箱船航海日誌 2008年06月

日々雑感、出来事などを思いつきに任せて綴っていこう

過去の日誌コンテンツ

’08/06/30 (月)

量産可能


 6月も今日で終りである。先月下旬からレコパックネタばかりで、これでは「航海日誌」でなくて「レコパック日誌」である。だが、僕にとってはそれほどに面白く楽しいネタなのだった。というわけで、今日もまたパック液攪拌の話題である。

 写真は最終工程、エタノールを添加しているところだ。電動ドリル+ビーターの攪拌装置を使い始める前は、混ぜながらエタノールを添加する、という作業がヒジョーに困難だった。

 容器を両足で挟んで固定し、右手で混ぜながら左手でエタノールを加える。まるで何かの修行みたいなふうである。有体に言って、苦しい。

 これが今ではとってもラクチンである。御覧のとおり、ドリルで攪拌させながら注射器に吸い上げたエタノールを少しずつ加えてゆく。スライダックで回転を落としてあるとはいえ、手作業とは比べものにならない高速攪拌だから、実にグワイ良く混ざるのである。

 全体として見ると、作業効率500%アップ、という感じである。容器容積の関係で、1回に作れる量は400ml程度だが、その気になればさらなる量産は可能だと思う。

 そんなに作ってどーするンでしょーか。

’08/06/28 (土)

今週末も

 先週に続き、今週末も異様な多忙さになってしまった。突然の出来事にも迅速対応するのが、僕のオツトメなのである。忙しかろうが何だろうが、誠実丁寧でなければならない。

 忙しい、ナドと言えるのは、心身ともに健康であればこそ。がんばりましょう。

’08/06/27 (金)

スライダック


 手持ちのドリルはマキタ製、もう20年くらい前に買ったものである。ボディはプラスチック製で、おそらくアマチュア日曜大工向けのものだと思う。定格は「100V / 230W、2.5A / 2,100rpm」と表記されている。

 問題は回転数である。毎分2,100回転。レコパックもどきをかき混ぜるには速すぎてグワイが悪い。たぶん、液があちこちに飛び散ってエラいことになるだろう。何とか減速する方法を考えねば。

 そこで、知識豊富な友達の智慧を拝借。スライダックを使えばよい、との教えあり。実は以前、僕はこの友達からスライダックをもらっていたのである。ハンダゴテの温度調整にチョコッと使う程度だったが、なるほどこういうところにも使えるわけだ。

 早速、AC100V−ドリル間にスライダックを挿んでみる。スライダックのダイヤルを「0」に合せておいて、ドリルのスイッチはONにする。ダイヤルをじわっと右に廻せば、ドリルがゆっくりと回転し始める。当たり前のことだが面白い。

 実際に攪拌させながら回転を調整してみると、スライダックの目盛33Vくらいのところでちょうど好い加減になる感じである。電圧を落としてあるから消費電力も大幅に低下し、ドリルにとって苦しい連続使用も楽々だ。

 これはヒジョーにグワイが好い。全工程にこの「攪拌装置」を使ってみれば、何ともラクチンにレコパックもどきが完成してしまうのである。右腕キンニクに乳酸が溜まることもないのだ。しかも、手作業攪拌にありがちなムラもダマもなく、完璧に近い混合が実現できる。一度使ったらヤメラレマセン。

 やってもやっても面白い、レコパックもどき作りである。

’08/06/26 (木)

最早趣味


 PVA洗濯糊と増粘剤CMCをよりよく混合攪拌するに、新兵器登場。と言うほどオオゲサなものではない。タダの電動ドリルである。

 ドリルビットの代わりに、ハンドミキサー用の攪拌棒(ビーター、と呼ぶそうだ)を取り付け、ドリルスタンドに固定してある。コイツで一気呵成にカキマゼてやろうという魂胆である。

 手作業でグルグルやるのは如何にも「自分で作っている」という感じがして、決して嫌いではない。けれども、今後も継続して生産する、或いは大量に生産しようとした時、手作業では苦しいことも事実である。加えて、ダマの少ない良好な攪拌を望むなら、キカイに頼らざるを得ない部分もある。

