箱船航海日誌 2006年12月
日々雑感、出来事などを思いつきに任せて綴っていこう
回顧と御礼
2006年大晦日である。この日を迎えて感じることは毎年同じ。光陰矢の如し、あれよあれよという間に365日が過ぎてしまった。ともかくは、大過なく無事この年を終えられることに感謝したい。 恒例により2006年をふりかえってみる。 オーディオは、何と言ってもスーパーネッシーMkIIの導入、これに尽きるだろう。4月に山越木工房さんの箱船ご来訪があり、それまでもう一息軌道に乗り切れなかった計画が、一気に勢いづいたのである。重要な案件は、やはり顔と目を見て話さなければ遺憾。webは確かに便利だけれども、最後は実際に会って会話することが、極めて重要になってくるのである。 計画開始から数えて3年半。グズな僕に匙を投げずお付き合いいただき、素晴らしいシステムを具現化してくださった山越木工房さんには、心からの感謝を申し上げねばならない。おかげさまでございます。ありがとうございました。 友達、知人から、多くの支援を受けた年でもあった。これはオーディオの上のできごとに止まらず、業務上でも強力にバックアップしてくださる方がいつも近くにあった。得難いご縁に恵まれたことを、これまた深く感謝したい。僕独りでは、何もできないのである。本当に、在り難いことだと、思う。 専らAD偏重ではあったが、ソフトもそれなりに充実できたと思う。CD、SACDはあまり増やせず、DVDに至ってはほとんど買っていない。「音」というファクターを最優先に考える時、AD偏重になるのは止むを得ないのである。箱船の環境では、現状どうやってもCD、SACDはADに勝れない。スーパーネッシーMkIIの導入で、その傾向に拍車がかかったようにも感じられる。この調子では、2007年もAD偏重から脱却できないだろう。なに、それでいいのだ。好きなものを聴けばヨロシイ。 webページ運営状況は、今年も皆さんのおかげさまを以って順調であった。この1年のアクセス数は、昨年と同様220,000件を超えた。駄文拙文ながら、お読みいただく方々がいてくださればこそ、毎日書けるのである。閲覧数が励みになっていることは確かで、今年は航海日誌初の365日無休皆勤(多少のゴマカシはあった)を達成できた。不精で懈怠、すぐに諦めて粘りのない僕としては快挙である。御礼申し上げたい。この1年、たくさんのご閲覧をいただき、ありがとうございました。 2007年に向かっては、もちろんスーパーネッシーMkIIを鳴らし込んで行くことと、できれば周辺環境も整えたいと考えている。エンクロジャー製作は、最高の形で完遂された。それで終り、ではないのである。ここからが本当の意味でのスタートである。ソフトのさらなる充実を図ることも重要視しながら、総合的な向上を目指し、オーディオを存分に愉しみたいと、考えるのであった。2007年もまた、よろしくのご愛顧を、伏してお願い申し上げるのである。 よいお正月を、お迎えください。 |
優れたソフトウェア
今日も終日正月準備に追われる。オーディオする時間はまったく取れない。気持ちはスーパーネッシーMkIIへなびきまくっているのだが、さすがにこの時期は無理である。日誌を書き終わってから、少しだけでも聴いておきたいと思う。 12月後半の日誌は、専ら新しいスピーカーシステムの話題に終始してしまった。ほぼ10年ぶりの主役交代、永らく箱船の顔となってきたスーパーネッシーを更新したわけだから、そうなるのも致し方なしなのである。 スピーカーに呆けてばかりいて、あとは何の変化もなかったかと言うとそうでもない。相変わらずADはせっせと買い込んでいる。十数年探し続け、やっと手に入ったうれしいレコードもあった。上の写真はそのうちの1枚である。 「OMNIDISC」(米TELARC DG-10073/74)。(C)(P)1982。テラークレーベルが1982年にリリースした、デモ/テストレコードである。長岡先生の外盤A級セレクション第1集100番に紹介されているから、それなりに知名度の高いレコードではないかと思う。 僕の周囲にはこれを持っている人が多くいる。ので、借りて聴いたり、DATに落としてくれた友達もいたりして、内容はよく知っていた。それだけに余計に欲しかったわけである。しかしこれまで入手叶わなかった。寸前のところで取り逃がしたことも1回2回ではきかない。 このレコードには縁がないのかと半ば諦めていたら、先日(スーパーネッシーMkII乗船の前日)、webショップでヒョイと見つかり、入手できてしまった。願いが叶う時はこんなものである。これも何かのお導きか。ありがたいことである。 スーパーネッシーMkIIの設置調整が完了後、早速聴いてみた。こりゃアいいレコードだ。先生の評にある通り、本当に凄いところはあっという間に終わってしまうけれども、それ聴くだけでも充分に価値はある。僕は、大喜び。 如何に優れたスピーカーシステムを得ようとも、その能力を十全に引き出すには優秀なソフトウェアが不可欠である。ハードの大転換は実現できたから、来年はまたソフト(特にAD)の充実に努めるべし。 何よりも僕自身が、優れたソフトにならねば遺憾のである。 |
スーパーネッシーMkIIとAD
2006年もあと2日で終わろうという今日は、さすがに慌しくてオーディオするヒマがない。スーパーネッシーMkIIも、無人の箱船でソヨソヨと鳴っているのみである。ようやく落ち着けたのはついさっき、すっかり日付が変わってからである。まあこれも毎年のことで、健康に働けることを感謝すべきことなのである。 昨日、少しく時間のあるうちに、幾枚かのADをまとめて聴いた。スピーカーが変っても、ADの良さに何ら変化はない。それどころか、CDを聴いていて感じたスーパーネッシーMkIIの良い部分が拡大されて聴こえ、いささかならず驚いてしまったのだった。 端的に言えば、CDよりもADのほうが向上幅が大きく聴こえるのである。これは、ネッシーMkIIからスーパーネッシーに替えた時には起らなかったできごとである。どちらもそれなりに良くなった、という印象だった。 今回は違う。もちろんCDも向上しているのは確か、しかしADの伸び幅が異様に大きいのである。CDに比べて情報量が桁違い、レンジはやたらと広く再現される音場は渺々として限りがなく極めてリアル。切れ込み鋭く、しかも繊細で豪快痛快、スーパーネッシー時代に比較するとスケール感が一桁も二桁も大きくなる。 これは一体どうしたことだろう。未だ及ばざるADの伸び代が、思いのほか大きかったと見るべきか。或いはCDの使いこなしに未熟な部分が多く残されていると見るべきか。おそらくその両方だろうと思う。いずれにしても、僕は今さらながらにADの潜在能力、底力の大きさに驚くと同時に、大いに感激するのだった。 こうなってくると、どんどん面白くなってしまって遺憾。ますますADに力が入るのである。そうすると、CDとの差がなおさらに開き、いよいよ以ってAD偏重システムへと傾いて行くのである。2007年は、スーパーネッシーMkIIとADで、これまで以上に楽しいオーディオが実現できそうだ。 進化してるンだか、退化してるンだか、さっぱりワカリマセン。 |
