドラム演奏活動からの産物であることが、よくわかる。ドラムだけでなく、ギターやベース演奏にも効果があるそうだし、アイディア次第で楽器演奏以外にも使えそうな気がする。ネット通販でも簡単に買えるから、興味のある方は是非。

 サインを貰っちゃったから、使うのちょっとモッタイナイような。

’10/03/15 (月)

ドッテッド・エクササイズ


 ドラムクリニックに用意されていた「サプライズ」は、会場入り口で参加者一人一人に渡された1枚の楽譜で始まった。神保さん手書きのドラム譜をコピーしたものである。

 タイトルに「Dotted Exercise」とある。譜面上での「dott」とは「付点」という意味。音符の脇に付く黒点である。「主音符の半拍分を付加する」という意味になる。例えば「付点四分音符」なら一拍半分の長さになるわけだ。

 4/4拍子の場合、四分音符4つひとかたまり(四拍)で一小節であるから、拍が4の公約数、公倍数であれば小節の中にきっちり収まる。体感的に言えば、拍のアタマとお尻がきちんと揃うから、カウントするのは楽である。

 では、先に書いた「付点四分音符」のバヤイどーなるか。付点四分音符の長さは一拍半、それを4/4拍子の拍に載せようとすると余りが出る。1.5拍×2で3拍、3拍×4で12拍。つまり、四分音符12拍目でアタマが揃う。要するに、拍のアタマとお尻がどんどんズレて行くから、カウントするのがヒジョーに難しくなるわけだ。ああややこしいドッテッド・エクササイズ。難しすぎて「どてっと」コケけるから「どてっとエクササイズ」。

 1.5拍×2=3拍。それを「三連符」(さんれんぷ)という。楽譜には4小節分の三連符が三種類書かれていて、これを8ビート(早い話が4/4拍子)に乗せて神保さんと二人で交互に演奏する。三連符を叩きながら常に四分音符を意識する訓練になるのである。

 まず、二人で同時に8ビートを叩き始め、4小節進んだところで受講生が三連符を4小節分、次の4小節は二人で8ビート、そのあと神保さんが三連符を4小節分叩く、という手順で練習するわけだ。

 あの「世界の神保さん」と一緒にドラムが叩ける! これはえらい大変なことなのだ。どれくらいスゴイかというと、もうキゼツしそうなほどスゴいのである。こんな機会は二度とナイかも知れない。エクササイズが上手くこなせるかどうかは別として、ここで叩かにゃ男が廃る。

 「はいっ、やりたい人」と神保さんの声がかかり、大喜びで手を挙げてしまった。結果はともかく、まさに夢のような一瞬である。叩き終わって「ビートに芯がありとても良かったです」とお褒め(お世辞、とも言う)をいただき、50男は馬鹿のように喜ぶのだった。

 時空を共有して「体感」した神保さんのビートは、素晴らしいものであった。

’10/03/14 (日)

YD-9000AJ


 神保さんのドラムセットは、やはり新しくなっていた。YAMAHA「神保彰デビュー30周年記念モデル YD-9000AJ」である。1970年代に発売され、高い評価を得たYD-9000シリーズを、できる限り当時のままに復刻したモデルである。

 使用材は100%バーチ(樺)で、美しいリアルウッドカラーに仕上げられている。ルックスとしては、昨年までのセットよりもこちらの方が好きである。神保さんのために作られたドラムだから、音が悪いはずはない。ただ、エージングという点では、旧セットに及ばないだろう。尤も、それはまさに「時間の問題」だ。

 本番演奏に先立ち、16時から始まった「神保彰のドラムクリニック」。昨年までにはなかった大きなサプライズが用意されていて、集まったドラマーたちには夢のような時間であった。

 やっぱり神保さんは、最高だ。

’10/03/13 (土)

明日は


 いよいよ明日になった神保さんの福知山ライブである。今年もげんきまじんさんと会場でお会いできそうなグワイで、とても楽しみにしている。

 写真は昨年撮ったものである。YAMAHA ビーチカスタム スパークルホワイト。ビーチ材とは、日本で言うところのブナ材である。厳密には日本産のブナとは少々異なっていて、樫に近い感じの材になる。YAMAHA得意の塗装技術で、ラメ入りホワイトに美しく仕上られている。神保さん曰く「市販仕様スパークルホワイトに比べ、ラメが500%(5倍)増しになっている」と。

 僕が福知山での神保さんライブを初めて見た2007年から、昨年2009年までは、いつもこのセットだった。それが今年は、新しいセットに変っていると聞いた。カラーリングはナチュラル・ウッドらしい。材は変ったのかな。個人的にはメイプル(楓)の音が好きなのだが。おそらく明日のドラム・クリニックで、神保さんご自身による詳しい解説が聞けるだろう。