 次々と新しいネタが出てくるレコパックもどき実験は、楽しくて仕方ないのである。レコードをクリーニングするのが本来の目的であって、パック液を作ることはその手段に過ぎない。にもかかわらず、作ること自体を楽しんでいる。「手段が目的化することを趣味と言う」のであってみれば、レコパックもどき作りも、最早立派な「趣味」なのである。

 病膏肓に入る。

’08/06/25 (水)

苦い

 所轄消防署から「消防計画書を提出せよ」と連絡、否、行政指導があった。昔、先住職が届け出たはずなのだがどうなっているのか。訊けば色々と事情があるらしい。それなれば確かに承りましたと、言っておいた。

 承ったならばその「消防計画書」なるものを作成せねばならない。僕が勝手に「火がついたら消します。オワリ」と書いて出せば済む、ワケはないのであって、何やらイカメシイ書式雛形が、所轄消防署のwebページに置いてあるのだった。

 「第1条 この計画は、○○の防火管理業務について必要な事項を定め、火災等の災害の予防及び人命安全確保ならびに被害の防止を図ることを目的とする」

 冒頭からイキナリこの調子である。この手の書類に記述される文章は、どうしてこうも諄々しく冗長なのだろうか。ワザと分かりにくく作ってあるとしか思えない。「火災等の災害の予防及び人命安全確保ならびに被害の防止を図る」ってアンタ、こんなもん「災害の予防と人命の安全を図る」でいいンじゃないか。タイトルに「消防計画書」とあるのだから「火災等の」は要らんだろう。

 このあともクドクドクドクドと第11条まで条文が続く。さほどに長くない全条文中、「及び」「ならびに」「また」という接続詞が30回近く、「等」の副助詞が20回以上使われる。ヒジョーに読み難く、理解し難い。イライラする。しかも提出後は検閲が入り、些細な誤りも許されない。ああ、イヤダイヤダ。

 バチ当りなことを言っては遺憾。これは一種のお守りなのである。法令に従ってきちんと備えをしておけば、災いは起こらないのだ。と信じて昨日提出したら、今日早速「グワイの悪いところがあるから訂正して提出し直せ」と指導があった。

 なかなかに、苦い。

’08/06/24 (火)

中毒


 先週末から今週明けにかけては、オツトメやら事務処理やらで異様に多忙であった。特に昨日は、ムシ暑さも手伝ってクタクタになってしまったのである。夏は好きだが梅雨時はキライだ。

 そーゆー状況の中でも嬉しいことはあるものだ。僕にとって特別な存在の、ヒジョーに貴重なレコードが見つかったのである。

 貴重、と言っても拙webページ上では、珍しいものとは言えない。おそらく3回目の登場になるはずだからである。

 「The Power and The Glory Volume 1」(米M&K REALTIME RT-114)である。2006年7月以来、1年11ヶ月ぶりに海外レコードショップで発見した。今回も前回と同様、未開封新盤だが、総合的な状態は前回のものを上回っている。

 価格は、前回の1.5倍と少々高い。が、このレーベルのLPは昨今高騰気味で、それからすると状態が良くなっての1.5倍は致し方なし、とも言える。いずれにしても僕は大喜びなのである。

 演奏、曲、録音、すべて文句なし。特にB-2「The Bells of St.Anne de Beaupre」は、やはり最高である。Vol.2(RT-113)とあわせて、最高最良のオルガン録音だと思う。あくまでも、僕の個人的な感じ方なのだが。

 見つけた限り、必ず買ってしまいそう。完全に中毒である。

’08/06/21 (土)

発掘


 初めてレコパックを買ったのは、おそらく1986年の初夏、ちょうど今と同じ梅雨時だったと思う。当時はCDがオーディオ界にデビューして4年弱、まだまだADの勢力が強く、レコードクリーナーは多種多様のタイプが打ち揃っていた。そのような状況の中で、何故にレコパックを選んだのか、自分で買っておきながら明確な記憶がない。

 ナガオカ(当時はJEWELTONEブランド)から、レコード支持台2、アプリケーター1、レコパック480ml1本をセットにして3,300円で販売されていた。製品番号はDC-203J。