技術とは
今日、山越木工房さんからスーパーネッシーMkIIの着工から完成までを記録した写真が届いた。全74枚が、1枚のCD-Rに焼かれている。ありがとうございました。 次第に完成へ近づいて行く過程をつぶさに記録してあり、1枚1枚非常に興味深く拝見した。web上に公開されているものよりもサイズが大きく、細かな部分まで鮮明に見ることができるのはとても嬉しいのである。 上の写真はそのうちの1枚である。web上でも公開済みのものだ。僕はこの写真に山越木工房さんの抜きん出た技術、厳格な製品管理、加えてオリジナルバーチ合板の高品位さを見るのである。 部位としては、緩やかにR加工された側板が、前面バッフルと接合されるところである。両側板の先端部分がこのような形に加工され、バッフルを「鼎」の字のように受けるわけである。説明すれば何のことはない、ように思われるこの仕組、しかしアマチュア工作ではほとんど不可能、僕には絶対不可能な加工である。 まず、板の端っこをこんな形に削ることなどできっこないのである。工具があれば何とかなる、というようなレベルではない。百万歩譲ってよしんば削ることができたとして、一般的なラワン合板では鋭角部分を保つことができない。削る先からポロポロ折れてしまうだろう。目が詰み粘りがあり、均質高品位バーチ合板だからこそ可能なのだ。 しかしさすがに気を遣われた様子である。お聞きすれば「この板に近づいてはならん触っては遺憾動かすのは厳禁」と、周囲の人々に強い注意を促された、と。鋭角部分が少しでも欠けた日には、エラいことなのである。アマチュアなら「まあこれくらいはいいか」で終わりだが、強いプロ意識がそれを許さないのである。 昨日の写真をご覧になれば、仕上がりの素晴らしさをお分かりいただけるだろう。側板、バッフル、天板が会する接合部分には一分の隙もなく、恰も突き板で化粧した如くである。見事と言うほかはない。本物のプロの仕業とは、こういうことを言うのである。 一切ゴマカシのない工作が、スーパーネッシーMkIIの全身に行き渡っている。これが音に効かないはずはないのである。事実、日を追うごとに覚醒してゆくその音は、まさに刮目すべきものだ。 「技術とは、人を喜ばせるもの」。山越木工房さんの言葉である。 |
乗船2週間
スーパーネッシーMkII箱船乗船から2週間が経った。鳴らし始めからすると、ずいぶんスムースになったようだ。僕が箱船にいない間も、CDにリピートをかけて鳴らしっぱなしにしている効果もあるのだろう。繊細微妙な質感再現や、瑞々しさなどの点では、まだまだ旧Sネッシーに及ばない。 2週間、多くのソフトを聴いてみて、感じたこと。Dレンジがやたらと広い。情報量が非常に多く、細かな音をよく再生する。エコーや余韻、気配などを細大漏らさず再生し、とてもリアルな音場が再現される。この点では、現状でも完全に旧Sネッシーを凌いでいる。 ユニットが3発になりシステムとしての能率が上がったことと、何と言っても高剛性高精度エンクロージャーに拠るところが大きいようだ。エネルギーロスが少ないのである。硬く丈夫な床と、軟らかく弱い床とに同じ高さからスーパーボールを自由落下させれば、丈夫な床のほうが高く弾む。そんなイメージだ。プロの技が、活きているのである。 低域が伸び、より押し出しが良くなったことも印象的である。単体としてのレンジが広くなったわけだ。これは大きなメリットであり、同時にデメリットでもある。SWの調整が難しくなるのである。 現状、先日も書いたとおりfc70Hz、−36dB/octでつないでいる。いろいろ聴いてみるに、悪くはないが最適値でもない、という印象である。fcとスロープ特性を可能な範囲で変更してもみたが、どうもイマイチである。fcを40Hzくらいまで下げ、その上でスロープをなだらかにできれば面白いと思う。実現するにはそれなりの投資が必要になるから、簡単ではないのである。 今後の鳴らし込みにしたがい、なおさらにメリットデメリットが明確化されてくるだろう。その一つ一つに対応し、最適な対策を打ち、自分の好む音に仕上げて行く。手間とヒマはかかるが、それこそがオーディオという趣味なのである。 堪能しましょう。 |
余り
スピーカーケーブルと言えば、ターミナルが低い位置になったことで、LRともずいぶんと余りが出てしまった。1m以上の余分はあると思う。大は小を兼ねる、で、短すぎてつなげなくなるよりはいいわけだが、音質的には過ぎたるは及ばざるが如し、である。余分はさっさと切り詰めるが良いのだ。 アンプとスピーカーをつなぐケーブルについては諸説あり、短いほうが良いのは当然として、LRの長さは揃えるべきか、長さを違えても両ch必要充分な最短距離でつなぐべきか。アナタはどちらですか。 箱船以前のムカシムカシ、スピーカーに向かって左の壁際にアンプなどを設置していた時期があった。この場合、アンプとスピーカーを最短距離でつなげば、当然Lchケーブルのほうが短くなるわけだ。 当時のオーディオ誌では「ケーブル長がLRで不揃いになるのは良くない」という論調が主流常識で、僕もそれに倣うつなぎかたをしていた。つまり、長いほう(この場合Rch)に合わせて長さを決め、Lchではスピーカーの後ろで余分なケーブルがゴチャゴチャとのたうっていたわけである。 それでも特に音が悪いとは感じず、しばらくはそのままで使っていた。ある時、ふと「不揃いなってもケーブルがゴチャゴチャしているよりは良いンじゃないか」と疑いを持ったのである。そこで早速Lchのケーブルを切り詰めてみたところ、明らかにそのほうが音が良い。なーんだそうだったのかと、それ以来僕は、LR不揃いでも最短距離でつなぐことにしているのである。 箱船では、アンプとスピーカーの位置関係から、大きな差ではないけれどLchのほうが短かくなる。現状でもLRのケーブル長は不揃いである。まったく問題なし。たぶん誰が聴いても「むむっ、ケーブル長が不揃いだっ」と見抜ける人はいないはず。少なくとも僕にはワカリマセン。というわけで、今回もLRの差なんか一切気にせず、必要にして充分な長さにどんどん切り詰めるのである。 これで激変、するワケはない。主に精神衛生上の、問題である。 |
物量投入