 これまたヒジョーに楽しみなのである。

’10/03/12 (金)

怪演・快演


 ジェンキンズ女史のお歌もヨロシイのであるが、やはりちゃんとした(!)「夜の女王のアリア」が聴きたくなった。ただ、ADもCDも手持ちにはなく、あるのは1992年にリリースされたLDだけである。「魔笛 / ジェームズ・レヴァイン指揮 / メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団」(日ポリドール POLG-1072〜3)。如何にも古いソフトで、恐縮至極。

 走査線525本、インターレース映像は、さすがに苦しい。当時としてはかなり良い部類だったが、ハイビジョンに慣れてしまった今となっては、シマシマのボケボケに見えるのだった。音声はCD同等のPCMディジタルで、非常に優秀。LDの音は良かった。

 夜の女王を演じるのは、ルチアーナ・セッラである。お恥ずかしい話、僕はオペラにもモーツァルトにもまったく詳しくないから、尤もらしいことは何も言えない。ただ、単純に一オーディエンスとして聴いた時、この人の歌は実に素晴らしいと思うのである。

 個人的には、夜の女王がタミーノの前に姿を現す場面に歌われるレチタティーヴォとアリアが、一番好きである。圧倒的な声の浸透力。伸びと馬力があり、すごい迫力だ。歌い終わって身を翻し去ってゆく女王の姿に、METの聴衆と一緒になって拍手してしまうのである。

 ジェンキンズ女史は怪演、セッラ女史は快演、だ。

’10/03/11 (木)

雪裡に香し


 「一朶寒梅香雪裡」(いちだのかんばい、せつりにかんばし)。

 境内から坂を下ったところにあるお宅の庭では、今白梅が満開である。午前中は雪が残って鬱陶しい天気だったが、お昼から晴れ間が覗くと、水気の多い雪は忽ち消え去ってしまった。青空に白い梅花が映え、とてもきれいである。

 陽が差せばそれなりに暖かく、やはり春が近いことを実感するのだった。うちの中庭にある紅梅も、もうすぐ咲き始めるだろう。梅は咲いたか桜はまだかいな。

 昨年は如何にも寂しかった桜だが、今年はどうだろうか。

’10/03/10 (水)

お約束


 一度はこういうことにならねば春は来ないらしい。お約束のように、3月の雪である。昨日今日は本当に寒くて、春の気配など何処へやら。先週末、山からウグイスの声が聞こえて喜んでいたら、この有様である。

 ただ、真冬とは違いやたら水気の多い雪だから、ほとんどマトモには積らない。何となく白く見えて、実はグチャグチャの美しくない雪なのだ。こんなに煮え切らないのなら、降らなきゃいいのに。

 これが冬の最後っ屁に、なればよいのだけれども。

’10/03/09 (火)

楽しみのうち


 別にWE-407/23を折檻しているワケではない。でき得る限り正確なラテラルバランスを取ろうとすると、こーゆーことに、なるのである。

 ゼロバランスを取ったアームをベースから抜き、地面に対してアームを垂直に構える。このとき、ラテラルバランスが偏っていると、アームは振子のように左右どちらかへ動くことになる。そこでラテラルウエイトをスライドさせ、アームが鉛直方向で静止するところを探る。そこがラテラルバランスのOKポイントである。

 片手にアームを持ち、もう一方の手でウエイト位置を調整する。極めて微妙で、ヒジョーに危険である。人後に落ちない粗忽者の僕としては、できれば避けて通りたい作業なのだが。

 しかし、である。このようにしてほぼ完全なラテラルバランスを取った時の音は、格別なのだ。適当にやったバヤイとは比べ物にならないほど、芯が通り鮮明かつ繊細な音が得られるのである。労多くして功少なし、大して違わんだろう、などと思っていたら大間違い。予想外の変り様に、驚かされるのである。

 長岡先生ファンの間では、トーンアームと言えばテクニクス EPA-100、或いはMkIIの評価が非常に高く、SAECのWEシリーズはその陰に隠れてしまっている感が強い。今こうして手間をかけて調整し使ってみると、WE-407/23は如何にも素晴らしい、極めて優れたトーンアームであることを実感させられるのである。

 厄介な調整も、楽しみのうちである。

’10/03/08 (月)

ラテラルバランサー


 WE-407/23はJ字型アームである。アーム中心軸から見て左右非対称となり、アームを上から見たとき、左側(オフセット角をつけてある側)に重量バランスが偏るカタチになる。