 写真はセット中の支持台である。今もちゃんと2台揃っている。ように見えて実は、奥に写っている1台は、丹後へ引っ越してきて以来今日まで約20年間、行方不明であった。

 確かもう1台あったはず、と思いながら、幾度か探索するも見つからなかったのである。1台あればまあいいかと、半ば諦めていたわけだ。しかし、このところの頻繁な実験に伴って、どうしても2台目が欲しくなったのである。

 ヨシ、もう一度探すぞと、気合を入れて蔵へ突進した。そうすると不思議なもので、拍子抜けするほど簡単に発見できてしまったのである。おかしいなあ、同じところを何度も探したはずなのに。きっとこれは、レコパックもどき実験をバックアップしてくれている方々の、ありがたいお導きなのだ。僕はとても嬉しくなってしまった。

 手前の台は、永の使用により手垢が付いて黄ばんでいる。20年間お蔵入りしていたほうは、タイムカプセル封入よろしく真っ白である。こうなると「発見」ではなく、「発掘」と言ったほうが良いような気がしてくるのだった。

 実験に、ますます弾みが付くのである。

’08/06/20 (金)

エージング必要


 昨日作ったレコパックもどきである。攪拌終了後、1時間くらい経ったところ。気泡はまだ残っているけれども、1時間でもこれくらいは抜けるのである。

 出来上がりをすぐに使っても、特に問題はない。しかし、これまでの感じからすると、一晩二晩おいてからのほうが、良いような気がしている。パック液がより滑らかに、なるのである。

 何故だか分からない。完成直後でも見た目にムラがあるわけでなく、ダマになっているわけでもない。盤への展開もスムーズである。しかし、何となくチガウのだ。出来たばかりのパック液には、落ち着きがないように感じられるのだった。

 これも一種のエージングなのだろうと思う。一見よく混ざっているようでも、顕微鏡レベルで観察すれば、液中はバラバラした状態なのかもしれない。時間をおくことでそれぞれの成分が馴染み、一体化して滑らかになるのだろうか、などと想像してみたりもする。

 レコパックもどきにも、熟成が必要、と。

’08/06/19 (木)

継続は力なり


 レコパックもどきの出来不出来は、最初の工程にかかっている。PVA洗濯糊に増粘剤CMC(カルボキシメチルセルロース)粉末を混合する段階である。

 何度も調合を重ねるうち、CMCを小分けにして混ぜる必要はないと分かってきた。例えば100mlのパック液を作ろうとするとき、30mlの洗濯糊に0.5gのCMCを全量投入しても構わない。ただし、そのあとの攪拌の仕方が重要である。

 ただひたすら混ぜる。だんだん泡が立ってきて葛湯状を通り過ぎ、写真のようなホイップクリーム状になるまで、混ぜる。時間にして凡そ30分以上。僕は右利きだから、右腕キンニクに乳酸が溜まってダルくなる。それでもまだ混ぜる。これが肝心。

 洗濯糊+CMC実質よりも泡のほうが多いかと思われるほど、盛大な泡立ち状態である。心配は無用。このあとアラビックなりアトフィスグルーなりを加え、さらに無水エタノールを加えて混ぜるうち、適度に粘度が下がって一晩静置すれば、気泡はきれいに抜けるのである。

 こうして出来たパック液は、透明度が高くキメが細かく、とても美しい。ドシロウトがいい加減な道具だけで作ったものとしては立派なモンだと思う。もちろん、レコードクリーナーとしての効果も上々である。

 馬鹿なことをしつこくやっているようだが、しつこくやらねばワカランこともあるのだ。これまた「継続は力なり」という言葉の真理を、思い知るのである。

 完成型まで、もう一息か。

’08/06/16 (月)

長寿命

 先月下旬から、ずーっとレコパックもどきの話題に終始している。レコード掃除の実験ばかりやっていて、肝心の音を聴くほうはどーなっとるのか。

 実は、普段よりもよほどよく聴いているのである。レコパックもどきのクリーニング効果を確かめねばならないからだ。しかも、これまではパック液惜しさのあまり、クリーニングを後回しにしてきた汚れのひどいレコードばかりを聴くわけである。