これまでのネッシータイプではトゥイータースペースにあったスピーカー端子を、今回は側板下方に移動させた。箱船での設置環境では、このほうが利点が多いからである。加えて1ユニットあたり独立±2端子とし、これは将来の発展に含みを持たせた、つもり。 もう少し音が落ち着いた時には、2ユニットフルレンジ+1ユニットハイカット、というような鳴らし方も実験してみたいと、考えてはいる。SWを一時休止すれば、C-AX10で容易に試せるのである。音のクオリティはともかく、F特的には中域のディップに効果があるかもしれない。 ただ、現状ご覧の通り3ユニット並列で聴いていると、フルレンジはフルレンジで鳴らすが良いに決まっているような気もする。パワーアンプ直結のメリットも大きい。単純バカな僕の性質からして、システムはできる限り簡単なほうが良いのである。 となれば、端子をユニットごとに独立させた意味がない。徒に接点を増やしただけ、完全に企画倒れである。と見えて実は、メリットもあるのだった。 1ユニットあたり1本のスピーカケーブルで、アンプから引いてくることができる。例えば8sq3組でアンプとつなぐわけだ。アンプ側での端末処理がエラいことになりそうだが、太いケーブルが好きな僕としては、是非ともやってみたいことである。 端子の配置を斜め方向にずらしてあるのも、複数の太いケーブルを楽につなぐための対策だ。最初っから、こっちのほうが主だったりして。「将来の発展」にしては、ずいぶんとヤバンで力任せ、なのはオーナーが僕だから仕方ないのである。 物量投入型オーディオは、中途半端がいちばんイケナイ。やるとなったらどこまでも。やってみてダメなら、さっさとヤメりゃいいのである。 イノチに別条はない。 |
時々刻々
箱船で初めて鳴ったスピーカーシステムは、D-55だった。上はその頃の箱船である。'94年の年賀状に使った写真だから、たぶん'93年12月頃に撮ったものだと思う。 丈夫な床と壁を持つ遮音のよい部屋を作れば、本家方舟のような音が簡単に実現できる。などとおめでたいことを考えていた僕にとって、初めて箱船で聴いた音は、有体に言って絶望的であった。周囲の人々に多大なる御迷惑をおかけし、ワガママを通して作った部屋がこの音か。これじゃ完全に失敗ではないか、こりゃあもう首括るしかないなと、本気で思ったほどだった。 ゼツボウの淵から自分を奮い立たせ、あれこれ対策を講じているうちに、どうにか聴ける音になってきたのは半年後くらいだった。その頃、念願のネッシーMkII、SW-5MkII、QS-101の方舟フルセットを自作する。これが本当のスタートだと、期待を持って鳴らしてみたら。 これがまたヒドイ音である。壊れたラヂオみたいな音。再びゼツボウしそうになったが、冷静になってよく聴けば、完成直後に鳴らしたD-55よりは多少なりともまともな音だと気がついた。あれほど悪かったD-55システムでさえ半年で向上があったのだからと、ネッシーMkIIを使い続けること3年。'97年7月にスーパーネッシーへとバトンタッチする。 スーパーネッシーの初音は、例によって「良い音」と言えるものではなかった。何を聴いてもカチカチに硬く、砂を噛んだ如く味も素っ気もない。滅多やたらに荒っぽく、写真に喩えるならひどいハレーションを起し、眩しくて目を開けていられないような音。しかし、前二例に比べればずいぶんと正常な音で鳴ったようにも記憶していて、ひょっとするとネッシーMkIIを凌ぐかもしれないと、明るい展望を見たのも事実である。 それから9年半。今、箱船のスピーカーシステムはスーパーネッシーMkIIになった。D-55、ネッシーMkII、スーパーネッシーに続く4代目である。その初音は、極めて優秀だ。永く聴いてきたスーパーネッシーとの違いにとまどっているところはあるものの、近い将来それを遥かに上回るパフォーマンスを見せることは間違いないと思う。 代を重ねる毎、初音に感じる落胆が小さくなっているのは、何故だろうか。理由はいろいろ考えられる。部屋のエージングが進んでいること。機器のグレードが上がっていること。多少なりとも使いこなしを学習しているらしいこと。自分の好みに合わせた設計ができ始めていること。今回は特例的に作りが良いこと、など。 スピーカーは生き物である。さらに言えば、部屋を含めたオーディオ自体が、生き物である。時々刻々、変化し続けて止むことはない。スーパーネッシーMkIIも、向後大きく音の姿を変えて行くだろう。何とも楽しみなことである。 オーディオを趣味にして良かったと、心から、思う。 |
4666倍
スーパーネッシーMkII1本あたりの総重量は、どれくらいになっているのだろうか。初期設定が決まったところで、計算してみた。 まず、エンクロージャーが140〜150kgということで、これは140kgとしよう。内外リングが3セットで12.9kg、FE-208ESが3本で31.5kg、T-300Aが9.7kg、JA-0506II GMCuが2.3kg、トゥイーター下の砲金板が3.6kg、ナゾの重石袋が4つで8kg。あと、コンデンサー、端子、内部配線などをまとめて2kg程度と計算する。これらすべてを合計すると、210kgと出た。全高3333mm、重さ210kgのシステムとなれば、これはもう怪物だ。さすが「ネッシー」である。 この重量をどう見るべきか。長岡先生は「低域再生ユニット(ウーファーまたはフルレンジ)のm0と、システム総重量との比は、10000倍を目標値とする」としばしば述べておられた。その論からすると、FE-208ESのm0は15g、3本で45gだから、210000/45、重量比は約4666倍となるわけだ。 目標値の1/2にも達しておらず、ずいぶんと低い値、のように見えるわけだが、先生をして「異次元サウンド」と言わしめたBHの名作、D-70でも5000倍(120kg/24g)だった。天板上や開口部、或いはデッドスペースを利用しての重量付加が困難なプロポーションであるネッシータイプのシステムとしては、理想に近い数字と見るべきである。 押し出しの良さ、少ないクセ、広いDレンジを実現した原動力は、工作精度の高さに加えて大重量に拠るところも大きいはず。やはり僕は、大重量高能率システムから発せられる踏ん張りの利いた音が、大好きなのである。 新システムは、ますます快調である。 |
製作工程公開