 偏っていると何が遺憾のか。ダブルナイフエッジにかかる荷重が回転軸の左右でアンバランスとなり、理想的な動作を妨げる。具体的には、感度の低下、トラッキング特性の劣化など。長い目で見たバヤイ、ナイフエッジの片減りが起こる可能性もある。

 そのような不グワイを避けるため、このアームにはラテラルバランサーがついている。写真の部分である。原理は単純。偏っている側と反対側(つまり、右側)に錘を付け、左右の釣合を取る、という仕組みだ。特に珍しいものでもなく、SMEのJ字アームにも装備されている。

 大小のウエイトで受けを挟み込む形になっている。受けにはアームに近いほうから順に緑・白・赤のマークが付いている。ウエイトは大に小をねじ込む構造になっていて、緩めてスライドさせ最適の位置を決めたら締めて固定する。

 ゼロバランスを取った時、カウンターウエイト位置がサポート部に近い(カートリッジ+シェル重量が軽い)ほど緑方向、遠い(重い)ほど赤方向へスライドさせて調整する。取説には「普通に使用の状態では、概略のポイントに合わせて頂ければ結構です」とある。要するに、適当でよろしいですよ、というわけだ。

 ゲンミツに言えばゼロバランスと同様、真実本当にラテラルバランスが取れるポイントは、各カートリッジに対して1点しかないはずだ。「概略のポイントでよい」という説明にウソはないと思う。けれども、折角のラテラルバランサーである。より完璧に近く調整したいと、いい加減なクセにシンケーシツな僕は考えるのである。

 その方法。これがまた、ナカナカに厄介でありまして。

’10/03/07 (日)

名残


 前々オーディオ部屋(現在物置)で探し物をしていたら、目的の物は見つからず、写真のような物体が出てきた。なんと懐かしい。そーいえば、このようなモノを、持っていたのだなあ。

 「RQ-1」という。別名RASKキューブ。100mm×100mm×55mm、実測重量730g。パーチクルボード塊の上下にネズミ鋳鉄板を貼り付けたものである。買ったのは1986年頃だと思う。当時、1個3,900円。結構高いのである。

 主にスピーカーと床の間に入れて使う、インシュレーターの一種として販売されていたものである。僕もその用途で買ったはず。だったら最低6個、通常8個はないとオカシイ。どーゆーわけか出てきたのは、二つだけである。

 2個ではどうにも使い様がない。と言って打ち遣っておくのもモッタイナイから、B-2302の天板に載せておいた。少しは効果が、ある、か知らん。

 当時の僕は闇雲なアクセサリーマニアで、基本的なセッティングは疎かにし、アクセサリーで誤魔化す、いわゆる「欠点を欠点で補う」型のオーディオをやっていたのだ。そんな奴に使われていたRQ-1も、さぞいい迷惑だったに違いない。他にも怪しげなものをたくさん持っていたけれども、ほとんど手元に残っていない。

 たぶん、誰かにあげちゃったンだろう。2個のRQ-1は、その名残か。

’10/03/06 (土)

寿命


 CDがこの世に出たのは、1982年10月である。「夢のディジタル音楽メディア」として華々しいデビューであった。

 それから数年後、「CDは寿命が短い」などという、妙な噂が流れたことがある。曰く、アルミ蒸着面が酸化し、読み取り不可能となるまでに20年(30年だったかな)はもたない、と。

 デビューから27年5ヵ月を過ぎた今、実際にはどうなのだろうか。ムチャクチャな扱いで傷だらけにし、再生不可能となったものなら山ほどあるのだろうけれども、蒸着面が錆びてダメになったとは、ついぞ聞かない。少なくとも、僕は寡聞して不知である。

 手持ち最古のCDは、1985年1月に買ったものである。25年2ヵ月モノだ。殊更大切に保管してきたわけでも何でもないにもかかわらず、酸化も錆も劣化もない、ように見える。もちろん、再生するに何ら問題なし。

 昨日聴いたLPレコードは1965年プレス、45年モノである。まったく健全。初のステレオフォニックLP(1958年)も同様に聴けるから、こちらの寿命は少なくとも50年以上、ということになるわけだ。

 CDの正確な寿命がどれほどなのか、僕にはわからない。それが判明する前に、CDそのものがなくなる可能性もある。イヤ、その前に、自分がいなくなるほうが確実かな。

 余計な心配は、せんでヨロシイ。

’10/03/05 (金)