 やってみるとこれはなかなか面白い。あまりにもひどい汚れで、まともな再生は無理だろうと思っていたものが見事に蘇ったり、どーせ大した音ではないからクリーニングはもういいや、と打っ遣っていたレコードが案外良かったり。この実験がなければ、すべてラックの飾りに成り下がっていたはずのレコードである。大した知識もないクセにエラソウなことを言っては遺憾と、我が身の矮小さを恥じるのだった。

 もう一つ、感じ入ったことがある。LPレコードの寿命の永さである。50年近く前にプレスされた盤でも、丁寧にクリーニングすれば極めて良い状態にまで復活するものがあるという事実。ほとんど新盤同様である。レコードは聴き過ぎると擦り減る、のは確かだろうケレドモ、本当に擦り減って聴けなくなる前に、自分の寿命のほうが擦り切れてしまうだろう。

 きちんとメンテナンスを行えば、LPレコードは一生聴ける。今回の実験で、改めて思い知ったのである。これもレコパックもどきのおかげさま、延いては、知識浅薄な僕に多くの教示を下さった方の、おかげさまである。

 深く、心から感謝したい。

’08/06/15 (日)

第一義は「安全」

 アトフィスグルーを基材としたレコパックもどきの実験結果は、大いに満足できるものであった。膜の剥離には何ら問題はなく、強度充分である。乾燥して剥離可能になるまでの時間も変わった感じはない。

 肝心のクリーニング効果も、アラビックヤマト基材に比較してまったく遜色はない。例によって汚れの多い中古盤を対象にして実験したわけだが、実に綺麗になった。今回の実験も、大成功である。

 どの程度コストダウンできたか、計算してみる。アラビック基材1mlあたりのコストは、1.8895円だった。今回のものは、PVA糊だけでなく無水エタノールも僅かながら安いものが使えて、1.3878円/ml。26.55%のコスト低減が実現できたわけだ。優秀な数字だと思う。

 ナガオカオリジナルレコパックから見ると、64.75%OFFである。480mlボトルとして考えると666円くらいで買えることになって、ここまで安くできれば自作の手間も報われると言うものだ。

 残るコストダウンの可能性は、問題のアルコール部分である。僕としては、ここまでコストを抑えることができたのならば、不用意な事故の危険性を避けるためにも今後も無水エタノールを使いたいと考える。少なくともこのwebページをお読みいただいて追試実験される場合、無水エタノール以外の溶剤使用は絶対厳禁、とする。

 どうしてもそれ以外の溶剤を使って安く上げたいと仰るムキは、あくまでも自己責任でお願いしたいのである。僕は「闇雲に安ければ良い」との考えは、一切持たない。「箱船の客室」における、slagさんのご投稿にあるとおりである。

 最上第一義は「安全」である。「安さ」は二の次、三の次。

’08/06/14 (土)

匂いはギューニューセッケン


 アトフィスグルー基材のレコパックもどきを調合してみた。アラビックを使ったバヤイとまったく同様、アトフィスグルー3:洗濯糊3:無水エタノール4+CMC0.5%添加、という割合である。

 色、質感、粘度とも、ほとんど変わらないものが出来上がった。ほんの僅か色が薄い程度で、俄かには見分けがつかない。ただ、ニオイが違う。アラビックは化粧品のような匂い、アトフィスグルーは昔のギューニューセッケン様の、仄かな香りである。若え衆にはピンと来ないか知らん。個人的には後者のほうが好きである。匂いなんかどーでもよろしい。

 只今展開乾燥中。アプリケーターとの相性は抜群で、極めて快適均等に展開できた。粘度のグワイがヒジョーに良いのである。あとは剥離、だが、この感じならおそらく問題はないと思う。

 ハイCPレコパック、実現か。オオゲサなのである。

’08/06/13 (金)

65%OFF


 飽きもせず、レコパックもどきの実験を続けている。

 アルコールのコストダウンはひとまず置き、アラビック糊に代わる安価なPVA糊を入手した。「フエキ アトフィスグルー」という。1パック650ml入りで420円。アラビックヤマトが400ml/730円だったから、これはもう圧倒的に安いのである。アラビック1.825円/ml、フエキは0.646円/mlとなって、価格だけ見れば勝負あった感じ。65%OFFである。

 「CP」の「C」のほうは確実に低く抑えることができた。これと一緒に「P」まで低くなってしまったら、まったくの無意味である。アラビックでのパフォーマンスを維持するか、或いは超えることができればハイCP達成、となるわけだが。