山越木工房さんからご連絡をいただいた。web上に、スーパーネッシーMkIIの詳しい製作工程を公開されたのである。大喜びで早速拝見してきた。 完成品が今ここにある、とは言うものの、4ヵ月以上に及ぶ全工程を改めて目にすれば、僕は感嘆の声を上げずには居られないのだった。今や外観からは窺えず、しかし図面の上では充分理解していたつもりの内部構造を、実際に形になったものを見るのは初めてである。己が製作依頼しておきながら、よくぞこんなモノをお作り下さったと、今さらながらに感謝するのである。ありがとうございました。 上の写真は、山越木工房さんからお借りしたものである。底板が取り付けられる前、底から上方を見るものだ。第一パイプから第二パイプへの折り返し点、背板側には山越木工房さん必殺技、R加工された板が入っている。アマチュアにはほとんど不可能な構造である。 その他にも、随所で微に入り細を穿つ工夫が施されていて、できることならスーパーネッシーMkIIの腹を割ってその実際をお見せしたいくらいだ。メーカーが市販するスピーカーシステムなら、カットモデルを公開するところ、だが、今のところ(たぶんこれからも)1ペアしか存在しないシステムだから、カットするわけには行かないのである。残念。 これほどまでに丁寧に、精度高く作られたエンクロージャーが悪いわけはないのである。ヘンテコな音が出たとするならば、それは基本設計の拙さ、使いこなしの下手さ、ということに、なるわけだ。幸い、基本設計に大きな瑕疵はないようで、そこは安心している。あとは僕のウデひとつ、だが、それが最もの問題だったりするのだった。 現状、完全覚醒にはまだまだのようである。既にスーパーネッシーを凌ぐパフォーマンスを示し始めているものの、音が生硬く抜けがイマイチと感じるところも多い。エンクロジャーを構成する各部材が、未だ単なる「バーチの板」のままで、「スピーカーの板」になり切っていないのである。おっかなびっくりで鳴っているのだ。 板が練れてきた時、どんな音に仕上るのか。実に楽しみなシステムである。 |
新規システム、本日出航
ハイについては、昨日までのセッティングでしばらく様子を見ることにする。3個のFE-208ESのうち1個(2番ユニット)は新品だし、T-300Aに使った2個のコンデンサー(1.0μF/630V)も新品、それなりにエージングでの変化があるはず。何よりも、エンクロージャーのエージング効果は大きいだろう。半年程度を目途に、再調整する必要があると思う。 お次はサブウーファーである。3発になって、単体でのローが伸びた。これはF特にも顕著に現れているし、聴感上ではF特以上に違いが大きい。押し出しが良く、極めてパワフルな低域が聴けるのである。ロック、ポップスなら、SWなしで過不足なく聴けてしまうレベルである。 ここに従来のままSWを追加すればどうなるか。fc70Hz、−24dB/oct、C-AX10のボリューム表示で−13dB、では、まずレベル不足、しかもオーバーラップ厚すぎ、相互干渉で暴れのひどいF特になると予測される。聴感も良くないはず。とおおよその見当をつけておいて、ともかくそのままでつないでみた。 予想どおり、芳しくないのである。質、量ともマッチング悪く、非常に不自然だ。特に超低域の量は決定的に足りず、だからと言って減衰量を減らせば、今度は50〜60Hzでの干渉が激しく、やたらとボワボワしてまともな音にならない。折角のパワフルさが、却って台無しである。従来、208ESからみて正相だったものを逆相にもしてみたが、ますますヘンになってしまった。 fc70Hzは、C-AX10の最低設定値だから、これ以下にはできない。アンプ側で変更できるのは遮断特性とレベルの2点である。あとはスピーカー側で位相を入れ替えることくらい。位置調整も、やってやれないことはないけれど、御影石込み400kg超のSWを動かすのはイノチにかかわるかも知れんのでヤメておきたい。 ともかくこのままではグワイが悪いから、遮断特性を変えてみる。オーバーラップを減らす方向、−24dB/octから、先ずは変化量を大きく取って−96dB/oct、レベルは3dB上げ(表示で−10dB)、正相で聴いてみた。 干渉が減り、モヤモヤ感が消える。25Hz以下の超低域も充分なレベルで、空気感がぐんと出てきた。これは非常に良い方向への変わり様である。ただ、スッキリした分、厚みも殺がれてしまった印象は否めない。ヤバンで濃い音が好きな僕にとっては、いささか物足りない感じ。スマート過ぎるのである。それなればと、遮断特性を−36dB/octへ変更。レベル、位相はそのままでさらに試聴する。 どうやらこの辺りに好いところがありそうだ。低域過多になるソフト(ポピュラーに多し)もあるが、優秀録音盤ではマッチングが良い。スーパーネッシーMkII単体の押し出し、締まりの良さを殺ぐことなく、超低域も不足しない。できれば−48dB/octも試してみたいところ、残念ながらC-AX10にはその設定値がないのである。 現状、SWのセッティングはこれで行くことにして、トゥイーター同様今後の推移を見て行こう。場合によっては、fcを上げ遮断特性を急峻にすることも必要になるかもしれない。 さあ、これで一応の初期設定は完了した。気がつけば乗船から1週間を過ぎているのである。年末が近づき気忙しくはあるけれど、でき得るかぎりバリバリ鳴らしたいのである。 スーパーネッシーMkIIを得た箱船新規システム、本日出航。 |
激変
Lchのトゥイーターも設置完了。Rchよりも作業は早かった。何でも2回目は手順が出来上がっているから楽である。僕にも人並みの学習能力はあるようで、ちょっと安心した。 左右うち揃って、試聴である。音が出た瞬間、あっと叫んでしまった。激変、とはまさにこのこと。高域の伸びと輝きが、ぐんと増したのに加え、中高域の艶、透明感も大幅向上。極めて通りの良い中域である。ついでに低域まで締まりと力感、解像度が上がり、総合的には調整前とまったく次元の違う音になった。これまでに聴いたことがないような生気と力が漲る音は、まさに208ES3発、物量投入型大重量高精度エンクロジャーの本領発揮という印象。こりゃ凄い音だ。 高域のクオリティが、総合的な再生音の印象を大きく左右することは、体験的に知っていた、つもり。スーパートゥイーターを追加したら、超低域が明瞭になった、とは、しばしば耳にするお話でもある。しかし今回は、如何にも驚いてしまった。変化の度合がタダゴトならず大きいのである。 208ES3発のスーパーネッシーMkIIは、考えていた以上に手強く、また懐が深いようである。支配力が極めて大きいと感じた。心してかからねば、僕のほうが支配されてしまうだろう。だが、そうはイカのキン○マ。負けてなるものかと、無い智恵をふりしぼって組み伏せにかかるのである。 現状、トゥイーターに関してはこれでヨシ。ようやくサブウーファーの設定に進めるのである。これまた、難物なのだろうなあ。 だからこそ、オーディオは、楽しい。 |
予測大ハズレ