使わねばアホになる


 ご依頼により、作業中の図。ナニをしているか、分る人には分ると思うから詳しくは触れない。その辺はぼかしておいたほうが無難だ。

 写真左に写っているMarantz製の某機器、これを使うのはずいぶんと久しぶりである。加えて1999年製の古いヤツである。ちゃんと動くか少々心配だったが、まず問題なく動作した。ヨカッタヨカッタ。

 それよりも何よりも、操作方法を忘れているのは大問題である。さあやるぞ、と作業に取りかかってハタと考え込んでしまった。どーやって使うンだっけな。取説を探すところから始めるのだから、作業効率最低である。

 とっかかりの操作が分れば、あとはわりと簡単に思い出せて一安心。どうやら未だボケてはいないらしい。自分自身もちゃんと動作して、これまたヨカッタヨカッタ。

 機器もアタマも、使わなければアホになります。

’10/03/04 (木)

ジャイアンも裸足で逃げる


 長岡先生の「ディスク漫談 2 キメラの時代」で、「笑えるディスクのナンバーワン」と高く(?)評価されたADである。「FLORENCE FOSTER JENKINS / The Glory (????) of the Human Voice」(米RCA VIC1496)。大金持ちのおばさんが、落語の「寝床」、或いはドラえもんの「ジャイアンのリサイタル」よろしく作ってしまったレコードだ。

 誌上に紹介されているものとはジャケットが違っている。記事中には「'83年プレスのモノフォニック盤」とあり、手持ちの盤には(P)1970とある。もちろんモノフォニックである。どっちのほうが先出なのか、僕にはよく分らない。

 数年前、友達宅で聴かせてもらったことがある。間違いなく「笑えるディスク」。なんと言うかもう、人間お金があって育ちが良いと、こーゆーふうになってしまうのかと、妙な感銘を受けてしまうのである。きっと取り巻きの誰かが言ったンだろうな「奥様、お上手ですね」などと。その言葉を一切疑わず額面どおりに受け止め、あまつさえレコードまでにしてしまう。おそるべし、F・F・ジェンキンズ女史。

 A-1「魔笛」から「夜の女王のアリア」。これは特にすごい。ジャイアンのリサイタルなんか鎧袖一触だ。下手とか音痴とか、そーゆー次元のお話ではありません。一聴の価値、大いにあり。

 裏名盤として、特薦である。

’10/03/03 (水)

気になる部分


 先日、MC-L1000の取り付けネジを逆向きに挿し替えた折、一点気になるところがあった。コネクターのくすみである。

 アーム端子との接点さえクリーンにしておけば、コネクターそのもののくすみは音に影響しない。それはよく分っている。けれども、ひとたび気になりだすとどうにもいけない。長い間ホッタラカシにしていることもあり、とうとうガマンできずに手を出してしまった。

 例によってお掃除スポンジで磨く。強く擦り過ぎて金メッキがハゲてはいけないから、そこは好い加減に。ご覧の通り、見事ピカピカである。新品にも負けない。ついでにMC-L1000の出力ピンも綿棒でクリーニングして作業完了。

 これで音が劇的に向上する、ナドということはあり得ない。但し、何もしないよりは良いと思う。精神衛生上は大変ヨロシイ。やはりオーディオ機器は、いつも輝いていないと遺憾のである。

 顔が命です。

’10/03/02 (火)

依頼


 いつも何かとお世話になっている方から、とある依頼があった。僕をオーディオマニアと見込んでの、プライベートな依頼である。詳しい内容をここに書くのは、少々グワイが悪いのではないかと思う。イヤ、別に後暗いことを企てているのでは、決してありません。

 預かったのは、いずれも古いLPレコードである。最古のものは(P)1965となっているから、45年も前のレコードになるわけだ。さすがに積年の汚れが目立つ。けれども、盤そのものは傷も少なく、何よりもカビ禍から免れているのは幸いである。

 こういうバヤイに威力を発揮するのは、アレしかない。自作レコパックもどき、である。充分に年季の入った汚れだから、パック1回では足りないだろう。3回くらいやれば、きれいになるかな。

 ヤクザなオーディオマニアも、時には人様の役に立つこともあるのだ。

’10/03/01 (月)

トンネルを抜けて


 3月である。まだまだ寒さの日は終わらないまでも、毎年この月がやってくると長い冬のトンネルを抜けたような気持ちになるのであった。あれこれと気忙しくもあるけれど、それも春の前触れとして楽しむことにしましょう。

 昨年の3月は、前半こそ暖かな日が多かったものの、後半はまったく冬に逆戻り。天候不順で憂鬱な月だった。凡その傾向として、2月が暖かい年は3月がダメになるようだ。先月は、暖かいを通り越し、暑い日が、あったなあ。

 順調に春へ進んで欲しいものである。