 早速にもアトフィスグルーレコパックもどきを、調合してみよう。

’08/06/11 (水)

メタノール厳禁

 「箱船の客室」へ、メタノール(メチルアルコール)についてのご投稿をいただいている。

 うなぎさんのご投稿は、レコパックもどきのコストダウンに腐心する僕の様子をお察しになってのことだと思う。ご好意は大変ありがたくお受けしたい。仰るとおり、メタノールはエタノールに比べてぐんと安価である。工業製品の溶剤として使うには好適なのだが。

 しかし、アルコール類の中では最も危険なタイプであることも事実。それはslagさんからのご投稿に詳しく述べられている通りである。slagさん、貴重な御警鐘、ありがとうございます。

 9日の日誌に「命にかかわるような非常に危険なアルコールもある」と書いた。僕としてはメタノール(或いはそれを含む変性アルコール類)を指したつもりである。誤解、誤用を避けるため、意識的に具体的な名称を出さなかったのだが、却ってグワイが悪かったと、今猛省している。僕の配慮不足である。申しわけございません。

 メタノールは、slagさんが仰るとおり、極めて危険なアルコールである。もし、レコパックもどき実験をされるとしても、これを溶剤に使用することは絶対にお止めいただきたい。変性アルコール類の中には、メタノールを数%混合したものもある。これも同様に、避けたほうが賢明である。

 うなぎさん、slagさん、ご投稿ありがとうございました。今後、危険物の記述については、でき得る限り控えるか、細心の注意を払った記述を心がけるようにしたいと考えております。

 重ねて申し上げたい。メタノールは、使用厳禁です。

’08/06/10 (火)

酒と同類


 コストダウンの取っ掛かりとして、少しでも安い無水エタノールを求めて近在の薬局を一周してみた。

 個人経営の薬局では、全店500ml/1,575円(税込)、どこで買っても変わらない。最安値は、中国地方から北近畿に展開する某チェーン・ドラッグストアで、500ml/1,390円(税込)だった。それが上の写真。約12%OFFである。

 わずかでも安いのはケッコウなことである。しかし、今後継続してレコパックもどきを生産するのならば、このようなモノを買っていてはCPが低くて困る。やはりここは、飲用不可、しかもLPに害のないアルコールに切り替えねば遺憾と思う。

 モノの無かった戦後じゃあるまいし、今どき医療用エタノールを飲んで喜ぶような御仁はいないのだから、酒税なんぞかけんでも良さそうなものだ。と、思うのはシロウトの浅はかさ。医療用エタノールと、酒に添加される醸造用アルコールは、基本的に同じものなのである。

 人体に使用→飲用可→酒と同類→課税対象品。つまりは人体無害(過ぎればもちろん有害)のアルコール、というワケで、安全にお金を払っていると思えば安いもの、と考えられなくもないのだが。

 レコパックもどき作りは、いろいろと勉強になるのだった。

’08/06/09 (月)

コストダウンを目指して

 いろいろと繁忙であったり、日が暮れてからの踏ん張りが利かなくなっていたりで、毎日の更新が滞っている。いずれにしても、言いわけに過ぎないのだが。

 実験を続けてきたレコパックもどきは、アラビック3:洗濯糊3:エタノール4+CMC0.5%バージョンで一応の結論を見そうな気配である。すでに複数枚のLPにテストし終わっていて、いずれの結果も極めて良好である。ヒジョーに良いものが出来上がり、友達には感謝するばかりだ。ありがとうございます。

 次なる目標は、クオリティを落とさず如何にしてコストダウンするか、である。ナガオカオリジナルレコパックが3.9375円/ml、上記割合レコパックもどきを材料費から計算すると、1.8895円/ml。両者とも税込である。現状でもオリジナルの半分以下のコストで済んでいる。しかし、さらに安価にできれば言うことはないし、実際その余地は充分にあるのだ。

 数あるPVA糊の中で、どーゆーわけかアラビックヤマトは高価なのだ。これは別ブランド品を使えば安く上げることもできる。尤も、粘度、組成に違いがあるだろうから、追試は必至になる。最大のコストダウンを見込めるのは、無水エタノールである。