トゥイーター調整は今日中に終わらせ、次のステップへ進む、つもりだったが、年末年始の支度もあったりして思うようには行かないのだった。完了したのはRchだけである。 これまでの設定を一旦ご破算にし、T-300Aのほうから調整に入った。昨日書いたとおり、JENSEN 1.0μF/630Vを2個パラ、都合2.0μFで仮設して測定する。 予想ではこれで上手くつながるはず、が、どうも遺憾のである。まだわずかにレベルが不足するし、それよりも問題なのは、5kHz以上に大きなピークディップが出てしまうことである。逆相正相どちらでもあまり変化はなく、トゥイーター位置を前後させても上手くはまらない。予測大ハズレである。 特に気になるのが8kHzのピークだ。人間の耳(ではなくて僕の耳、かな)は8〜10kHzに敏感で、この辺りが突出していると、音に素直さがなくなりヒジョーに聴きづらいのである。 ピンクノイズだけを聴いても、ジャリジャリと目が粗く耳障り。これは遺憾。レベルも足りていないことだし、もう少しCを増やしてみることにした。2.0に0.22を足す。これもイマイチである。もう一声、と0.22に替えて0.33、都合2.33μF。これでようやくレベル、F特ともいい形になった。これまでの1.8μFから見て、0.53μF増やしたことになるわけだ。 次はJA-0506IIである。こちらも同じように0.53μF増やせば良いのか。たぶんそれでは大きすぎると踏んで、当初の予定通り1.0μF/1000V1個でつないでみる。これは大当たりだった。20kHzまでレベルダウンなし、大きなピークディップもなく素直につながって一安心である。 結局、T-300Aは2.33μF、メインユニット(FE-208ES)から見て逆相、バッフルからホーン前端まで+12.5mm、JA-0506IIは1.0μF、逆相、同じく+28mm、というセッティングで落ち着いた。旧セッティングよりも、トゥイーターを前進させた形である。 ここまでは、あくまでも初期設定である。ピンクノイズを再生し、F特を見ただけ。形がまとまっているから音も良い、というほどオーディオは単純ではないし、クドいようだがF特はあくまでも一つの目安に過ぎない。ここからは、いろんな音や音楽を聴きながら、自分の耳で追い込んで行かねばならんのである。 あとはLch、だが、今夜はこれで仕舞いにして、また明日。 |
管理不行届き
SW調整へ行く前に、新たに必要になるコンデンサーの手当てをしておこうと、海外通販サイトへアクセスした。web上のカタログには、僕が求めているものが「JENSEN
PAPER-IN-OIL CAPACITORS Copper Foil 1.0/1000V」と、しっかり掲載されている。但し「Not
all values in stock, non stock values allow
2 to 3 week delivery.」という注意書きもあり、念のためメールで在庫を確認してみたれば。 折り悪く在庫切れだそうで、しかも次回入荷は未定だという。手許に届くまでに2〜3週間、どころか、いつになるかワカラン。これはもう仕方がない。入荷したらば知らせて欲しいと返信し、あとは待つしかないのである。 さて困った。昨日から聴いているに、やはり現状の高域には満足できない。このままではフラストレーションが溜まって仕方ないのである。と言ってJENSEN以外のコンデンサーでお茶を濁すのもイヤだ。せめて手持ちの1.0/630Vタイプが4個あればと、コンデンサー保管箱をもう一度かき回して驚いた。ご覧のとおり、ちゃんとあったのである。 2個しかないと、勝手に思い違っていたわけだ。自分で買っておきながらこの有様、いい加減なことこの上ないのである。まあしかし、こういう勘違いはうれしいものだ。 当面、手持ちの1.0μF/630Vを2個パラってT-300Aに、現状T-300Aに使っている1.0μF/1000VをJA-0506IIへ廻し、使って行くことにしよう。そうと決まればさっさと変更するに若くは無し。SWの追い込みは、それからでも遅くはないのである。 自分の持ち物は、きちんと管理把握しておきましょう。 |
システム復帰
スーパーネッシーMkII箱船乗船から4日目にして、ようやくシステム完全復帰である。トゥイーター、SW、リヤスピーカーも無事つながった。 リスニングポイントでの単体F特を見ると、公称再生周波数帯域25Hz〜20kHz、でも充分通る形をしている。ワイドでフラット、と言いたいところだがそうは行かない。旧Sネッシーよりは浅いものの、中域にディップが出る。ユニットが元々持つキャラクターか、或いは部屋の所為か、よくワカラン。聴感ではあまり問題ないから放置する。尤も、補正のしようもないわけだが。旧Sネッシーに比較して、3〜4dB程度能率が高い。公称105〜106dB/Wの、超高能率システムである。 ハイは4kHzまでフラット、5kHz〜10kHzで5〜6dB落ち、それ以上はダラ下がりで20kHzまでレスポンスがある。やはりハイは2発の場合より早めに落ち始めるらしい。却って好都合とも言える。T-300Aは、6dB/octで5kHzあたりが推奨クロスになるのである。 尤も、これはマイクを耳の高さにセットして採った時のF特で、高さを変えれば形もコロコロ変る。最終的には耳で聴いて判断することになるわけだから、測定値は今後の方策を探るための、一つの目安に過ぎないのである。 これに従来のままの条件でトゥイーターを追加すれば、おそらく5kHz以上でややレベル不足になるだろう。システムの能率があがっていることと、カットオフが高すぎることがその原因である。 現状、Cの定数は従来のまま1.8μF(T-300A)と0.8μF(JA-0506II)である。とりあえずこの状態でつないでみた。どちらもメインユニットから見て逆相である。形としては悪くなく、妙なピークディップは出ない。20kHzもしっかり出ている。だがやはり5kHz以上でレベルダウン、フラットにするに、あと3dB程度は上げたい感じである。 聴感上では、非常に素直で低歪み、特に高域が不足している印象はない。これでOKにしても充分イケるとも思う。僕はどちらかといえばハイが切れ上がった明るい音が好きなので、この状態ではもどかしさを感じてしまうのも事実。金属打楽器が超高域までめざましく伸び切るさま、小鳥の鋭いさえずり、などの再現性にやや不満が残る。 両トゥイーターとも下方向へはまだ余裕があるから、もう少しCを大きくしても大丈夫だろう。1.8を2〜2.2μF、0.8を1〜1.2μFくらいに変更すれば、上手く行きそうな感触を持った。キリの良いところで2.0と1.0でつないでみようかしらん。そうすればCの数(現状1.8に3個パラ、0.8に2個パラ)も減らせるし。 となれば、1.0μFのコンデンサーがあと4個必要。JENSEN 630Vタイプなら手持ちが2個あるけれど、やはりここは1000Vタイプで行きたい。トゥイータースペースは幅、奥行きとも大きくなったから、あの巨大コンデンサーでもまったくヘーキである。 高域はおおよその目途が立った。あとは低域、サブウーファーの設定である。 |
ワンポイントディザイン
業務の合い間を縫って、SネッシーMkIIを聴くに専一である。早くトゥイーター、SWフル駆動でも聴いてみたいのだが、急いては事をし損じる。特に僕は馬鹿でマヌケだから、ここは気を落ち着けてかかるほうが安全なのである。 さて、こちらからお送りしてディザインをお願いしたバーズアイメイプル板である。フロントバッフルの下方、床から10cmくらいのところに、ご覧の如く意匠されて帰ってきた。ツルツルに磨かれ、美しく塗装されたバーズアイメイプルの杢目は、深みがぐんと増して高級感抜群。見事に活かされました。 実はこの楕円形の板、字を彫り込んで銘板にする、という案もあった。しかし、暫し考えて結果的には却下したのである。どんな文句を彫ろうとも、何となくあざとくてイヤだ。却って下品になってしまいそう。結局単純なワンポイントディザインとしたわけだが、控えめ上品で正解だったと思う。 山越木工房さんは、非常に高く優れた技術を持つ製作所である。加えて、常にカスタマーの意向を第一に置いて施工してくださるのである。僕のワガママ極まりない注文にもかかわらず、すべて誠実に、しかも完璧に応えてくださった。 これは簡単、或いは当然のことのようで、なかなか実現し難いことである。技術の高さを鼻にかけ、顧客の意向を無視し、押し付けがましい施工をしようとする製作所は多い。圧倒的に多いと言ってよいかもしれない。今回、山越木工房さんに製作依頼できたのは、稀有のご縁だった。 明日からは、いよいよフル駆動へ向けてセッティングを始めたいと考えている。トゥイーター、SWとも、とりあえずは従来のまま追加してみて、今後の方向性を探って行こう。そして最後は、リヤスピーカーの処遇である。 やるべきことが沢山あるのは、実に楽しいのである。 |
「II」になった黒檀板
箱船で9年半働いたスーパーネッシーは今日の午後、とんぼさんの許へ向けて出発して行った。とんぼさんのお骨折りにより、格安で輸送を請け負ってくれる業者が見つかったのである。無事、到着搬入が終わることを祈りたい。とんぼさん、よろしくお願い致します。 さて、こちらはスーパーネッシーMkIIである。さっさとトゥイーター追加にかかりたいところ。だが、滅多にないメインスピーカー新調の機会、しかも名工による作品である。音ばかりでなく、ディザインディーテイルにも触れておきたい。 7月16日の日誌に書いた黒檀板を送って5ヵ月、上の写真のようにディザインされて帰ってきた。本体と第二パイプ接合部、これまでのネッシーシリーズには無かった補強材(カラーのように巻き付いている)に、1本あたり左右2ヵ所、計4ヵ所象嵌されている。「II」の字は、もちろんスーパーネッシーMkIIの「II」である。 薄い突き板を上から貼り付けたものとは、質感の違いは明らかである。一見してすぐに分かる。下地のバーチとの間には寸分の隙間もなく、見事と言うほかなし。シロウト普請では絶対不可能。まさにプロの仕業である。いや、素晴らしい。10年間死蔵した材料が、こんなに上手く活かされるとは。感謝感激である。 もう一つの死蔵材、バーズアイメイプル板も、僕がイメージした以上のディザインで、非常に上手く使われている。 そのお話は、また明日。 |
ファーストイムプレッション
スーパーネッシーMkIIは、昨日からパルシブでレンジの広そうなCDタイトルにリピートをかけ、強制エージング中である。エージングと言っても、新しいシステムに特有の生硬さは少ない。長い時間をかけ、じっくりと丁寧に、プロの手によって作り込まれたエンクロジャーであること、素材と構造の強度が非常に高いこと、などがその原因だろうと思う。山越木工房さんの高い技術力が、ここで証明されているわけだ。 圧倒的な低域の押し出し、まさに怒涛の寄り身である。締まりが良くクセは極めて少なく、おおよそ4m超の長大な管を持つ共鳴管システムが鳴っている感じではない。ユニットを増やしたデメリットは感じられず、音場感、音像定位が阻害されることはまったくない。それどころか、システムとしてのDレンジが広くなり、音場感は大きく向上したのである。 純然たる2ch再生で、ここまでの音場感が得られるのならば、リヤスピーカーはほんの味付け程度で充分かもしれない。ひょっとしたら無くてもOKかな。だったら新調の要もなく、アンプも楽になるし、良いことばっかりなのだが。 さすがに高域については、トゥイーター絶対必要。単体では苦しい。しかし中高域のスピード感は圧倒的である。リスナーに向かって音がぶっ飛んでくる。いつもの感覚でボリュームを上げたら、もの凄い音が出て思わず仰け反ってしまった。エラいこっちゃとアンプのメーターを見てみると、ピークで30W程度だった。超高能率なのである。 いきなりここまでのパフォーマンスを示されれば、従来の音への未練は雲散霧消である。これならイケる。僕はもう2発スーパーネッシーへは戻れない。 以上は鳴らし始めから24時間程度のファーストイムプレッションである。本当の姿が見えてくるのはまだまだこれからだ。ともかくは、基本設計に大きなしくじりがなかったことを喜びたい。ヨカッタヨカッタ。 と、安心してばかりもいられない。最も重要なのは今後の使いこなしである。やるべきことは山のようにある。先ずは、ガタやスリップ無くガッチリと設置することだ。如何に150kg超のシステムとは言え、モルタルコテ仕上げにエポキシ塗装の床は、そのままではガタから逃れられない。ご覧の通り、アイテム総動員でガタ取りに挑むのである。 明日は、トゥイーター設置に進みたい。 |
決死の搬入
スーパーネッシーMkII、搬入設置完了。朝10時過ぎに4tトラックで到着、初音は午後6時のことだった。徳さん憲さん、Iさん、そして運転手さん、本当にお疲れさま。ありがとうございました。 搬入作業中の写真は、1枚もない。何故か。それどころではなかったのである。140kg超のエンクロージャーに、内外リングが付いて150kg超。この重量は、半端ではなかった。聞くと持つとで大違い。そりゃあもうムチャクチャに重く、どれくらい重いかというと「生命の危険を感じるような恐ろしい重さ」なのである。 しかも折り悪く雨模様である。重いわ滑るわ寒いわ冷たいわで、条件は最悪。作業中の僕らの顔を傍から見ればきっと、死相が張り付いていたに違いない。まさに決死の作業である。トラックの荷台から下ろそうとした時、ボカァもう搬入は無理だと思いました。と、後で言ったら、みんなそう思っていたと言う。 それでも何とか智恵を出し合い、ともかく事故も怪我もなく、作業完了。2本とも箱船へ入った時には、ナミダが出そうになりマシタ。 エンクロージャーの出来は、見事というほか言葉がない。工作精度は最高である。すべての接合部はバチッと決まって一分の隙もない。控えめに施された意匠と、丁寧な塗装で高級感抜群。比重0.85〜0.88の国内産バーチにはフィンランドバーチのような硬質感はなく、適度な硬さと粘りを併せ持っているような質感である。実際、どこを叩いても突っ張ったような鳴きは皆無だ。あたかも鳴きの少ない石を叩いているようで、実に不思議な感触なのである。 このような箱で、悪いわけがない。ヘンな音が出たら、それは全部僕の責任だと、不安と緊張と期待感の入り混じる思いを持ちながら、初の音出しに望むのだった。詳しくは明日以降の日誌に譲るが一言だけ。 このシステム、凄いです。 |