 全コスト中66%強をこれが占めているのである。僕が薬局で買っている無水エタノールは、500mlで税込1,575円。非常に高価である。これは酒税が課せられている所為だ。

 これを無課税タイプ、要するに飲用不可のアルコールで代用できれば、1/2くらいのコストに抑えることが可能である。そうなれば1.3円/ml程度にまでコストダウンできるわけだ。ただしこれも追試の要があるし、命にかかわるような非常に危険なアルコールもあるから、僕のようなドシロウトは迂闊に手を出してはいけないのである。

 知識豊かで洞察力に優れた友達の教えを受けながら、理想的には1円/mlの低コストを実現したい。とは言え、昨今狂気的高騰を続ける石油をしてもなお、遥かに高価なのである。

 オーディオは、お金がかかります。

’08/06/07 (土)

使用前、使用後


 3日の日誌に「使用結果はまた明日」などと書いておきながら、更新が大幅に遅れてしまった。申しわけございません。

 さて、CMCを添加したレコパックもどきの使用実験結果である。結論から先に言うと、極めて良好である。

 これまでで最高の出来だと思う。粘りグワイが絶妙なのである。アプリケーターから盤面へ排出されるスピードは最適、速すぎず遅すぎず、非常にグワイが良い。実に上手く均等に展開することができる。その結果、パック液のロスも大幅に減り、ランニングコストも低くなる。ひょっとしたら、使用感はオリジナルを上回っているかもしれない。

 CMC無添加のパック液に比べ、乾燥時間も短くなるようだ。乾燥後に形成される膜は極めて強靭で、剥離時の危機感は皆無である。

 実施前、実施後の写真を上に示す。左が実施前、右が実施後である。写真ではわかりにくいが、このレコードの汚れ方は尋常ではなかった。白く細かな埃が盤面全体にびっしりくっ付いている。乾式ダスパーで除去するのもオソロシイような汚れである。いったいどーやったらこんなに酷く汚れるンだろう。

 その埃が、1回のパック実施で見事に一掃されたのだった。実施後すぐに聴いてみたところ、針先に汚れが付くことはなかったから、音溝の奥まで綺麗になっているようだ。クリーニング効果も上々である。

 レコパックもどき実験の、決定版となるや否や。

’08/06/03 (火)

調合


 増粘剤カルボキシメチルセルロース(以下、CMC)は、水溶性である。水によく溶けるわけだ。しかし、エタノールにはまったく溶けない。レコパックもどきに添加するバヤイ、最初にエタノールと混ぜてしまうと分散するばかりでちっとも溶けないのである。

 では、アラビック(水性である)に混ぜてからエタノールを加えればよい、のだが、これはこれでグワイの悪さあり。CMCは増粘剤だから、元々粘度が高めのアラビックは、忽ちコテコテになってしまって均等に攪拌できず、酷いダマダマになってしまうのである。

 それなれば素直に、CMCを水で溶いて添加すべし。尤もである。けれどもそれでは折角の基材であるPVA濃度が下がってしまって面白くない。ナントカならんか。

 そこで登場、一番最初の実験で使った、永久ノール。PVA洗濯糊である。これなら水分の割合が高く、CMCを溶かすのに向いている。しかもPVAを含んでいるから、ロスが少なくて済むわけだ。

 友達から教えてもらった組成は「アラビック3:洗濯糊3:エタノール4」という割合。これに0.5%のCMCを添加する。例えばレコパックもどきを100ml作る場合なら、アラビック30ml+洗濯糊30ml+エタノール40ml。CMCの添加量0.5g、となる。これは友達による幾度かの試行の結果、導き出された数字である。例によって僕は、教えてもらっただけ。申しわけないのである。

 僕は生来ガサツにできていて、繊細微妙な作業がニガテである。ので、オリジナルレコパックボトル約1本分、450ml作ることにした。尤も、これとて友達の実験結果が良好であったと知らされているからこそ、できることなのである。

 先ずは洗濯糊を135ml、軽量カップで量り取り、そこへCMC粉末2.25gを混入攪拌する。僕は馬鹿だから、CMC全量を一気に入れてしまって、ダマダマになりかけていささか慌てた。ヒッシのパッチ(古いね、どうも)で掻き混ぜて事なきを得たが、攪拌しながら少しずつ加えて行くのが、頭の良いやり方だと思う。