発送
スーパーネッシーMkIIは、今日、当地へ向けて発送された。写真は、山越木工房さんからいただいた、発送直前の荷姿である。チャーター便での輸送になるため、他の荷物との混載はない。従って、梱包もこの程度の軽装で済むわけである。 午後3時頃に発送していただいて、今どのあたりを走っているのか。栃木県から当地までの距離約800Km。夜を徹して走り、スーパーネッシーMkIIは明朝、箱船へやってくる。ここまでくると、やはり待ち遠しいのだった。今夜は眠れるか知らん。 明日は一日かけて搬入、ユニット取り付け、設置、そして一気に音出しまで行きたいと、考えている。例によって友達の協力は不可欠である。徳さん、憲さん、Iさん、どうかよろしくお願い致します。 9年半ぶりのスピーカー新調も、いよいよ大詰めである。 |
少々億劫
スピーカーターミナルとユニットを結線するに、利便性を考慮すればファストン端子がベターである。ユニット端子の傷みがほとんどない上、ユニット交換も容易だ。着脱ワンタッチ。メーカー製システムでは、ほとんどがファストン端子仕様である。後のメンテを考えてのことだろう。 僕は、いつも原始的なハンダ付けでつないでいる。ファストン端子は使ったことがない。何となく接点が曖昧になりそうなことと、再生音量がデカいだけに、振動の影響も気懸かりなのである。端子の穴に芯線を通して充分に絡げ、しっかりとハンダで固める。機械的にも電気的にも、この方が安心できるわけ、だが。 しかし、デメリットもある。熱を加え過ぎると、端子とボイスコイルリード線をつなぐハンダも一緒に融け、ヒジョーにグワイの悪いことになるのである。最悪の場合、コーンをも傷めてしまう可能性もある。さらに、今回のように同一ユニットを別のエンクロジャーに移植する時にも極めて不便である。再度ハンダを融かし、電線を抜去しなければならない。一苦労するのである。結線する時以上に、熱対策には気を遣うのだった。 端子の根元(リード線に近い部分)に放熱クリップを直列に4〜5本取り付ける。リード線への熱を逃がす対策である。然るのち、素早くハンダを融かし、迅速丁寧に作業を進めるべし。モタモタしていては絶対に遺憾。焦りは禁物だがスピードが勝負なのである。明後日までには、8端子すべてきれいにしておかねば。 少々億劫な作業ではある。 |
楽しみは時間をかけて
母屋で横たわり、とんぼさんの許へ向けて発送を待つスーパーネッシーである。箱船から出してフツーの部屋に置いてみると、横倒しにしてなお巨大なスピーカーである。新MkIIに比べれば軽いとはいうものの、80kgを下らない重さも凡そ一般的ではない。極めて用途の限られる、特殊なスピーカーシステムなのである。 僕はこのシステムから多くのことを学んだ。共鳴管システムは、非常に大きな潜在能力を持っていること。ドライブ能力に優れたユニットを使えば、クセは極限まで押え込めること。ユニットコーンの強度は高いほうが良い結果を生むこと。中でも最たるものは、エージングによる音の変化である。 10年弱使ってきて、未だ日に日に変化しているのが分かったのである。ユニットは'02年4月にVer.2へ交換、エージングは充分なはず、だが、音は変わり続けた。おそらくここで終り、などということはなく、使い続ける限りさらに変って行ったと思う。「まともに鳴るには最低3年」と言った当初の予測は、はっきり言って大ハズレである。 幸いにもこのシステムはとんぼさん宅で再び鳴らしていただけるのである。部屋が変わりドライブ系が変りオーナーが変れば、音はもちろん変るだろう。そこからまた、次のエージングが始まるわけだ。 3日後来る新システムは、当然のことながら当初キツい音を出すに決まっている。イキナリ完璧に鳴る、などということはあり得ないのである。ネッシーMkIIの鳴らし始めは壊れたラジオみたいだったし、Sネッシーはギラギラカンカンしてその辺に居られないような音だった。チョイと使って「こりゃダメだ」。そんなもんは趣味でも何でもない。 落ち着くまでには長い時間がかかるだろう。それが最大の楽しみなのである。 |
血が騒ぐ
現在、メインスピーカー不在である。これは箱船始まって以来の珍しい風景だ。D-55からネッシーMkIIに替えた時も、それをスーパーネッシーに替えた時も、この部屋で作って置き換えたから、メインスピーカーが空席になることはなかったのである。 スーパーネッシーの聴き納めは昨夜と今日の午前中、4時間ほどまとめて鳴らした。万人に聴かせて誇れるような音、などとはまったく思わない。けれど、僕にとっては、多くの方からのお力も得ながら9年半かけて作り上げた音である。してみれば、それなりに愛着があり、別れを惜しむ気持ちもあるわけだ。 しかし、必要以上に保守的になり、従来の音にしがみついては進歩がない。まだ老成するには、少々早いのである。4日後にはスーパーネッシーMkIIがやってくる。これまでを凌ぐ音が実現できるかどうか。素晴らしいエンクロージャーが完成した今、あとは僕のウデとセンス次第だ。 うーむ、血が騒ぐ。やはり僕は、オーディオが大好きなのである。 |
搬出完了
徳さん憲さんの強力なバックアップを得、スーパーネッシー搬出は無事完了した。午後1時から始めた作業は、ユニット、内外リングを外すことも含めて1時間40分程度で完了。思いのほか早く終わったのである。助っ人2人が極めて段取り良く動いてくれたおかげさまだ。ご両人、どうもありがとうございました。 スーパーネッシーは今、母屋に横たわっている。当初の予定ではこれでお役目終了、廃棄されるはずだった。しかしありがたいことに、ミスターDFリングとんぼさんのおかげさまにより、新しい働き場所を得られるのである。幸せなことだと、思う。新天地で、より良いパフォーマンスを示してくれるとよいのだが。 とんぼさん、ありがとうございます。 |
完成