 この段階で、CMCの増粘効果を思い知らされる。シャブシャブだった洗濯糊が、あっという間に濃いめ(固め)の葛湯みたいになってくる。こりゃ面白い。

 面白がってばかりも居られない。CMCが溶け切ったらば、そこへアラビックを同量、135ml加えて再び攪拌する。これは比較的素直に混ざってくれるから助かった。

 最後にエタノール180mlを、これは少しずつ分けて加えながら攪拌する。加えた一瞬、液の表面が白濁するが、よくマゼマゼすれば消える。加えては混ぜ、加えては混ぜ、エタノール全量を加え切ったあとも、しばらく攪拌を続ける。

 完成直後の液中には、盛大に気泡が生じている。これを抜くため一晩静置して出来上がったものが、上の写真である。半分くらいボトルに移したところを撮った。アラビック6:エタノール4で作ったものより、明らかに粘度が高い。粘度だけでなく、よりキメ細やかで滑らか、透明度が高い質感に見えるのはなぜだろうか。これもCMCの効果なのかしら。

 調合段階のセツメイが長くなってしまった。使用結果は、また明日。

’08/06/02 (月)

カルボキシメチルセルロース


 次段階レコパック実験に具する添加物とは「カルボキシメチルセルロース」という物質である。写真に見える「CMC」と表記された、純白粉末がそれだ。ヤバいコナではありません。これは一体如何なるブツであるのか。

 食品、医薬品などに、増粘剤として使われるものである。例えばアイスクリームや歯磨きペースト、点眼薬に添加される。水溶性で、温水だけでなく冷水にもよく溶けるから、非常に使い易いわけだ。増粘効果は極めて高く、数%の添加で充分な効果が得られる。もちろん人体無害である。

 などとエラそうに物知り顔で書いているけれども、無学な僕が「CMC」なるものの存在を知るわけはなく、況してや今回の実験に使うなどという発想ができるわけもない。すべて知識豊かな知人から教示があったことの受け売りである。その上こうして実物を送ってくださって、僕はもう感謝申し上げるよりないのだった。ありがとうございます。

 さて、コイツを、オリジナルレコパックに比べてややユルめになっているアラビックヤマト60%:エタノール40%のレコパックもどきに添加し、エタノール濃度を下げずに粘度を上げようという目論見である。しかしながら、ササッとふりかけ混ぜれば出来上がり、というほど簡単ではない。少々の工夫が、要るのである。

 明日は、その実験結果を報告したい。

’08/06/01 (日)

月が替わっても


 6月である。2008年も半分が過ぎようとしているわけで、どーしてこう年々時が過ぎるのが速くなるのだろうかと、不思議で仕方ないのだった。ノウミソのハタラキが悪くなっているンだな。

 月が替わってもやることは変わらない。今月も引き続き、レコパックネタで始まるのである。何故にここまでかかずらわるのか。レコパックが最も優れたレコードクリーニング法だと、考えるからである。

 写真は、友達からの紹介によりネットオークションで入手したポケットディジタル天秤である。0.01g〜100gまで秤量可能で1,980円。「DIAMOND MODEL A04」とあって、取説は英文のみである。箱にも本体にも製造国表記なし。正体不明である。ちゃんと使えれば問題なし。

 精度はどれくらいのものかと、できるだけ傷の少ない1円玉を2枚載せてみたら、ご覧の通りの数値表示である。何度か量ってみたところ、1.98g〜2.00gの間に収まった。値段からしてまずまずの精度ではないかと思う。同じく0.01g単位で量れるオーディオ用針圧計、ウインズALM-01が4万円くらいすることを思えば、恐るべきハイCPと言えるだろう。

 この秤、何に使うべく購入したのかと言えば、レコパック実験用である。アラビックヤマト+無水エタノール40%パックにある添加物を加え、粘度調整しようとしている。その添加物を、正確微量に量り取る必要があり、これを購入したわけだ。これも友達のおかげさま。ありがとうございます。

 添加物は現在到着待ちである。実験後、改めて報告したい。