本日12月7日を以って、スーパーネッシーMkIIのエンクロージャーが、塗装まで完了し完成した。既に梱包も終り、12日に発送される。山越さんのほうでは今日あたりの発送で予定を組んで下さっていたのだが、僕の業務とのかかわりで、12日まで延ばしていただいたのである。ご無理を申し上げました。 13日の朝に到着の予定である。さて、それなれば搬入にあたってチカラを貸してくれる友達を頼らねばならない。しかし、平日の朝だから、ヒジョーに限られるだろうなあ。この日誌をお読みくださっている方の中で、お手伝いいただける方がいらっしゃれば是非ともお願いしたいのである。お昼ゴハンと晩ゴハンくらいの御礼しか、できませんが。 山越さんに初めてスーパーネッシーMkIIの製作依頼を打診したのは、2003年7月のことであった。それから数えて実に3年半。その間、ユニット2発を3発に変更したことに始まり、数々のムチャな注文と設計変更をお願いしてきた。ドシロウトのわがまま極まりない注文に、その都度誠実丁寧にお応えくださったのである。心から御礼申し上げるほかはない。ありがとうございました。 音はもちろん、先ずはエンクロージャーを見るのが、ヒジョーに楽しみである。 |
予定は未定
スーパーネッシーMkIIの箱船乗船は、秒読み段階に入った。となれば現用スーパーネッシーの搬出を急がねばならない。ところが、である。何だかやたらと忙しく、搬出の前準備すらできないで居る。写真の通り、今日になってもこれまでのママである。おかしいなあ、こんなはずではなかったのだが。 この調子だと、新旧の入れ替わりは1日か2日違いのスレスレになりそうな気配である。予定は常に未定で、思い描いていたようには進まないものだと、これは社会人なら仕方のないことなのだろう。 ともかく搬出は9日午後と決定。その日には我が盟友、徳さんと憲さんが手伝いに来てくれることになっている。現用Sネッシーなら、ユニット、リングを外せば3人でも運搬は充分可能である。ご両人には大変な労をおかけするが、よろしくお願い申し上げたいのである。怪我無きよう、気を付けてやりましょう。ナニ、ボーズ3人だから毛が無い。ナルホド。 雪が、降りませんように。 |
お話作り
先日は苦しい依頼があったと思ったら、明日からは3日連続3ヵ所の法話依頼があり、少しく遠出である。いずれも1時間程度の話ということだから、全部同じ内容で済めばラクチンである。一つだけ話を構成すればよいわけだから。 ところがそう上手くは行かないのである。3ヵ所すべて併営される行事と聴衆が、まったく違うのだった。基本的には仏教的法話に違いはないものの、やはりTPOは無視できない。それをわきまえず徒に話したところで、場がシラケるだけなのである。 ちゅうわけで、3種類の話を構成せねばならず、加えて聴衆向けの資料作成も必要となって、僕は今その追い込みにヒッシである。ずいぶん前からヒネっていながら、遅々として進まなかったのだ。これまた苦しい依頼なのである。 何事も勉強と、感謝すべきである。 |
丹後名物冬の虹
業務で隣町の京丹後市へ出かけた。雪こそ降らなかったが、非常に寒く天気は相変わらず不安定である。晴れていながら雨が降る、という、イワユル天気雨だ。こうなって出現するのはご覧の通り。丹後名物冬の虹である。 虹と言えば、夏の夕立の後、さわやかな空にかかるものを想像するし、またそうあって欲しいものだとも思う。アニメやドラマに出てくる虹のシーンも、そういったシチュエイションが多いわけだ。 しかし当地では、全く違う。寒くて憂鬱で、にび色天気の時に限って、虹が出るのだ。僕はもうバカヤロウと叫びたくなるのである。確かに美しい風景だとは思う。思うがしかし、暗く永い冬の到来を告げる虹なんか、ゼンゼン要らねえのである。爽やかでも何でもないぞ。 明日からの天候は、少しく快復傾向だと言うが、ホントかな。 |
冬は駆け足で
今、外はとても冷たい雨が、ドシャ降りである。箱船2階の窓から冬枯れの柿の木を撮ってみたら、雨粒がはっきり写り込むほどだ。白く点々と見えるのは、雪ではありません。いやに景気よい雨である。冬の水害なんて、絶対に御免蒙りたいものだ。 これから明け方にかけて冷え込みがいっそう厳しくなり、山沿いでは雪になるところもあるという。当地は言うまでもなく"山沿い"だから(ひょっとしたら山中)、明日の朝はうっすらと白くなるかもしれない。 午後9時ごろ、一瞬天空が昼間のような明るさに光り、その直後でっかい雷が豪快に鳴り響いた。上空で冬の積乱雲が発達しているのである。うっすらと初雪、程度ならまだよい。竜巻なんぞが発生しやしないかと、最近頻発しているだけに心配するのだった。 とまあ、午後からこういうとんでもない天気になったわけだが、これでも午前中は、一片の雲もないバリバリのピーカンだったのである。弁当忘れても傘忘れるな。昔の人はよく言ったものだ。 一旦寒くなれば、冬は駆け足でやってくる。 |
一石三鳥
7月4日の日誌に載せたパーツは、写真のような形で本体裏側に取り付けられた。ベース部に4個、トップパイプに2個、全部で6個ある。運搬時には取っ手となり、設置後は天井に取り付けた金具とスチールワイヤーで結び転倒防止フックとなる。さらにスピーカーを仰向けに寝かせた時には、本体を支える馬にもなるわけだ。一石三鳥のリーズナブルなパーツである。 山越さんから提案があった当初、僕は取り付けに少々躊躇した。このパーツが振動子になり、余分な音を放射するのではないかと、考えたのである。用が済めば取り外しが利くようにする案もあった。しかし取り付け強度に難点ありということで却下。 結局、これだけの物量を投入したエンクロージャーにこの程度のものなら九牛の一毛、問題にならないと判断し、付け殺しで行くことにした。最優先すべきは、搬入時の事故と転倒の危険を避けることである。 どうしても気になるなら、取っ手と本体の間にウレタンスポンジか何かを挟んでおけば問題ないわけだ。だいたいが、僕のタコ耳で「むむっ、裏側の取っ手が鳴いておる!」なんて分かるわけがないのである。語るに落ちてます。 スーパーネッシーMkII、2006年内に、音出しできるかしらん。 |
雪支度
暖かい晩秋だと、喜んでいられたのも11月までらしい。昨日から、強烈な冷え込みである。日本海側(昔は"裏日本"と言った)の当地はすっかり冬型気候で、冷たい雨が降ったり止んだりしてウットオシイことこの上ない。間もなく雪も降るだろう。 こうなれば、雪支度を始めねばならない。昨年の大雪で酷使してヘナヘナになった雪スコップの新調、除雪車の掃除点検、燃料の確保など。車のタイヤもスタッドレスに交換しなければ遺憾し、除雪ブラシの常備は忘れられないし、まあいろいろと忙しいのである。雪さえなければなーんにもしなくていいのに、と太平洋側をうらめしくも思うけれど、仕方ないのである。 昨年のような大雪にはならないはず、と希望的観測をするわけだが、こればかりはその時が来てみないとわからない。願わくは、少雪であらんことを。 12月の日誌は、毎年こんなのばっかりだ。 |